ラウンド4『苦しみと痛み』
【前回まで】
ある怨霊に殺された瑛人に親身になってくれた清水冬子は、行き過ぎたいじめで殺されていた。
経緯を聞いた瑛人は、幽霊として犯人に復讐を提案する。
「そういや死んでるのに腹とか減らないよな?」
「たしかに!喉も渇かないし、尿意もないんだよな」
竹中の独り言のような疑問に瑛人が反応する。
「あの……本当に大丈夫なんですかね?」
冬子が不安そうな顔で2人を見つめる。
「前川さんにも『どこまでやっていいか』ちゃんと聞いたし、あとは冬子ちゃんの芝居がどうなるか、じゃない?」
「そうですけど……瑛人さんは?大丈夫だと思う?」
竹中と同じく瑛人も大丈夫、と伝えた上で
新たな芝居のアドバイスをする。
「ゆっくり言うといいよ?そっちの方が怖いじゃん?セリフを思い出しながらゆっくり喋ってみたら?」
実はこの3人、既に前川と先ほど話し合い、冬子の敵討ちの話を相談した。
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「えぇ!?敵討ち……?まぁ止めないけど…」
誤解をしていそうな前川に瑛人は補足する。
「要はさ、人間にどこまで悪意の仕返しをすれば怨霊にならず、きちんと冬子ちゃんが来世の希望を受けられるのか?それが気になるんだ」
前川は改めて瑛人たちの話を丁寧に聞き、資料を見ながらアドバイスをする。
「死人が生きてる人を傷つけたり、殺したりした場合はダメだけど、脅すくらいなら……大丈夫ですかね。
しかも同じことしたけどちゃんと来世の希望を叶えた人はいますよ?
ほら、この人も、この人も、皆んなセーフですね」
前川は同様の復讐をしたことがある死人のリストを見せてくれた。
「よし、じゃあとは脅かし方だな!」
瑛人の言葉に、冬子と竹中も大きく頷く。
◆
夕陽が沈み、夜となる。
「そろそろ行くか」
竹中と瑛人が冬子に声をかける。
3人はそのまま役場の受付にいる前川から『外出許可』を受け取る際に、念を押された。
「くどいけど、滞在時間は30分以内ですよ?」
「はい、30分経っても霊界に戻らなければ私たちは…そのまま怨霊になるんでしたよね…?」
冬子の言葉に前川は真剣な顔で付け加えた。
「あっちの世界に行くと自分の死後、家族や友人、恋人など色んな変化や状況に興味が湧きます。
それに気を取られて戻って来れない死人さんを
今まで私はたくさん見てきましたから……」
この前川の言葉に固唾を飲む3人だが、
前川は明るく、そして役人らしく送り出した。
「定時までに必ず帰ってきてくださいね?」
3人は、また不気味なバスに乗り込んだ ーー
◆
3人を乗せたバスは関東北部にある閑静な住宅街で降ろされた。
「ここが君をこんな目に遭わせたB子の家だね?」
竹中の声に小さく頷く冬子。
「よし、行こう!段取り通り、いいね?」
竹中が犯人の家にすり抜けて入る。
わかってはいたが死人の2人は驚く。
「本当に幽霊みたいにすり抜けられるんだな……」
「ふふ、みたいと言うか、幽霊ですからね」
「じゃ私たちも次の家に急ぎましょう!」
◆
部屋でA子がポテチを食べながらベッドに寝転び、
B子とスマートフォンで電話をしている。
「B子の家には警察とか来てねぇよね?」
《いや〜まだ来てな〜いつかさ、捕まったらマジやばくない?来年受験とかやばくなるかな?》
「知らねぇよ、てか冬子のやつ『あれくらい』で死ぬなよな?マジだりぃ……」
「どこまでうちらに迷惑かけたら気が済むんだよ、
あのクソ女!」
「……」
この間しばらくB子が無言になった。
「どした?」
《あなたは……平気なの?》
「あなたって何(笑)?」
《冬子を殺したこと》
「はぁ?別に殺したって言うか、硫酸ぶっかけたら勝手に死んだんじゃん」
《そうじゃなくて、怖くないの?》
「別にぃ、捕まったってうちら未成年だし?」
《そうじゃなくて》
「なんだよ!?はっきり言えよ!?」
《お化けとか》
「あはははは!お……お化け!?マジ草なんだけど!あはははは」
《 もゔ 来でるがもよ?》
「うん?なんか声変じゃね?電波悪ぃのかな?」
ーー 突然全ての電気が消えた
「うああっ!びっくりした!!停電?ねぇB子?聞こえてる?」
《 ぎ ご え゛で る゛よ゛》
不気味な声が耳元をつんざめく。
スマホを離し画面を見ると、
冬子の死体が写っていた。
「ぎゃっ!」
慌てててを手から離して地面に落とした。
突然、暗い部屋にテレビだけが点き、
乱れた音声でなぜか当日犯行の映像が流れる。
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嘘でしょ?ねぇ……A子ちゃん……やめて……
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「え?……なに?……テレビ……消えない?なんで?」
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お願い!やめてっ!やめてぇぇぇ!
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じっとしてろ!ねぇB子?こいつ押さえて!
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カチッ…カチッ…カチカチカチカチカチカチ…
A子はリモコンを押しても消えないテレビに、
顔がいよいよひきつる。
「な…なに……なによこれぇぇっ!!?」
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硫酸いくよ?いっせぇーの……せっ!!
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あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
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あはははははは!声キモォい(笑)
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ぎゃはは!死にかけのゴキみてぇじゃね!?
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追加いこ♡追加♬追加♬せーの!おりゃ(笑)
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が あ … ご ぉ ぉ ぉ っ ぉ … …
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すげぇ!目が溶けてる!エグ!夢に出てきそう
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てか動かないんだけど?……逃げるか(笑)
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「なにこれ……やめて……やめ……」
「ねぇ……?」
ーー ぞくっ
「あっ…えっ?あ…あ…あ……」
冬子が後ろからA子の顔を両手で掴む
「ママ…に…会いたいの…」
「……と……と…冬…子……?」
「……ママ……ママ……」
ポタポタと冬子の顔からただれ溶けた皮膚が雫のように、上からA子の顔に落ちる。
「いぃっっ…あ…あ…」
「ねぇ…」
「ご…ご…ごめん…な…さい…冬子…」
冬子の顔が近づき、A子が恐る恐る横を見た
「ママにぃっ あ゛や゛ま゛っ゛て゛!!!」
◆
深夜、放心状態のままA子とB子はそれぞれ虚な目で警察署に自首をした。
奇しくもほぼ同じ時刻だったようだ。
逮捕状請求までの間は署の拘置所に置かれ、
広い大部屋の隅で2人うずくまり震えていた。
「ボソボソうるせぇよ!テメーら!」
女性たちがA子たちに怒りをぶつけたのは、
消灯したあとも何かうわごとを呟いていたからだ。
「何て言ってんだこのガキ?」
眉毛のない女が近づき耳を澄ませた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
その声は数日止まることはなかった。
そして今日も……
「ごめんなさいごめんなさいごめ ーー」
「許さないよ?」
少年法でも守られない終わりなき悪夢 ━━━━━
【次回予告】
復讐を果たした冬子が瑛人たちにある話をする
次回投稿日 7月17日 20:00頃予定




