エピローグ
「ユリア、おいで。」
寝室のベッドに腰掛け腕を広げて私を呼ぶレオン様。
吸い込まれるように彼の腕の中へ向かう。
彼の大きい手が私の背中をゆっくりと撫でる。
その心地良さに私は目を閉じる。
「幸せだ…」
静かにそう呟くレオン様。
「私も幸せです…」
今この瞬間がすごく幸せ。
もしかしたら二度と訪れないかもしれないと思っていたから。
「ユリア、さっき言った大事な話なんだが…」
「そうでしたね…」
私はレオン様の膝の上から降りようとすれば彼の腕がそれを許してくれない。まるで、離れるなと言われているよう。
「ユリア。」
「はい…」
「君を守れなかったことを後悔しているんだ。あれほど、守ると言っておきながら君を守れず傷つけてしまった…。本当にすまない。」
私の目を見ながらそう言うレオン様は相当辛そうだった。
「そんなことありません…。だってこうして今一緒に居られるのですから…。それに、来てくださったときのレオン様、すごくかっこよくて…素敵でした。」
耳が赤くなっているレオン様。
私も自分で言ったわりに顔が熱くなっている。
「ありがとう、ユリア。俺は君が居ないと何も出来ないんだ。君がいないと仕事にもならない、君が隣にいないと眠ることも出来ない…。」
「私もです。レオン様が隣にいないと落ち着かないし、眠れません…」
彼と同じなんだと思うとすごく…嬉しい。
「ユリア、愛してる。これから先もずっと。俺の隣にいてほしいと思うんだ。だがら、俺と婚約しないか?正式に、俺の妻になってほしい。」
妻…あなたの…?
「な、泣くほど…なのか…もしかして、嫌だったか?」
「違う、違います!ただ、ただ、嬉しくて…。私がレオン様の妻になっても良いのでしょうか…」
私は涙を流しているのにレオン様はお構いなしに自分の胸に私を押し付ける。
「ユリアじゃないとダメだ。君じゃなければ俺は絶対に婚約なんてしない…君だから…君だから妻にしたいんだ…。返事をくれ…。」
私の答えは決まってる。
「私で良ければ、よろしくお願いします…!」
私の答えにレオン様の腕にまた力が入るのが分かる。彼の逞しいその腕も、私に放つ一言一言も、彼自身もすべて、私だけのもの…
こんな風に独占欲が湧いてくるなんて想像もしていなかった。だけど、それは全て彼が教えてくれた私の新たな感情だと思う。でも、それを知ることは私が彼に出会ったから、彼じゃなければこの感情を知ることは一生なかったはず。
「レオン様、愛しています。」
「俺より先に君が言うのは初めてだな…あははっ!」
「レオン様、言ってください。」
「ユリア、愛してる。」
「私も、この世の誰よりも愛しています…」
私たちは口づけを交わした。
きっと、彼と本当に心から繋がった瞬間だった。
彼の温もり、全てが私を包み込んでくれる。
彼は私がいればいいと言うけど、それは私も同じ。
私もあなたさえいればそれでいい。
翌日、私たちはフェルナリア王国の国民の前で婚約を宣言した。国民の中には私のことを「地味」「ヴァルグア王国の恥晒し令嬢」など言う人もいたけど、その言葉よりも耳に届くのは祝福の声。沢山の人たちに囲まれながら私とレオン様は婚約した。
「ユリアさん、おめでとう。うちのレオンをよろしく頼む…。」
「ジェリス国王陛下、ありがとうございます…!」
「ユリアさん、レオンに嫌なとこがあれば私にすぐ言って?私が殴っておいてあげるから!」
「ふふっ!ありがとうございます…!ですが…私は多分、レオン様に嫌なところがあっても気にしないと思います…。たとえ嫌な部分を見つけたとしても私がレオン様を嫌いになることなど絶対にあり得ませんから…。」
そう。彼について知らないことはまだまだあるはず。でも、彼の嫌な部分を見たところで私は彼への好きという気持ちの方が大きいから彼を嫌うことなどないだろう…
「ふふっ!レオンのことが大好きなのね!嬉しいわぁ…レオンをよろしくね。」
「はい…!」
「ユリア…!」
「ほら、レオンが来るわよ。行ってきなさい!」
(…っ!)
ポンっとエリー王妃様に背中を押される。
「レオン様〜!」
地面にドレスの裾がつかないようにしてレオン様に向かって走り出す。
(あっ…)
石に躓いてしまい転けそうになるけど、レオン様に受け止められる。
「危ないじゃないか…。俺の妻は色んな意味で目が離せなくなる…」
「それは…いい意味ですか?」
「…ま、まあ…いい意味でだ…」
「なんですか、その間は…」
「と、とにかく、危ないから走るな。」
「はい、分かりました。」
「「ふふっ!あははっ!」」
見つめ合えば笑い合う。
そんな関係が幸せだと思う。
ちなみに、あの後、リュークやアリスは罰をしっかり受けた。そしてサトクリフ家は王位を剥奪され、ヨバンナ家も公爵家としての地位が剥奪された。
ちなみに、私のお父様とお母様も色々とヨバンナ家にやらされたせいで罰を受けたらしい。
まあ、私にはもう関係のないことだ。
私はもう、フレイン家の人間ではない。
フレイン家とはなんの関係もない人間なんだ。
私は今日から、本当にエルディアス家の人間。
「ユリア、愛してる。」
「私も愛しています。」
私たちは人目を気にせず口づけをした。
ここで改めて誓ったの。
彼と永遠を共にするって。
ここからまた始まるんだ。
私たちの未来が。
レオン様、十三年もの長い月日の間、私だけを愛してくれてありがとう…。
これからは私があなたをこれ以上にない愛で幸せにします…。
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