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迷宮魔王クルエルシード  作者: 海老天ころも
第3章 国落とし
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32 護衛


 国落としが完了し、ホラフラフ共和国の王城を手に入れたが、ニネを迷宮から出せずに居た。というのもニネに護衛が欲しいと考えての事だ。


 配下の魔物をニネの護衛としても良いが、ニネを四六時中護衛してもらうため、配下の1人が他で使えなくなるのは痛手だ。特に配下の中で女性の見た目をしているのはアビスとラクネだが、ラクネはホラフラフ共和国の最高執政官となり旗振り役となってもらっているため難しい、アビスは空間移動能力が有能であるため難しい。


 それにニネにとっても、どうにも姿が人でも魔物である配下達とは壁一枚あるようで、そんな者に四六時中護衛されれば気も休まらないだろう。という訳で人間で護衛、できれば女性の方が良いだろう。尚且つ将来的には操気術も習得してもらわなければならない。


 という訳で王城に勤める使用人に積極的に接触し、ニネの護衛となる人材探しを行っていた。そして私はとある侍女に目を付けた。それが侍女のフレノラだ。


「失礼します、シード様」


 呼び出していたフレノラが、私の執務室に入ってくる。メイド服に身を包んだ彼女の首には奴隷の首輪が嵌められている。元は市長の連れていた奴隷だったようだが、既に私が主人として再登録され私の奴隷となっている。


 フレノラの仕事ぶりは真面目で丁寧だ。奴隷になる前の生活にも未練が無いようで、今の待遇に非常に感謝しているようだった。そして、気を練った状態で自然に接触したところ、気を感じた素振りを見せた為、恐らく操気術の才能がある。既に奴隷であるため、知りえた情報は一切喋るなと命令すれば、外部に情報も漏れないだろう。


 ニネの護衛として、まさにうってつけの人材を見つけたのだ。


 入室したフレノラに座るように促して、私も正面の椅子に座る。いつもと違い真剣な様子の私の姿に、フレノラの表情にも緊張が走る。


「フレノラには今の仕事を辞めて、別の重要な仕事に就いて貰えないか、相談したい。その為に今日は呼んだんだ」

「シード様がおっしゃるなら引き受けます」


 私の言葉に、すぐにフレノラが答えるが、私は首を振る。


 奴隷であってもやる気は重要だ。主体的に仕事に取り組む奴隷と、嫌々命令にのみ従って仕事する奴隷では、仕事ぶりは大きく異なるだろう。ニネの護衛も、自身の意思のよって引き受けてもらわなければ、意味がない。


「この仕事は、引き受けてからでしか詳細は話せないが、辛く厳しい仕事になる事は確かだ。引き受けることになれば、命の危険もあるし、情報が洩れぬように奴隷への”命令”をすることになる。そうすれば、孤独で周りに相談もできない。」


 私の言葉にフレノラがごくりと唾を飲み込んだ。


「この話を断って、王城に勤めて居る方が幸せだったと思うかもしれない。答えを出すのを一日待ってもいい、よく考えて答えてくれ」


 フレノラは俯き何か考えているようだった。しばらくしてフレノラが顔を上げる。


「なぜ、私だったのでしょうか?」


 そう疑問を口にしたフレノラは、真っすぐに私の目を見つめている。


「…王城に勤める使用人の中で、フレノラが最も適任だと私が思ったからだ」


 その判断材料は置いておいても、フレノラが最も適任だと思っているのは真実である。その言葉と共に、フレノラを強く見つめ返す。すると、フレノラは静かに目を閉じた。


 そして、再び目を開くと立ち上がった。


「分かりました、私にその仕事をやらせてください」


 そう言って、フレノラは頭を下げた。


「そうか、ありがとう!」


 決断してくれたフレノラに感謝を示す。


 さて、仕事の詳細を説明する前に、命令をするべきだろう。


「すまないが、まずは命令を行う。“フレノラは私を裏切ってはならない。私に害をなす一切の行為を禁ずる。また、フレノラが知り得た私の秘密を、いかなる方法であっても秘密を知らない他者に伝えてはならない。”」


 私の命令に、フレノラの首輪が反応し、確かに命令として受理されたようだ。


 これで私が魔王であることや、ラクネやモルガが魔物であると知られても、フレノラから情報が漏れることはないだろう。ただ最初から正体をバラせば、フレノラのやる気を削いでしまう可能性もあるため、そこら辺は勘づかれ始めてからでいい。


 まずはフレノラを護衛として役立つように育成する。


「新しい仕事はとある人物の専属侍女となり、その人の護衛をする事だ」

「…護衛、ですか?私には戦う能力はありませんが」

「それは大丈夫だ。これから強くなってもらう」


 私の言葉にさすがに驚いた様子のフレノラだった。だが、魔王である私はスキル習得のスクロールを自在に生成可能であるため、すぐにでもフレノラをスキルもりもりに出来る。更には、アビスはスライム特有の核を破壊すれば倒せるため、フレノラに最終進化の魔物であるアビスの核を破壊させれば、経験値も大量獲得でき、すぐにレベルも上がる。


 1週間もあればステータス上は、Aランク冒険者相当の強さが手に入るだろう。そうすれば護衛の仕事ができるだろう。後の戦闘技術と操気術は、ニネの護衛をしつつゆっくりと身に着けて貰えばいい。



◇◇◇



 1週間後、メイド服型の防具と上等な剣を装備したフレノラが出来上がった。


「いよいよ、護衛してもらう人の所に行くから」

「はい、シード様!」


 少し精悍な顔つきになったフレノラが返事する。


 私は迷宮裏口(ダンジョンズゲート)を作り出すと、迷宮へと繋げる。迷宮裏口(ダンジョンズゲート)は便利な転移能力ではなく、その繋げる先には制約がある。外からは迷宮へ、迷宮からは外にしか繋げられない。また、迷宮から繋げられる外は、配下の五感を共有して認識できた空間にしか繋げることができない。


 だが、今回で言えば首都から迷宮に繋げるだけのため、問題ない。


 フレノラと共に扉をくぐり、迷宮へと移動する。既にフレノラはステータスを得るために一度ここに連れてきている。だが、今回来たのは迷宮最奥付近に作っている住居空間だ。


 既に住居空間にある道は既に、迷宮の装いから、屋敷に居るような感覚になる廊下へと変わっている。


 集中し感覚を研ぎ澄ませば迷宮内の状況が分かる。ニネは部屋にいるらしい。


 フレノラを連れてニネの部屋へと向かった。部屋に着くと、ノックして部屋へと入る。


 私の顔を見てすぐにニネの表情が明るく変化する。


「おかえり、魔王!」


 椅子に座っていたニネが立ち上がり、こちらへと駆け寄ってくる。だが、私に続き入ってきたフレノラを見つけ、足を止める。


「なに、その女?」


 フレノラが感探を使ったのが分かる。すぐに魔物ではなく、人間とわかったはずだ。配下の魔物以外と居るところを初めて見たので、ニネが驚いているようだ。


「この子は…」


 私がフレノラを紹介するためサッと身体をどかす。それに呼応するように、フレノラが自己紹介のため一歩前に出る。


「あ、私はフ」


 そうフレノラが言葉を口にしようとした瞬間、何かが目の前を高速で通過した気がした。


 気付けばニネがフレノラを殴り飛ばし、フレノラが部屋の扉を破壊して吹き飛んでいた。


 フレノラが廊下の壁に激突し失神する。殴られた顔が歪み、鼻から血が流れていた。


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