第3章:新しい仲間?……だといいけどな!
文法や構文に不備がございましたら、平にご容赦いただけますと幸いです。
「あはは! 似合ってるぞ、ハルキ! これで立派な冒険者に見えるぜ!」
ガレンが大笑いしている。
俺のなけなしの貯金から、銀貨10枚分もの大金をはたいて買った革の胸当てとショートソード。革はカチカチでひび割れているし、刃なんてバターすら切れなさそうなくらい丸い。だが、今の俺の懐事情ではこれが限界だった。
「やめてよガレン! そんな言い方しないで」
リスナが助けに入るように歩み寄り、俺の胸元に人差し指をちょんと触れさせた。
「ハルキ、すごく……似・合・っ・て・る・よ」
おお、女神様。
真っ赤な胸当てをきつめに締め上げた彼女が至近距離まで迫ってきて、俺は急に体が熱くなるのを感じた。
「あ、ああ……ありがと、リスナ。お前は分かってるな……」
平静を装いながら、なんとか声を絞り出す。
「おうおう、ボウズもなかなかサマになってんじゃねえか!」
マッチョとデブの二人がハモりながら、俺の背中をガツンと叩いた。一瞬で頸椎がズレるかと思ったぞ。
ボウズじゃねえ。俺は身長168センチだ! 巨人じゃないかもしれんが、男としてのプライドはあるんだよ。
「よし、ハルキ。作戦を説明するぞ」
ガレンが表情を引き締めて言った。
「ここからそう遠くない湿地帯の奥に、古い遺跡があるんだ。デカいドブネズミやスライムが数匹いる程度の、大したことない場所さ。だが、お前の力が必要なんだよ。あそこには古代のトラップや仕掛けがある。お前は【雑用係】(オールラウンダー)だろ? 基礎的な探知スキルを覚えられるはずだ」
そう言って、彼は鞄から黄ばんだ羊皮紙を二枚取り出した。
「ほらよ。スキル習得のスクロールだ。これを読めば一発で準備完了だぜ」
なるほど。この世界でスキルを覚えるには、訓練を受けるか、この魔法のスクロールを買うかの二通りあるらしい。
……正直、ガレンがそんな都合よくスクロールを二枚も鞄に入れていたのは少々臭うが、深く考えている余裕はなかった。リスナが眩しい笑顔を向けながら俺の肩にすり寄り、「早く読んでみて」と催促してきたからだ。
スクロールを開くと、淡い光がそれを包み込んだ。
【システム:スキル『トラップ探知 Lv.1』を習得しました】
【システム:スキル『解除機構解読 Lv.1』を習得しました】
すげえな。学校の勉強もこれくらい簡単だったらよかったのに。
「よしよし! さすが俺たちのヒーローだな!」
ガレンが俺の首に腕を回して叫んだ。
「じゃあ出発だ! 楽しくなりそうだぜ、あはは!」
能天気で羨ましいよ、ガレン。お前はいつも笑えていいな。
◇
ギルドの硬いベンチでなんとか一泊を明かした翌朝、俺たちは例の怪しい遺跡へと向かった。
リーゼの街から離れるにつれ、あの吐き気を催す湿地帯のドブ臭さがようやく薄れ始めていく。鬱蒼とした森の奥へ進むと、樹齢数百年はありそうな巨木たちの間に、古代の神殿らしき建造物が姿を現した。
正面の入口は数百 m前に崩落したようだが、側面にぽっかりと大きな亀裂が空いている。
中に入るには、一人ずつ四つんばい(よつんばい)になって這い進むしかなかった。
で、運命の悪戯か、俺のすぐ前を歩いていたのはリスナだった。
……まあ、これくらいの労力に対する「ご褒美」くらいは、遠慮なく拝ませてもらってもバチは当たらないよな?
狭い穴を抜けると、そこには息を呑むような光景が広がっていた。
神殿の内部は驚くほど保存状態が良く、まるで時が止まっていたかのように美しい。
「よしハルキ、ここからはお前が頼りだ」
ガレンが俺の背中を押して前に出させた。
「先導してくれ。俺たちの命はお前にかかってるんだからな!」
「へいへい……プレッシャーをかけるのがお上手ですねえ」
俺の『トラップ探知』スキルは想像以上に優秀だった。
視界の中に、加圧式の床板や透明な糸、暗がりに仕組まれた滑車などの輪郭がくっきりと浮かび上がる。
……問題は、レベル1のせいなのか「見えているだけ」で、解除まではできないことだ! 結局、障害物競走みたいに器用に避けて進むしかない。
一方、閉ざされた扉には『解除機構解読』を使った。錆びついた鍵をいくつか解除し、頑丈すぎる扉はデブの体当たりで強引にぶち破った。豪快な野郎だ。
その間、道中に現れるスライムや巨大ネズミは、ガレンとリスナがあっさりと片付けていった。特にリスナのボウガン捌きは、恐ろしいほどの精密射撃だった。
何時間か歩いた末、俺たちの前にビルの三階建てはあるかという巨大な門が立ちはだかった。
一体全体、誰がこんな規格外なもん作ったんだよ!?
「おいハルキ、お前の『魔法』で見せてくれよ。開けられそうか?」
「冗談だろ?」
冷たい石の門に触れながら言い返す。
「鍵穴すらないぞ。それに、いくらあいつの体当たりでもこれは無理だ」
デブが懲りずに突進してみたものの、案の定派手な音を立てて跳ね返され、目を回してひっくり返った。バカめ。
「本当に……何もできないの? ハ・ル・キ……?」
耳元で、リスナの甘く吐息混じりの声が囁かれた。
「開けてくれたら、私……何でもしてあげるのに……」
よっしゃ。モチベーションは最高潮に達した。
俺は壁の隅々まで入念に調べ上げた。
十分ほど粘った末、指先が小さな窪みに引っかかり、隠しレバーを押し込むことに成功した。
ガコンッ!
部屋の中央で石の床がスライドし、底なしの暗闇が広がる落とし穴が現れた。
その穴の脇から、見たこともない文字が刻まれた石碑がにゅっと競り上がってくる。
「おいガレン、これ見ろよ」
刻まれた文字を指差す。
「この世界の文字か? なんて書いてあるんだ?」
ガレンが近づいてきて、奇妙な笑みを浮かべながらテキストを見つめた。
「ああ、古代語だな。ええと……『先へ進むには犠牲が必要である』……だとよ」
「は? じゃあ誰かをそこに投げ込まなきゃいけないってことか?」
俺はぴたりと動きを止めた。
「待て……嘘だろ、クソッ」
「冴えてるじゃねえか、ハルキ。大正解だ」
振り向く時間すら与えられなかった。
尻に叩き込まれた強烈すぎる蹴りによって俺の身体は宙を舞い、そのまま暗黒の奈落へと真っ逆さまに落ちていった。
落下しながら最後に耳にしたのは、暗闇に響き渡るリスナの品のない、残忍な高笑いだった。
……おい冗談だろ、なんで俺ばっかりこんな目に遭うんだよ!?
今すぐこの物語の作者を連れてこい、文句を言ってやる!!




