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第14章:黒き顎、紅き瞳(前編)

文法や構文に不備がございましたら、平にご容赦いただけますと幸い

「そ、そ、そんな……」


さっきまで幸せそうで命に満ちあふれていたセラが、一瞬で凍りついた。彼女の顔から全ての血の気が引いていく。


その瞬間、ガレンも俺たちの方を振り返った。奴の目が俺たちを捉えた時、まるで暗闇から蘇った幽霊でも見たかのように瞳孔が開いた。


「あ、あり得ねえ……」


金髪野郎はドギマギしながら呟いた。


「てめえは死んだはずだ! それに……母さん、あんたは闘技場で誰かの商品になってるはずだろ! 一体全体どうなってやがる!?」


誰かの商品。


その言葉を聞いた瞬間、俺の中で何かが完全にショートした。怒りが残されていた自制心をすべて吹き飛ばす。


【システム:スキル『走者 Lv.1:瞬足』『闘士 Lv.1:必中右拳』発動】


誰かが反応するよりも早く、俺は奴の目の前に立ちふさがっていた。

俺の突き出した拳が壊滅的な衝撃とともにガレンの顔面を捉える。金髪野郎は二メートルほど後ろへ吹き飛び、泥水の中に無惨に叩きつけられた。


「おい、このクソ野郎……」


俺は拳を強く握りしめ、前へ進み出ながら唸った。


「俺に何をしてくれたかなんて、どうでもいいさ。だが、セラさんに何をしたか……今すぐここで殺してやりたくなるぜ!」


「やめて、ハルキ! お願いだからやめて!」


セラが俺に向かって駆け寄り、制止しようと必死で俺の腕を掴んだ。


ガレンは地面に血と泥を吐き出し、憎しみに満ちた目つきで必死に立ち上がった。


「どうやって生き延びたのかは知らんが、どうでもいい。タダで済むと思うなよ! 一度は運良く助かったかもしれんが、二度目はそうはいかねえぞ……そうだろ、お前ら!?」


奴の取り巻きたちが武器を構え、背後から威嚇するように迫ってきた。ガレンはセラの方を向き、無限の底意地悪さを込めた視線を送った。


「それにしても母さん……情けないねえ。あんたくらいの歳のババアが、そんなガキの後追いかい? なあハルキ……ババアとの夜は楽しめたか? ギャハハ!」


俺の肩の上から、チョーローの声が耳元に響いた。緊張しつつも硬いトーンだった。


「落ち着け、小僧。放っておけ、皆が見ている。怒る価値もない……セラの目の前で揉めるんじゃない」


俺は彼女へ視線を落とした。セラは涙を流し、完全に打ちひしがれていた。


実の息子から放たれた言葉は、どんな刃よりも深い傷を彼女に負わせていた。ガレンにとって自分はもはや母親ではなく、処分しきれなかった恥ずべき重荷に過ぎないという現実。


「失せな」


ガレンは唇を拭いながら吐き捨てた。


「このダンジョンは俺たちのものだ。まあ、どうしても入りたいんなら入ればいい……中でたくさんの『事故』が起きないよう気をつけるんだな。行くぞ、お前ら!」


奴らのパーティーが洞窟の入口へ向かい始める中、リサナが俺の脇を通り抜け、挑発的な笑みを浮かべた。


「大したものね、ハルキ……まさかそんな熟女が好きだったなんて知らなかったわ」


俺は猛烈な怒りで身を硬くさせたまま動けずにいたが、何とか耐え抜いた。セラは俺の後ろで膝をついたまま、ジャケットの袖を強く握りしめ、涙を絶え間なく頬に伝わせていた。


チョーローが俺の肩から滑り降り、彼女に近づいた。今度の彼の声はいつもの刺々しいものではなく、深く、古風で、荘厳な響きを帯びていた。


「セラ……お前の気持ちが分かると言えば嘘になる。我はトカゲの体に閉じ込められたドラゴンであり、人間の感情の複雑さを完全には理解できん。だが、これだけは言える。すべてはもう過去のことだ。お前の現在を破壊してよい痛ましい過去ではない。我とハルキは、お前が生きる価値を再び感じられるよう、できる限りのことをするつもりだ」


セラはゆっくりと顔を上げた。


しゃくりあげながら、彼女は俺とチョーローを引き寄せ、長く切実な抱擁で包み込んだ。今度は俺たちを慰めるためではなく、自分自身を慰める力を得るために。


俺とチョーローはぎこちなくその抱擁に応え、数分間黙ってその場に留まった。


俺たちが態勢を整えた頃には、他の冒険者たちはすでに洞窟の奥へと下りて行った後だった。


「セラさん……俺はそれでも中に入りたい」


俺は彼女の目を真っ直ぐ見つめて言った。


「俺たちのパーティーが一番だってことをみんなに見せたいんだ。俺たちのサファイアランクの戦士が、こんなゴミクズ相手に挫けたりしないってことをさ!」


「ほ、本当にいいの、ハルキ……? ガレンが何を……」


「ハッ! あんな安物の金髪野郎、俺たちに何もできやしないさ。そうだろ、ハルキ?」


チョーローが胸を張りながら割り込んできた。


「その通りだ、チョーロー!」


俺は微笑んだ。


「セラさん、このダンジョンを攻略することがあなたにとって大きな意味を持つって分かってる。一緒にやろう。またあなたの笑顔が見たいんだ」


セラは絶句した。彼女は赤くなった目を手の甲で拭い、深呼吸をして立ち上がった。かつての気高さを取り戻したようだった。


「あなたの言う通りね、ハルキ……私はもう一度人生をやり直さなきゃ。ガレンはいつまでも私の息子だけれど、私たちの道は永遠に分かたれたのよ。一緒に行きましょう。あなたと、私と、チョーローで……本当にありがとう。心から感謝するわ」


俺は彼女が鎧を整えるのを手伝った。彼女は少し離れた小さな小川で顔を洗い、胸を張ってダンジョンの敷居をまたいだ。


ガレンの存在のせいで不安ではあったが、入口をくぐるやいなや、その場所の空気感そのものが俺のあらゆる警報アラームを鳴らさせた。


洞窟は深く、息苦しく、湿っぽくなっていった。空気は重く、妙な金属臭が漂っている。


「小僧、この場所は嫌な予感がするぞ」


チョーローは猫のような目を丸く見開き、周囲を見回しながら呟いた。


「何かがおかしい。発見されたばかりの低層ダンジョンにしては、不穏な空気しか感じられん」


「ああ、チョーローの言う通りだ。警戒を怠らないようにしよう」


セラもあからさまに動揺しており、盾を胸に強く抱きかかえていた。最初はさっきの衝突のショックを引きずっているのだと思ったが、暗闇をじっと見つめる彼女の視線は別の何かを示唆していた。


脇道の抜け穴の影で、赤く光る点が時折明滅しているように見えた。そして水の滴り落ちる音の合間に、物陰で潜む空腹な顎の押し殺した軋み音が聞こえたような気がした……


ただの気のせいだったのか……それとも、悪夢はまだ始まったばかりなのだろうか?

ご覧いただきありがとうございます!毎日21時50分に更新していきますので、よろしくお願いします。

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