ラウンド6『邪悪な異変』
【前回まで】
瑛人は自分を殺した怨霊にも何か悲劇があるかもしれない…そう思うと復讐すべきか悩み始めた。
しかし、その間にも瑛人と同じ怨霊に殺された被害者が現れた。
その後、前川が佐伯を別室に連れて行き、瑛人たちから事情を聞いた。
「なるほど…そうでしたか」
前川の癖で、話し始める前にため息を吐く。
「実は生前の殺される記憶は人によってまちまちなんです。たとえば竹中さんや清水さんのように死ぬ直前に強い『死』を感じると死後も記憶されたりします」
前川は瑛人を見る。
「しかし瑛人さんのように突然の『死』に直面すると、記憶されないままここ、霊界に来てしまうんです」
「つまり、瑛人さんと同じ怨霊による殺害であっても、佐伯さんは瑛人さんと違い『死』を十分感じるような体験をしてここに来たんでしょうね」
「なるほど……」
竹中が頷いた。
前川は少し冷や汗のようなものを流し、
新事実を瑛人たちに教えた。
「そして……さっきわかったことなんですが、
どうやら瑛人さん佐伯さんの他にT町であの怨霊に殺された人はいます」
「えっ!?」
瑛人たちの驚きの声を無視するように続ける前川。
「瑛人さんの前日も一人その怨霊に殺された人が……」
「その人は今どこに!?」
「………見ますか?」
(会いますか、ではなく『見ますか』って…?)
冬子は不思議にそう思いながらも、前川の後を行く。
この役場に鍵で開けないと入れない扉を開け、
階段を降りる前川と瑛人たちは、少し空気の重いような重圧感に押しつぶされそうになる。
階段を降りるとベッドが並んでおり、その一つに確実に"誰か"がシーツごと被らされている。
「これは……?」
前川がシーツを被って寝ている者の前に立ち、
それを取り外した。
「死人だった方です……」
身体がツイストドーナツのように捩れていて、
もはや性別も年齢も分からないような姿であった。
「……これは ?」
瑛人の言葉がここで詰まる。
「この方の生前は暴力団組員だったようで、
瑛人さんと同じく殺されたことを怨んでいました」
「私の講習を受けた翌日、つまり瑛人さんたちがここに来た当日にその怨霊に復讐をしに下界に行ってそうなんです……」
前川の沈痛な面持ちと、
突きつけられた現実に、愕然とする冬子と竹中。
「この人は…死んでるのに…また死んだんですか?」
前川は少し気の毒そうに伝えた。
「死んでいると言うより、抜け殻と言った方がいいかもしれません」
「身体から魂が離れてしまって……
その魂が行方不明に……おそらくもう魂は形を変えて何かしらの怨霊になっているでしょうね」
「………」
この長い沈黙を破ったのは冬子だった。
「この抜け殻はどこに……?」
「昨晩、霊界の外に捨てられていました……これをやった犯人がここに……来たんでしょうね」
この言葉に竹中が驚いた。
「怨霊がここに来るって……そんなこと出来るんですか!?」
竹中の当然の疑問に前川は足を震わせてしゃがみ込んだ。
「わからない!こんなことは初めてなんです!
怨霊になれば普通は生前から死人の状態までの記憶はなくなるはずなんだ!なんで……!?」
初めて見せる前川の本来持つ別の顔に、
(それほどまでに……)
と、皆んなこの異常さに恐怖に凍りついた。
「………警告なんだろうな」
「『ここにはいつだって来れる……だから死人は邪魔するな』って言う……その怨霊なりの」
瑛人がポツリと呟き、より全員が戦慄した。
そのまま瑛人は前川に聞く。
「役人も馬鹿じゃないんだ……
この怨霊については目星がついてるんだろ?」
「はい……この怨霊はつい5日前に誕生日したばかりの新しい怨霊です。その人を私が講習しましたから……」
「何故わかる?」
瑛人は興奮気味にそれを訊ねると、
前川は顔をゆっくりと上げた。
「この方は数日前の講習直後に『49日を待たずに怨霊になりたい』と、自らの意思で下界に行き、そのまま怨霊になってしまったんです……」
「な……なんで!?」
次々に明かされる衝撃に、冬子もつい敬語を失念してしまった。
「死因は首吊り自殺だったんで、どんな怨みによる理由までは定かではないですが……」
前川は改めて調べてみると、まさかの事実が判明したと言う。
「首を吊ったのは……瑛人さんが殺されたT町の路地裏にあるアパートの一室……おそらくまだ死体は発見されていません……」
竹中が静かに聞いた。
「名前は……?」
「………木根崎トミヨ…現役の霊媒師だったようです…」
【次回予告】
瑛人を殺した木根崎トミヨ…
彼女の正体は!?
次回投稿 7月19日




