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迷宮魔王クルエルシード  作者: 海老天ころも
第1章 迷宮誕生
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08 新星冒険者


 木の剣の4人はとある迷宮の前に来ていた。


「私今日街の周辺にある迷宮について調べてたんだけど、こんな迷宮載ってなかったよ?」

「僕が見つけた。まだギルドに報告してないからギルドにある資料には載ってないはず」


 アビ吉の言葉に3人が驚愕する。


「未発見の迷宮かよ!報告するだけで報奨金が出るはずだぞ」


 興奮するオレンをアビ吉が制する。


「迷宮の中身の調査結果も合わせて行えば、報奨金の額も増えるしランクアップも確実」


 その言葉に3人が戸惑う、初めての迷宮への不安や恐れ、そして報奨金や名声への期待と興奮。入り乱れる感情を無視するようにアビ吉は進んで迷宮に足を踏み入れる。


「3人とも早く来て」


 3人は顔を見合わせ覚悟を決める。3人で声を合わせて迷宮へと足を踏み入れる。


 3人が迷宮に足を踏み入れた瞬間静止する。


「何この声?」

「ステータス、レベル?」

「みんな落ち着いて初めて迷宮に入った証拠よ!今日調べたもの」


 どうやら3人にだけ聞こえる声があるらしい。暫くすると3人は落ち着きを取り戻す。


「おっしゃ!これで俺も一人前の冒険者だ!」

「そういえばアビは声が聞こえてなかったみたいだけど、迷宮は初めてじゃないの?」

「…そう、僕は初めてじゃない」


 少し間が空いてアビ吉が答える。アビ吉は紙と鉛筆を取り出すとナルミに渡す。


「マッピングお願い」

「分かったわ」


迷宮の奥へと進むと開けた場所につく。広い空間には一面花畑になっており、閉ざされた空間なのに天井には太陽がある。朗らかな日差しと暖かく気持ちの良い風が、思わずその場に腰を下ろしてしまいそうになる。


 気の緩んだ3人に向かって何かが飛んでくる。それをアビ吉は何も見ずに片手でキャッチする。アビ吉の手に握られていたのは木の根っこ。ウネウネと動き今にも逃げ出しそうだ。アビ吉は腕力で木の根っこを捻り潰すと大人しくなった。


「ネッコロっていう魔物。地面に潜んでて近くに来た冒険者を襲うから気を付けて」


 アビ吉の言葉に3人はただ感謝を口にするだけだった。


 暫く進み広いエリアと狭い通路を何度も通過して、3人も戦えるようになってきた。


 今はマモムシという大きなイモムシ型の魔物を、移動が遅い事をいいことに3人は木剣でこれでもかと叩いていた。


「ふぅ、やっと倒したな」

「やっぱり木の剣じゃ駄目だね」

「そうね、こんな弱い魔物も1回で仕留められない」


 奇襲してくるネッコロはアビ吉が倒し、マモムシと花に擬態した魔物ハナハナを3人が倒していた。


「この声!俺レベルアップしたみたいだ!」


 1番積極的に攻撃していたオレンがレベルアップしたようだった。


 その後戦いながらマッピングしていると、ナルミとリレクのレベルも上がった。


 そしてついに怪しげな空気を漂わせた部屋に行き着いた。通路から見える先には大きな蝶の魔物が中央で羽ばたいていた。


「おい、アレ見ろよ!」


 オレンが小声ながら驚いたように指を指した。その先には、蝶の魔物の後ろにある宝箱。


「宝箱あるぞ!絶対俺達で開けよう!」

「待って!あの魔物を見て!」


 今にも飛び出しそうなオレンをナルミが止める。


「ギルドの図鑑で見たことあるから分かるけど、アレはサイコピヨン。マモムシが進化して、更に進化した魔物よ!Bランク冒険者が相手にするような魔物、絶対私達じゃ倒せないし殺されるわ」


 ナルミの言葉にオレンがBランク冒険者が相手にする魔物と聞き、流石に諦める。


 それを見ていたアビ吉はおもむろに立ち上がると、サイコピヨンの居る部屋へと走り出した。


「ちょ、待っ」


 ナルミの声が虚しく響くがもう止まらない。


 アビ吉がサイコピヨンに向かって走る。サイコピヨンはこちらに気付き羽をバタつかせ鱗粉を撒き散らす。


 そんなの全く気にせずに近付いたアビ吉は、サイコピヨンを殴り飛ばす。壁まで吹き飛んでいったサイコピヨンは軽く壁にめり込んだまま動かなくなった。


 唖然とした3人だったが、いち早くオレンが通路から飛び出す。


「すげぇ!!アビ、お前めっちゃ強いんだな!」


 つられてナルミとリレクも出てくる。


「迷宮も初めてじゃなかったし、アビって何者なの。絶対Eランクじゃないでしょ」

「倒せるにしても一声かけてよ〜」


 アビ吉はあえて2人の言葉に無視するように宝箱へと歩き出す。それを見たオレンが走り出す。


「ちょっと!なぁ、アビ!俺が開けていいか?」

「いいよ」

「おお!マジで!」


 オレンはアビ吉を追い抜かすと、宝箱にたどり着く。みんなが到着するのを待たず宝箱を1人で開けると1人で歓声を上げる。


「うぉおお!魔法書だ!初めて見た!」


 オレンの言葉にナルミとリレクも走り出す。オレンのもとに着くと、手に入れた魔法書をキラキラした目で3人が見るのだった。


 魔法書とは迷宮で手に入るアイテムで、書を開いた者は魔法を使えるようになる。この魔法書は火魔法初級の魔法書だ。これを使えば火魔法初級が使えるようになる。


「なぁなぁ、俺がこの魔法書使っていいか?!」


 今にも書を開きそうだったオレンの手から、アビ吉が素早く魔法書を奪い取る。


「オレンはダメ。ナルミが使うべき」


 アビ吉の言葉にその意味をいち早くナルミが気付き解説する。


「オレンもリレクも性格的に前衛だし、自分自身でオレンは剣士になる、リレクは盗賊系かなって言ってたよね?私は前衛向きじゃないしできれば後衛になりたいと思ってた。アビはそれを見抜いて私が使って後衛としての攻撃手段を身に着けたほうが、チームとしては最善じゃないかなって言ってるんだと思う」


 魔法に興味のあったナルミは必死に言葉を紡ぐ。ナルミの言葉にアビ吉が静かに頷いた。


「うぅぅ!使ってみたかったけど、そう言われると確かにナルミが使う方が良い!」

「アタシもナルミが使うので賛成!その代わり近接戦闘系のスキル発現アイテムが出たらアタシやオレンが使うってことだよね」


 という訳でナルミが魔法書を開き使用することとなった。開かれた魔法書は光となって消えていった。


「うん、声もしたし、これで火魔法が使えるようになったと思う」

「ホントか!じゃあ使ってみてくれよ!」


 オレンに促されるままナルミが火魔法を使う。


「えい!」


 飛び出た火魔法は弱々しく地面の花を数本焼いた程度の威力だった。


「これじゃあすぐには実践で使えないね」


 リレクの言葉に肩を落とすナルミであった。



◇◇◇



「あんた達、迷宮に行ったのかい?!」


 シシブチの驚いた声がギルド内に響く。その表情は驚きから怒りへと変わる。慌てて報告を行っていたナルミにアビ吉が口を挟む。


「た(・)ま(・)た(・)ま(・)新しい迷宮を見つけたから、詳細な報告のために迷宮に入ろうと僕が提案した。ナルミ、アレを出して」


 アビ吉に促されナルミがマッピングした地図とサイコピヨンの羽をテーブルに置く。


 シシブチは地図とサイコピヨンの羽を手に取り観察すると大きく息を吐く。


「取り敢えずよく無事で帰ってきたね。そして新迷宮の報告として、地図とサイコピヨンの羽、十分な成果だよ!」


 サイコピヨンの羽と聞いてギルド内に居た冒険者達がざわつく。サイコピヨンと言えばBランク冒険者相当の魔物だ。冒険者のランク分布はCが最も多く次いでDが多い。Bランクは冒険者の中では上級者、才能の別れ目とも言われ、才能のない者はどんなにやってもCランクのままでBには上がれない。


 どんな幸運に幸運が重なって倒したんだとしても、冒険者達は反応せずには居られないだろう。


「そこは褒めておこう。これから詳細の報告を聞いてランクアップもあり得るだろうね。だがね…」


 ナルミが思わずつばを飲み込んだ。


「私個人としてみっちり説教させてもらうからね!!」

「ひぇえ〜!」


 ナルミの恐怖の絶叫がギルド内にこだました。


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