第6章:何だこの大会の賞品は?!
文法や構文に不備がございましたら、平にご容赦いただけますと幸いです。
フェルロスは街などではなかった。夜の路地裏で出くわしたら脱兎のごとく逃げ出すレベルの、ならず者どもの巣窟だった。
俺たちを乗せてくれた農民たちは、雑に荷物を降ろすなり一目散に逃げ去っていった。その気持ちは痛いほどよく分かる。それに比べれば、リーゼの街なんて子供の遊園地みたいなものだ。
街全体がまるで巨大な青空闘技場のようだった。至る所で巨漢たちが殴り合い、路地裏のあちこちで賭博が行われ、どこを見ても殺伐とした空気が漂っている。
「おいチョーロー、気をつけろよ……ここじゃトカゲなんて、最悪な大衆食堂のメニューに直行しそうだぞ」
「やってみるがいいわ!」
肩の上でトカゲが鼻息を荒らげた。
「返り討ちにして全員串焼きの炭にしてやる!」
「落ち着けって。お前なんて排水溝のドブネズミでも食わないから」
俺たちは中央にあると思われる酒場にたどり着いた。計画は単純だ。ギャレンについての情報を集め、奴を見つけ出し、思いっきり叩きのめしてから王都へ戻る。
飛んでくる椅子やビールジョッキをかわしながら、なんとかカウンターまでの道を切り開いた。
「あの、すみません……情報探してるんですけど。ちゃんとお金は払います」
俺は最後の銀貨二枚を取り出した。ヤクザの事務所から抜け出してきたような面のバーテンダーが、銀貨をジロリと見つめ、それから俺の顔を見た。
「おい坊主、金は取っておきな。何が知りたいんだ?」
マジかよ。見た目は完全に犯罪者なのに、心は紳士かよ。
「ギャレン・ルークという男についての情報を探してるんです」
俺は説明した。
「このあたりの出身のはずなんですが……俺の『大親友』でして」
「ギャレン・ルーク……ギャレン・ルークか……ああ! 『牡牛』のケールの息子か!」
バーテンダーが声を上げた。
「あいつに友達なんていたとは知らなかったな。父親と瓜二つの奴だ」
「『牡牛』……?」
チョーローが顔を覗かせた。
「どういう意味だ『牡牛』とは? 種族の混血か何かか?」
「ハッ! おいおい、そのトカゲ喋るのか?! 驚いたな……」
バーテンダーはニヤリと笑った。
「まあ、『牡牛』ってのはな、このあたりの女を片っ端から食い散らかしてたって意味さ。意味が分かればの話だがな」
「分からんな、つまりそれは――」
「チョーロー、よし分かった、後で説明するから!」
気まずい質問を重ねられる前に、俺は咄嗟に割り込んだ。それからバーテンダーに向き直る。
「ギャレンが街にいるかどうか分かりますか?」
「いや。しばらく奴も父親も見かけてないな。どうせどっかでトラブルでも起こしてるんだろ。ああ、かわいそうなのはセーラだ……あんな夫と息子を持ってしまってな」
「セーラ? 誰ですかそれ?」
「ギャレンの母親さ。凄腕の元冒険者で、綺麗な女だったんだがな。夫にベタ惚れで、こんなドブみたいな街までついてきたんだ。最近じゃ彼女の姿も見かけないが……無事だといいんだがな」
酒場への訪問は完全な骨折り損に終わった(おまけにノミを数匹お持ち帰りさせられただけだ)。
「駄目だなチョーロー。王都行きの馬車を探して、さっさと引き上げよう」
「おい少年……ッス! こっちだ!」
暗い路地裏から、痩せこけて骨ばった、見るからに怪しい男が手招きしてきた。
「勝負事に興味はないか? 面白い賞品が出るぞ……大金持ちになれるチャンスだ!」
「結構です。どんな『賞品』か目に見えてますから」
「いやいや、聞けって! 金もあるし、業物のアーム(武器)もある、それに……へへっ、秘密の特別賞品もあるんだ!」
男の説明によれば、フェルロスのすぐ外にある打ち捨てられた古い鉱山で地下格闘大会が開かれており、その報酬は目眩がするほど豪華らしい。
「ちょっと待ってくれ、相棒と相談する」
「あ? 相棒だと?」
俺は肩の上に視線を送った。
「チョーロー、お前どう思う?」
「見るからに信用ならん奴だな」
トカゲが俺の耳元で囁いた。
「だが、我らは完全に一文無しだ。それに、お前の新しいスキルを試す絶好の機会でもある。万が一の時は、我が引っ張り出してやる」
「決まりだな。その闘技場まで案内してくれ」
鉱山に到着すると、一メートル進むごとにギシギシと鳴る木製の手動エレベーターに乗った。完全な暗闇の中を数十メートルも下っていく。空気は冷たく湿り気を帯びていった。
底には巨大な地下空洞が広がっており、鉄と木で囲まれた砂の闘技場が設置されていた。観客席では、血に飢えた群衆が怒号を上げながら賭けに興じている。
俺は他の参加者たちと共に列に並んだが、正直、ここに来たことを一瞬で後悔した。参加者の中で一番小柄な奴でさえ、俺の三倍は横幅があった。
「なあチョーロー……俺、ここで細切れにされるぞ」
「心配するな! 頭を使え、必要なら走れ。全員デブばかりだ。二分も走らせれば心臓麻痺で倒れるわ」
「うわぁ。頼もしいメンタルコーチだな」
その時、身なりの整った男が闘技場の中央へ進み出た。
「紳士淑女の皆様! 本日、この鉱山闘技場にて、記憶に残る熱戦をご覧入れましょう! そして賞品は……フフッ、賞品はさらに素晴らしいものとなっております!」
男が合図を出すと、黒い布で覆われた三つの檻が砂の上へ引きずり出されてきた。
「三等賞! 金貨五百枚が入った袋! 小さな財産ですな!」
観客から歓声が上がる。
「二等賞! あらゆる魔法を跳ね返す魔法の盾!」
客席から爆発的な歓声が沸き起こった。
「そして……最高の賞品! 野郎ども、檻の布を剥ぎ取れ!」
手下が縄を引くと、布が崩れ落ちた。
俺もチョーローも、その場で硬直した。
鉄の檻の中にいたのは、一人の女性だった。年齢は四十から四十五歳ほどだろうか。その身体には痛々しい傷跡や痣が刻まれていたが、顔立ちにはどこか上品で美しい面影が残っていた。艶やかな赤毛を後ろで雑に束ね、ボロボロに引き裂かれたチュニック一着だけを身にまとっている。
「そうだ!」
実況の男が下劣な笑みを浮かべながら叫んだ。
「この大会を制した者は、この女を連れて帰ることができる! 元妻、元母親、そして元・親衛隊員! もはやピチピチの若さではないが、奴隷として使うも良し、護衛にするも良し……あるいは、お前らスケベどもの好きにするも良しだ! さあ、宴の始まりだぁ!」
俺は目を見開いた。頭の中で、猛烈な怒りが一気に沸き上がってくるのが分かった。
……何なんだよ、この街の賞品ってのは!!
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