ラウンド5『余韻と誤算』
【前回まで】
死人同士で手を取り合い、いじめで殺された清水冬子と共に、その犯人に復讐を果たした瑛人と竹中。
物語は犯人自首のその後から始まる。
「いやぁ!お疲れ!」
B子の家から戻った竹中が元気よく瑛人たちが待つバスに乗り込む。
「大成功だったね!」
3人がバスに乗り込みハイタッチをする。
竹中はやや興奮気味に話した。
今回のA子とB子の仕掛けはホラー映画好きの彼がほぼ一人で考えたと言ってもいい。
「私…お芝居って初めてだから不安でしたけど、
途中からゾーンに入っちゃって……でも」
「瑛人さんが必死にリモコンの電池を抜いてたのが笑っちゃいそうでしたよ!」
冬子が笑ったのは、A子が必死に消そうとしたテレビのリモコンを使わせないため、瑛人が電池をこっそりと抜いていた。
「てか、まず俺を褒めてよ!B子の声真似めっちゃがんばったんだから!」
竹中はB子の家に入ったあと、一通り準備をしている中、幸いなことにB子はA子に電話をかけた。
竹中はどうやったかはわからないがすぐにB子を失神させた。
B子が目を覚ましてすぐに自首をさせたから、
よほどの脅し方だったのだろう。
「瑛人さん、竹中さん本当にありがとうございました!」
冬子が死んでから一番の笑顔を取り戻した。
◆
「冬子ちゃんは?」
竹中は瑛人に聞くと、両手をだらりと下にさげた。
「今日もA子とB子の鑑別所に化に出て行ったよ」
「そうか」
「本人も『死んでから一番生き生きしてます』って笑ってたよ」
2人が苦笑をしたあと、竹中が切り出した。
「間宮はそろそろ動かなくていいのか?」
「あぁ……実はさ、少し心がブレてきちゃって」
「だろうと思った……冬子ちゃんと一緒に復讐しに行ってから元気ないもんな」
「……元気ないと言うか、考えごとしててさ」
「考えごと?」
竹中の問いに瑛人はゆっくりと口を開く。
「もしかしたらさ、俺を殺した怨霊って実は冬子ちゃんみたいに何かしら強い怨みを抱えてて、ついやりすぎて怨霊になったのかなぁ……って」
実は冬子が殺された記憶を念写でA子の部屋で流した時、
瑛人は不覚にもその顛末に冷静ではいられなかった。
もしこんなにも酷いことをされたら……
(俺はこの女たちを殺してもおかしくない)
そしてそのあと思ったのは、
(俺を殺した怨霊も、もし……もし冬子ちゃんと同じようなことをされた死人だったら……)
(怨霊になるのも無理はないな……)
そんなことを考えると、その怨霊が怨霊に見えなくなり、怨霊が人に見えてきた。
その怨霊も生前は『悲劇の人だった』のかもしれない。
この心模様を竹中にそれとなく話した。
「まぁ、やるからないかは間宮次第だし……このまま大人しく転生するのもありかもな」
と、瑛人を思いやった。
すると、冬子が慌てて瑛人の元に来た。
「瑛人さん!大変です!こっちに……早く!」
初めて見る冬子の血相の変わりように驚き、
理由も聞かずに駆け出す。
瑛人と竹中が冬子に連れられた先は"この日行われた成仏コース"の講習所だった。
◆
「佐伯さん、この人がさっき話した瑛人さんです」
佐伯はかなり美しい女性で顔色も良い。
ただ、おそろしく目に精気がない。
瑛人を横目で見たあと軽くお辞儀をした。
たまたま通りかかった冬子が佐伯を見た時に、
瑛人に同じく外傷がなかったため『もしや』と思い声をかけたらしい。
「まさかと思って佐伯さんの話しを聞いたら……」
「………」
「瑛人さんと同じく、怨霊に殺されたみたい」
「………!」
言葉を失う瑛人に冬子は、
ダメ押しと言わんばかりの事実を重ねた。
「この方が殺された場所が……瑛人さんと同じ場所なんです……たしかそうでしたよね?」
「瑛人さんのご自宅の東京のT町だって……」
「まさかあの怨霊に……!?」
瑛人は佐伯に近づき、
ーー T町のどこら辺で遭遇したのか?
ーー どんな姿だったのか?
もはや質問と言うより尋問に近い瑛人だった。
口をパクパクさせながら佐伯がやや震え出す。
佐伯の異変と、普段と違う語気の強さに
冬子が瑛人を少し嗜める。
「あまり矢継ぎ早にすると…」
冬子の言葉で少し冷静になった瑛人は改めて佐伯に聞いた。
「驚かせてごめん……じゃ、どんな風に殺された?」
思い出そうとする佐伯だったが、更に様子が更におかしくなる。
「……あ…っ……!」
寒気からか両腕を反対な手で掴み大きく震え出す。
!!
「ぎゃあああああっっああ……あっ」
絶叫しながや佐伯が椅子から転げ落ちた。
この様子に誰もが口をつぐんだ。
瑛人や冬子だけでなく、
固唾を飲んだのは竹中も同じだった。
(瑛人と違って普通の人ならこうなってしまうのか…)
対峙しようとした怨霊の恐ろしさを肌で感じた竹中だった。
【次回予告】
立て続けに被害が拡大していくT町の怨霊。
瑛人の決断は!?
次回投稿:7月18日20時過ぎを予定




