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迷宮魔王クルエルシード  作者: 海老天ころも
第1章 迷宮誕生
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04 迷宮の外


 今回の迷宮は「樹洞の迷宮」。前回と似ているが、召喚できる魔物が違うようだ。今回の魔物はホウホウ、コケコエッグ、チップチップだ。


 チップチップは、手のひらサイズのリス型魔物。冒険者の隙をついて、頬袋に盗んだ金貨やポーションを詰め込んで逃げ去る。


 ゲームだとこいつが居るとお金やアイテムが手に入る嬉しい魔物だった。前回冒険者を倒せないと何も得るものがなかったが、今回チップチップが居ることで、倒さなくても金貨やアイテムが手に入る。盗んだアイテムや金貨は宝箱にセットするようにすれば、宝箱で使うポイントを節約できるわけだ。


 今後も使えるようにチップチップを召喚し、お気に入り登録しておく。名前はチプ次郎らしい。


 早速だがチプ次郎を、初期ポイントでレベル20にして進化させる。チップチップからスナッチテイルに進化した。名前はスナ次郎らしい。


 スナッチテイルは、兎サイズのリス。尻尾が第五の手のようになめらかに動き、すれ違いざまに装備中のサブウェポンや、背負い袋を丸ごと強奪する。


 さて、前回を経て私は思った。敵を知るべきだと。つまるところ迷宮の外の世界を知るべきだと。特に冒険者について知り、これからの迷宮運営の方針を考えるのだ。


 ゲームでは迷宮外に魔物達を遠征することができた。遠征は2種類あり、”探索”で拠点を見つけて、”襲撃”で拠点を襲う。拠点を襲うとダンジョンポイント、経験値、アイテム等大量に手に入るため、迷宮運営が軌道に乗り安全になってくると遠征を行っていた。


 そのため魔王は迷宮の外に出られないが、魔物は迷宮の外に出られるのだ。


 私は樹洞の迷宮の魔物ホウホウ。このフクロウ型の魔物を大量に召喚し、迷宮外に解き放った。魔物とは五感を共有できるらしく、これで外の世界を知る事ができる。


 すぐに周辺の村や街が見つかった。だが、人がいるところには魔物の姿では潜入が難しいだろう。今は周辺の地形を知るまでが限界だ。


 という訳でこの迷宮に来た初めての冒険者を捕らえた。椅子に縛り付け聞き出そうとすると、魔物に喋ることなんてないなんて態度だから、シブ吉の酸を垂らしてあげればすぐに、この世界の事を喋ってくれた。


 この世界では突如として迷宮と呼ばれる空間が生まれる。魔物から取れる素材、魔王から取れる魔核、宝箱から出る装備・アイテムの数々、これら迷宮が生み出す富は莫大なもので、この富を求めて活動するのが冒険者と呼ばれる存在らしい。


 冒険者は迷宮内で魔物を倒すことでステータスが上昇し、迷宮で手に入るアイテムで魔法やスキルを習得できる。


 冒険者と迷宮を管理し、冒険者の損失を最小化し、迷宮の利益を最大化するための組織が冒険者ギルドというようだ。


 冒険者を強さでランク分けし、ランク毎に入って良い迷宮や迷宮の侵入エリアを決めている。更には迷宮を攻略するか、攻略せずに残すかをギルドが決めているらしい。


 基本的には魔核を手に入れるよりも、有益な何かがあれば攻略禁止となるようだ。その明確な基準は、捉えた冒険者では分からないらしい。


 だが、攻略禁止として残っている迷宮の情報を聞き出した。残っているのは、3つのパターンがあった。


 1つ目は、迷宮内に聖水が湧く、鉱脈がある、といった迷宮内で貴重な資源が取れるパターン。これは恐らく迷宮のギミックによるものだと思われる。そういったギミックはロック中のため私の迷宮では設置するのが難しい。


 2つ目は、貴重な素材が取れる魔物がいるパターン。これは迷宮の環境により決定する3種の魔物が、貴重な素材が取れる魔物である、もしくは過去にそういった魔物をお気に入り登録していないといけない。


 3つ目は、迷宮内にたくさんの宝箱が設置してあり、中身も相当に価値のあるものが入っているパターン。これは簡単に実現可能だが、ダンジョンポイントのコストでマイナスになりそうだ。


 1つ目、2つ目は何度かリセットした後に可能になるかもしれないが、今回に関しては難しい。やるとしたら3つ目だが、長期維持が難しそうだ。定期的に冒険者を倒さなければポイントが尽きてしまうからだ。


 しかし、まずはやってみないことには始まらないということで、今回は迷宮内に宝箱をたくさん設置してみる。


 この改造により「鍵付き宝箱」のギミックがロック解除された。恐らく宝箱を規定数設置するがロック解除条件だったと思われる。


 鍵付き宝箱は盗賊などが持つ鍵開けスキルがないと開けられない宝箱だ。せっかくなので開発し、迷宮内に配置していく。


 宝箱の中身もかなり価値の高いアイテムや装備品を設定していく。運営費で言えばかなりのマイナスとなる。


 今回チップチップやスナ次郎がおり、盗みにより冒険者から多少回収できるとはいえ、焼け石に水だろう。


 実際に、2人目の侵入者が来て迷宮が見つかり、冒険者達が押し寄せくるようになった。正直、ダンジョンポイントの収支で言えば大きくマイナス。だが、冒険者達は最終防衛線として配置した、シブ吉の居る終始酸の霧に包まれた部屋より奥へは入って来ようとしない。


 ポイントが無くなりそうになったタイミングで、ファル川やバイ村を迷宮内に徘徊させて、適度に冒険者を倒しポイントを回収する。


 そんな形で1ヶ月生存する事に成功した。


 だが、私の我慢は限界だった。ファル川とバイ村に多少経験値が入っているとはいえ、迷宮として成長していない。生きながらえてはいるが停滞している。


 何のために生きながらえる?私は迷宮から出られないし、迷宮内に娯楽はない。魔物達は話し相手にもならないし、眠らず飲食も不要の魔王になった、私は暇だった。


 近くの村を襲撃する。私はそう決断した。


 ファル川とバイ村が迷宮から解き放たれ、近くの村に向かっていく。最初にホウホウを解き放ち周辺の地形、村や街の位置は把握済みである。


 到着した村では、ファル川が家屋や村人を真っ二つに切断していく。バイ村は、クモの糸を使って村人の首に巻き付け木々に吊りし上げていく。


 ファル川とバイ村により人々が無惨に殺されていくたび、ダンジョンポイントが入ってくる。迷宮外では獲得するポイントが5分の1になるらしいが、気にならないほどのポイントが舞い込んでくる。


 これは旨すぎる。最初からこれで良かったんだ。


 村を壊滅させて、そのまま次の村を目指してもらう。冒険者ギルドに気付かれて、迷宮に強い冒険者を派遣される前に、手に入るだけポイントを手に入れてやる。


 ついでにホウホウを大量に迷宮外に解き放ち、冒険者が派遣されてきた事をすぐに察知できるようにする。これで、ファル川とバイ村を適切なタイミングで引き上げさせることができる。


 結局冒険者が駆けつけてくるまでに4つの村を襲撃することができた。冒険者がこのまま迷宮を攻略しに来るかもしれない。ファル川とバイ村を撤退させている間に、獲得したポイントを使ってシブ吉を強化しておこう。


 レベル40だったシブ吉をレベル60にして進化させる。シブ吉はメルティディザスターに進化した。更にレベル80にしてもう1回進化させる。ディゾルヴアビスに進化した。名前はアビ吉らしい。


 中性的な雰囲気を纏い、少年とも少女ともつかない神秘的な容姿になったアビ吉。人型は仮の姿であり、真の姿は村を丸々飲み込むほどの巨大なスライム。概念をも溶かすこのスライムは、空間を溶かしてワープしたり、魔法を溶かして無効化する。


 ディゾルブアビスのように4度進化した魔物は、小国を滅ぼす程の災害級の化物だ。


 アビ吉が恭しく頭を下げ言葉を発する。


「魔王様、僕の言葉…分かりますか?」

「ああ」

「 本当ですか!これでやっと、魔王様とお話しできます!」


 まさか喋るとは。


「私の方こそ、嬉しいよ。ずっと話し相手が欲しかったんだ」


 軽く挨拶を済ませていると、ファル川とバイ村が帰ってきた。


 ホウホウの目を通して確認すれば冒険者は迷宮の方へは来ていない。どうやら街の方へ帰ったらしい。恐らく冒険者ギルドに報告に戻ったのだろう。


 さて侵入者の心配はなくなったので、今のうちにファル川とバイ村の強化もしよう。


 バイ村はレベル54だったのをレベル60にして進化させる。ドールアルカネに進化した。名前はアル村らしい。


 ドールアルカネは、その身体は象程まで巨大になり、糸で編んだ精巧な人間の人形を本体の前にデコイとして配置するようになった。人形を複数体操り攻撃する。この人形には装備品を装備させられるので強化できる。


 ファル川もレベル20だったのをレベル60にして進化させる。デスレイヴンに進化した。名前はレイ川らしい。


 デスレイヴンは、死の予兆と恐れられる漆黒の巨鳥。知能が高く、魔物の群れを完璧に統率できる。ようするに強力な全体バフを使えるバッファーの魔物だ。バッファーよりも個として強い魔物が欲しいから、本当はもう1つの進化ルートに進ませたかったんだよな。


 ついでにスナ次郎もレベル40にして進化させる。ポケットディメンションに進化した。名前はポケ次郎らしい。


 ポケットディメンションは、空間に干渉する魔力を得て、頬袋の内部が亜空間と繋がったリス。戦士の大剣や、家の金庫ごとまるごと吸い込んで跡形もなく盗み出す。ゲームだと冒険者から盗める範囲が広がって何でも盗めるようになる。


 あとは残りのポイントを使って魔物たちのレベルアップを行う。まず全員をレベル20にした。その後、アル村をレベル40に、アビ吉をレベル22にレベルアップさせた。


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