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第18章:煙と鏡(完結編)

文法や構文に不備がございましたら、平にご容赦いただけますと幸いです。

絶対に大バカなことをしていると分かっているのに、もう引き返せない……そんな瞬間を経験したことはあるだろうか?


まさに今の俺が、それだった。


ダンジョンでの惨劇の翌晩、万能職によって解放された様々なスキルの中に、あの闇の召喚術が現れていた。なぜ解放されたのかはよく分からなかったが、自分の中では「二度と使うことはないだろう」と固く心に決めていたはずだった。それなのに……


「来い、深淵の者よ! 現れ出て、敵に真の恐怖を味わわせてやれ!」


「駄目、ハルキ、やめて!」


セラの声が恐怖で震え、彼女は息をのんだ。


「あの化け物たちがどれほど危険で、私たちに何をしたか覚えているでしょう!?」


「大丈夫だよセラ、あの金髪にちょっとお仕置きしたいだけだから!」


「待て小僧、その魔法を使うな!」


チョーローが目を剥いて咆哮した。


「みんな落ち着いてくれ、ちゃんとコントロールできているから!」


床に描かれた紫色の魔法陣から、一匹のコバリンが現れた。血走った赤い目、泡を吹く黒い口腔、そして手に握られた粗末な鋸状の刃……相変わらずの悪趣味で凶悪な姿だった。


だが今回は、その思考が俺の脳裏に鮮明に流れ込んできた。原始的で歪んだ概念の濁流だ。


『殺せ……解体しろ……喰らい尽くせ……我が主のために、もっと血を、もっと痛みを、もっと死を……』


激しい痛みが俺の顳顬を突き刺した。


「佐藤、そんな安っぽい小細工で何をするつもりだ?」


白石は大剣を向けながら嘲笑した。


「俺の聖剣が、そんな雑魚一匹に止められるとでも思っているのか?」


「ハァ……ハァ……本当にそう言い切れるか?」


俺は頭を押さえながら息を切らした。


「行け、コバリン! お前の力を見せてやれ!」


コバリンの人間離れした悲鳴が、室内にいた生徒全員を恐怖で戦慄させた。化け物は盲目的な狂気で勇者に向かって突進したが、白石の一閃によって容赦なく真っ二つに切り裂かれた。


「佐藤……失望したぞ」


金髪男は首を振った。


「一体何を期待させられたのか……って、何だ何は!?」


倒れたコバリンの内臓から別の個体が生まれ、即座に彼へと襲いかかった。白石は二匹目も切り裂いたが, そこからさらに二匹が生まれ……


ほんの数分のうちに、部屋の中は数十匹のコバリンで埋め尽くされた。そして最悪なことに、奴らはもう金髪男だけを狙っていなかった。化け物たちは殺意に満ちた目で、そこにいる全員を見つめていたのだ。


全員を……俺以外の全員を。


「やめろ! 止めろ! 俺の命令を聞け!」


俺は絶望的に叫んだ。


「もういい、消えろ!」


駄目だった。俺の頭の中では殺戮の思考だけが響き渡り、俺の統制を完全に拒絶していた。


「いやぁぁ! 来ないで!」


九条玲奈は恐怖に顔を引きつらせ、後ずさりしながら悲鳴を上げた。


「この九条玲奈に近づかないでよ!」


勇者たちが倒せば倒すほど、コバリンは増殖していった。


「ハルキ、早く何かして!」


セラは仲間たちを護るために盾を構えながら哀願した。


「やってるんだセラ! でも……止められないんだ!」


「全員、今すぐ下がれ!」


ヴァルディス将軍の声が人混みを切り裂いた。男は目にも留まらぬ動作で黒い大剣を抜刀した。


【スキルシステム:剣士 Lv.88 ―― 空間断裂斬】


不可視の巨大な真空の刃が、室内にいたすべてのコバリンを一斉に薙ぎ払い、一瞬で灰へと変えた。


「今だ、森川! この場を浄化しろ!」


将軍が命じた。


「は、はい、すぐに!」


結衣は吃音を交えながら杖を掲げた。


【スキルシステム:サイレントヒール Lv.28 ―― 浄化】


青澄んだ光の巨大な波動が室内に弾けた。コバリンの残骸は完全に消滅し、それとともに俺の魔法陣も消えてなくなった。


幸いにも、ヴァルディス将軍の経験と判断力が大惨事を未然に防いでくれたのだ。


パシッ!


乾いた平手打ちの音が、静まり返った闘技場に響き渡った。


セラが俺の顔を張ったのだ。彼女の手はまだ震えており、その瞳は怒りと恐怖で潤んでいた。


「バカ!」


声の詰まった叫びだった。


「どうしてこんなことをしたの!? あの化け物たちがどれだけ危険か忘れたの!? 私に何をしようとしていたか、忘れてしまったの!?」


「セラ……俺は……」


俺は恥ずかしさのあまり下を向いた。


「バカだった。くだらないプライドのために、君やみんなを危険に晒してしまった……ごめんなさい。本当にごめんなさい」


セラは数秒間俺を見つめていたが、やがて俺を強く抱きしめ、涙で頬を濡らしながら胸に顔をうずめた。


「二度としないでね、分かった?」


彼女は囁いた。


「二度と……」


あの日、俺は重要な教訓を学んだ。ある種の力は煙と鏡に過ぎない。自分が強くなったという単なる錯覚を与えてくれるが、それに身を委ねてしまえば、ただの大バカ者に成り下がるだけなのだと。

ご覧いただきありがとうございます!毎日21時50分に更新していきますので、よろしくお願いします。

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