表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私を〝ママ友〟と呼ばないで下さい  作者: 殿水結子@「娼館の乙女」好評発売中!
それぞれの事情

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/21

16.武尊と翔馬

「まあ、たまにはズル休みもいいだろ」


 武尊はそう簡単に言い、悠斗は何かをじっと考え込んでいる。


「今日はママがいないし、好きなところに連れて行ってやる。どこがいい?」


 悠斗は消え入りそうな声で言った。


「……公園」

「ん?」

「第二公園がいい」

「ああ、あそこか……」


 この地域には、第一公園と第二公園がある。よくある一般的な遊具の置いてある、何の変哲もない近所の公園だ。


「もっと電車に乗って、遠くへ行ってもいいんだぞ。遊園地とか、話題のレストランとか……」

「ううん。そういうの、もういい」

「?」


 我が子ながら、不思議なことを言う。一瞬武尊はそう思ったが、近所で事足りるなら手間がなくていい、と考えた。


「そうかそうか。じゃあ、早速公園へ行こう」




 二人は第二公園へやって来た。


 悠斗は何も面白くなさそうにブランコに座り、軽くキイキイと漕ぐ。


 武尊も隣のブランコに腰掛けると、息子に尋ねた。


「何か学校で嫌な事でもあったのか?」

「……」

「ちょっと疲れちゃった?」

「……」


 何かと自主休校の〝理由〟を聞き出そうとする父親に、悠斗はこともなげにこう返した。


「ここの公園、初めて来た」


 武尊は首をひねる。


「そんなわけないだろう。何回も来たよ」

「知らない。覚えてない」

「あっ、そっか。小さい頃はたくさん来たんだけどな~」

「……」


 悠斗は苛立っているかのように、爪先をこつこつと鳴らした。


 それを見とがめて武尊が言う。


「おい、何なんだよ。言いたいことがあるならハッキリ言えよ」


 悠斗は言った。


「なんか、ずっとそんな感じだよねパパ」

「はあ?」

「必ずそこに答えがあるって、信じてる。ママも」

「?」

「なんとなくこう、って言ったら嫌がるよね二人とも」

「……」

「それは許さない、ってなる。そんで、急かす」


 武尊には、少し心当たりがあった。


「ああ、そうか。悠斗はじっくり考えたいんだな」

「それはある。でもそれだけじゃない」

「うーん?」

「みんな、自分の答えに僕を導きたがってる。でも僕はそっちへ行きたくない」


 武尊は納得が行ったように頷いた。


「なるほど。そういうことか、悠斗!」

「だからさ……そういうのがダルいんだってば」

「?」

「僕は自分のことは自分で決めたい。別に正解を探しながら暮らしたくない」


 武尊はやれやれと首を横に振った。


「そうは言うけどな、大人は子どもに失敗して欲しくないんだよ」

「……」

「だから導いてあげなきゃいけない」

「はー」


 悠斗から深い深いため息が漏れた。


 それきり悠斗は喋らなくなってしまった。


 それから彼は平気で一時間ほど、ブランコを前後させていた。武尊は子どものペースに合わせようとしていたが、さすがにイライラして来た。


「おい、もういいか?そろそろ帰るぞ」


 そう武尊が切り出した、その時だった。


「あっ、田中だ」


 突然悠斗が立ち上がったのだ。


 武尊が息子の視線の先に目を向けると、悠斗と同じ年ぐらいの子どもが父親らしき男と歩いているのが見えた。子が先に立ち、父の腕を引っ張っるようにして歩いている。


「お?何だ、知り合い?」

「うん。あいつは田中陣。同じ学年の子」

「あの子も平日に休んでるのか?ぱっと見、元気そうだけど」

「僕、ちょっと行きたい」

「あ、そう?じゃあ……」


 二人は田中親子を追いかけた。


「おーい、田中!」


 悠斗が声をかけると、田中親子が振り返った。


「あ……大城?」


 武尊には、悠斗の交友関係がよく分からない。とりあえず挨拶だけはしておく。


「大城悠斗の父です!」


 すると陣の父親は、少し焦点の合わない視線をこちらに向けて言った。


「大城さん、ですか?どうも田中陣の父、翔馬と申します~」


 武尊が不思議に思って翔馬を観察すると、彼の手に白杖が握られているのを発見した。


 どうやら陣の父親は、目が見えないらしい。


(あっ。だから視線が合わなかったのか……)


 と合点しつつ、武尊は尋ねた。


「今日は……お休みなんですか?」

「アッ、ハイ。僕は平日が休みなんですよ」

「ああ、それで……」

「で、うちの子は不登校で」


 武尊は一瞬、聞いてはいけないことを聞いた気がしてどきっとした。が、陣の方は気にしていないようで、微笑みながら頷いて見せる。


「えっ。不登校?」

「朝起きられない病気なんです」

「へー……」

「だから僕が休みの日は、こうして一緒にいるんです」


 陣は笑顔で何度も頷いている。その様子を、悠斗はどこか羨まし気に見つめながら言った。


「田中は、今からどこ行くん?」


 陣はハキハキと答える。


「パパを連れてコンビニまで行ってぇ、近所の公園でコンビニの弁当を一緒に食べる!」

「へー、いいじゃん。僕たちもまぜてよ。一緒に食べようぜ」

「えー?大城と?俺、お前と喋ったこともないのに?」

「田中ってレアキャラじゃん。初めて会ったし、なんか面白そう」

「なんだよぉ、人をポケモンみたいに言うなよ!」


 初顔合わせにしては、息が合っている。翔馬は聞き耳を立てながら、簡単に言った。


「じゃあみんなでコンビニ飯食いましょう。ファミマとセブンどっちがいい?」


 悠斗はなぜか目をきらきらさせながら答えた。


「ファミマ!」

「おっし。行こう行こう」


 なぜか無事に話がまとまってしまい、武尊は困惑しながらも白杖の男について行くことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓Amazonページへ飛びます↓ i1044276
ブレイブ文庫様より
2025.11.25〜発売 !
― 新着の感想 ―
『別に正解を探しながら暮らしたくない』 この歳でいいこと言うもんですね! 藤崎賢一さんのGREENという曲を思い出しました。
幸せの定義って本当に難しいですよね( ˘ω˘ ) お金があったら幸せになれるかというと、必ずしもそうとは限りませんし( ˘ω˘ )
親相手の時と、同級生の前で、悠斗くんの話し方が変わるのがなんとも。繊細な成長過程を思わせます。 在宅の頼子さんが仕事に集中できるように、翔馬さんがお休みの日は、父子でまったり外に出てるのかしら。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ