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迷宮魔王クルエルシード  作者: 海老天ころも
第1章 迷宮誕生
3/33

03 攻略


 ここはカルドレアの街にある冒険者ギルドだ。ここに先日マルム村の付近の森に新しい迷宮ができたという情報が入った。


 迷宮とは、昨日まで何もなかった場所に突如出現する不思議な空間で、入口は常に1つしか存在せず、内部は複雑に入り組んでいるが、必ず最奥の魔王の部屋へと繋がっているのが特徴。


 迷宮内には、凶暴な魔物や危険な罠が配置されている一方、アイテムや装備が入った宝箱がある。最奥の魔王が討伐されると迷宮はその存在を保てなくなり、完全に消滅する。討伐された魔王の死体からは、強力な魔道具の素材となる希少な「魔核」が手に入る。


 魔王を倒すと手に入る魔核、迷宮にしかいない不思議な生き物である魔物から取れる素材、宝箱から取れるアイテムや装備品。これらを手に入れ売却により金銭を得る活動をしているものを冒険者と呼び、その冒険者の共同体として生まれたのが冒険者ギルドである。


 冒険者ギルドは冒険者と迷宮を適切に管理し、迷宮から得られる利益を最大化する事を目的としている。


 そんな訳で、カルドレアの街にある冒険者ギルドは、新しい迷宮の情報が入ってすぐ調査のため1人の冒険者を派遣した。


 派遣した冒険者からの報告をギルドマスターが聞いているところだった。


「森の中に入り口があり、内部は隙間無く生えた樹木によりできた迷宮でした。床も壁も天井も樹木でできていましたね。これがその迷宮をできるところまでマッピングした地図です」


 冒険者が紙を取り出し机に広げた。ギルドマスターが地図を覗き込む。


「意外と広くないし、複雑ではないのだな」

「できたての迷宮ですからね。まあ、マッピングできていない先に、とんでもなく迷宮が広がっている可能性はありますが」


 冒険者は地図上の一点を指す。


「ここに3メートル程の崖があるんですが、ここより手前と奥で迷宮の色が変わるようです」

「これが村人の話にあった毒の霧が出たという場所か」

「ええ、すぐに通り過ぎれば問題はありませんでした。恐らく毒ではなく酸の霧かと思います」


 冒険者は地図上に記された点を指さす。


「ここに宝箱がありまして、中身はこの指輪になります」


 冒険者は袋から1つの指輪を机に出す。ギルドマスターが手に取りじっくり観察する。


「念のため鑑定には出すが、特に付与効果のないただの指輪だろうな」

「崖より手前で出てきた魔物は、マルグモとキリカブンの2種類。どちらもさして脅威ではありません。問題は崖を降りたその先です。酸の霧を超えてすぐ、ここにバインドグモが巣を作り通路を塞いでいました。バインドグモは1人で討伐できないためここでマッピングを終了し戻ってきました」

「バインドグモか。バインドグモならBランクチームで討伐できそうだな」


 ギルドマスターは報告で得た情報から判断を下す。


「暫くは崖までを侵入可として、所属冒険者に公開するとしよう。Bランクチームの手が空き次第この迷宮に派遣して、バインドグモを突破しその先を調査させよう」


 そう言うとギルドマスターは冒険者に調査依頼の報酬の金貨を渡したのだった。



◇◇◇



 村の大人たちを酸で倒してから2週間程経った。


 あの後すぐに冒険者が1人来たが、バイ村を配置したところまで来た後すぐに帰っていった。その後は冒険者が来るようになったが、作成した崖より先に来ることはなく、自動POPで召喚している魔物を倒し宝箱を開けて帰っていく。


 冒険者は強いからか、侵入された時点で少しのダンジョンポイントが入るが、自動POPや宝箱で消費するポイントで相殺されている。


 やはり大きくダンジョンポイントを獲得するには侵入者を倒さないといけないようだ。だが、奥まで進んできてない冒険者を倒すと危険な迷宮として、強い冒険者が攻略に来そうで怖いところではある。


 そんな葛藤のまま2週間が経った訳だが、ついに強そうな6人チームの冒険者がやってきた。


 冒険者たちは宝箱にも目をくれず、迷宮の奥へと進んでいく。


 崖を降り酸の霧を気にすることなく突破する。ヒーラーが居るらしく酸の霧のダメージも簡単に回復した。


 そしてほぼ最終防衛線と言えるバイ村のところまで来てしまった。


 バイ村は通路を塞ぐようにクモの巣を張り、冒険者達を待ち構える。だが、接敵した瞬間火魔法が飛んでくる。鋼鉄のように硬いバイ村のクモの糸だが、弱点が火なのだ。クモの巣はたちまち燃え尽きてしまう。


「キュエエ!!!」


 バイ村が怒りに吠える。


 冒険者チームの構成はタンク、男戦士、女戦士、魔法師、狩人、ヒーラー。タンクがバイ村を抑え込み、2人の戦士が両脇から攻撃してくる。離れれば後衛たちが遠距離から攻撃してくる。このままだとバイ村は倒されてしまうだろう。


 壁の穴に隠れていたシブ吉に、冒険者たちの背後から襲うように指示を出す。シブ吉は指示どおり、穴から体を細くして抜け出すと、バイ村の巣の方へ進んでいく。


 冒険者の背後につくと気付かれないように近付くと、ヒーラーに酸の液体を吹きかけた。


「アガァァァッ!!!」


 ネットリとした酸を頭から被り、ヒーラーが悲痛の声を上げる。煙を上げてのたうち回るヒーラーに、魔法師が水魔法で酸を洗い流そうとする。


 更に酸を吹きかけようとするシブ吉に狩人が矢を放つ。シブ吉の体に突き刺さるがダメージはない。


 このまま形勢逆転かと思われた瞬間、狩人が何かを唱えると、シブ吉に刺さった矢が爆発する。シブ吉は粉々に砕け散り倒されてしまった。


 ヒーラーはというと未だ酸が落ちずに苦しんでいる。コーロシブジェルに進化し粘度の上がった酸が水魔法では落ちずに、遂にはヒーラーが息絶えてしまう。


 よし、これで冒険者たちは回復ができなくなった。ヒーラーが倒れた事でポイントを獲得する。かなり強い冒険者だったからか多くのポイントが入ってきた。


 バイ村は戦闘中、シブ吉は再召喚のクールタイム中。ここはバミ川を進化させるしかない。


 ツイバミは配合という迷宮の機能で、毒持ちの魔物と配合すればドクツバミという魔物になる。ゲームだとドクツバミの方の進化ルートの方が強いため、本当はバミ川はこのルートの進化先にしたかったのだがしょうがない。


 バミ川をレベル20にして進化させる。ツイバミはツキサシに進化した。レベルを40まで上げてさらに進化させる。リッパーファルコンに進化した。名前はファル川らしい。


さらにファル川を残りポイントでレベル30まで上げる。これでできることは全部やった。


 ファル川にバイ村を助けるために向かわせる。もうバイ村の限界が近い。


 バイ村が近付いてきた男戦士をクモの糸で拘束し吊し上げる。すぐさま魔法師が火魔法で糸を燃やそうとするが、その前にファル川が飛来する。


 高速で吊るされた男戦士の横を飛来したかと思うと、男戦士は上下に一刀両断された。


 ファル川が着地すると大きく雄叫びを上げる。


「グワァアアッ!!」


 リッパーファルコン。白銀に輝く嘴と爪は、ナイフのように鋭利で金属のように硬い。羽ばたくたびに超高速で微振動しており、触れるだけであらゆるものをバターのように滑らかに切り裂く。


 バイ村がこれまでのダメージによりついに力尽きる。


 ファル川が再び飛び上がる。タンクが前に出て盾を構える。しかし、タンクは盾ごと真っ二つに切り裂かれた。


 ファル川が折り返すために速度が緩まったところに、狩人の矢と魔法師の雷魔法が炸裂する。


 力尽きると思われたが、ファル川は最後の力を振り絞り再度突撃する。


 狩人目掛けてファル川が飛来するが、狩人が華麗に避ける。避けた際、空中で弓を引き絞りファル川に向かって矢を放つ。狩人が何かを唱えると矢が複数に分裂しファル川に突き刺さる。


 ファル川が力尽き地面に落ちる。


最終防衛線が突破されてしまった。このまま殺されるのかと思っていたが、冒険者はバイ村とファル川の素材を剥ぎ取ると、遺体を担ぎ迷宮から撤退していった。


 助かったと安堵した。だが、その1週間後さらに強い冒険者チームが来てボコボコにやられ私は殺されるのだった。倒した冒険者2人分のポイントを使ってバイ村をレベル54まで上げていたのだが歯が立たなかった。


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