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祝賀会当日。
今朝も早よからルイーセたち侍女ちゃんsに磨き上げられ、今日の私はなかなか綺麗に仕上がった♪
ドレスは約一年前、ウィリディスの澱みを全部浄化した時の祝賀会に着ていたものだ。
保存がよかったせいか、白いドレスなのに変わらず美しい。
ふんだんにしてある金糸銀糸の刺繍のおかげでシンプルな形なのにゴージャスに見えるし、ちりばめられた真珠やダイアモンドが輝きを放っていて神々しさを醸し出している。
聖女様の衣装にふさわしい。
新しいドレスを用意してくれようとしたけど、事前に断った!
このドレスを気に入っていたし、一回しか着てないし、何よりたぶん結構なお値段がしただろうからね!
新調したら、また一回しか着ないのにもったいない!安いもんじゃないのに。
その分の費用は復興の方にまわしなさい!と厳命した。
厳命とか偉そうでしょ?でもそのくらい強く言わないと用意しちゃうのよ。
今回のエスコートはアルベルトだ。
まぁね、私は明日にはもう帰っちゃうし、最初と最後のけじめみたいなもんだと思う。
他の攻略対象s三人もしっかりおめかしをして上席にいる。
ロイたちスマラグティーに同行した第二騎士団も、式典用の?ちょっといい騎士服を着て祝賀会に出席しているよ。
今回も何かしら褒賞がもらえるらしい。長期出張の特別ボーナス的な?
アルベルトにエスコートされて進む中、チラリとロイを見る。
普段の騎士服姿もカッコいいけど、こういうちょっと豪華な仕様の騎士服姿もカッコいい。
前回はロイにエスコートされてこの場を歩いたんだよね。懐かしい。
なんて思い出していたら、お、一瞬ロイと目が合ったぞ。
ロイも思い出しているかな? そう思ったら嬉しくなった。
君とは思い出がたくさんできて……。
あっちに戻っても、しばらくは思い出にひたりながら暮らしそうだよ。
うん。自然に薄れるまで、想いを抱いて過ごすのも悪くない。
さぁ、気持ちを切り替えて!
本日のメインイベント?王様と対面だ☆
諸々の授与も終わり、パーティーの時間になった。
音楽も奏でられてダンスをする人、談笑する人、飲んだり食べたりしてる人、様々だ。
私はというと、挨拶したいとやってきた高位貴族と(その辺はアルベルトとスヴェンが選別している)一言二言話したり、そうでない時は攻略対象sと話したり、飲み物をもらって、いいお酒を味わったりしている。
いいお酒っていい酔い方になるよね。ほろ酔いで気分がいい♪
気分よく過ごしていたけど、ちょっと酔ったのと、人の熱気に当てられて暑くなってきた。
こういうパーティーではよく描写されているバルコニーに涼みに行こう。
もちろん聖女様はセキュリティーばっちりな王宮といえど一人でバルコニーには行かせてもらえない。
「少し席を外します。護衛は一人で」(人が大勢いるのでよそいき口調)
といって見回すと、やっぱりこういう時のお約束、ロイと目が合った。
というか、みんなが“選んで!”と私に視線を向ける中、私がたんに好きな人を見てしまったというだけなんだけど。
「ロイ、お願い」
「はい」
もうこれで最後だからね。
縁も義理もないところで二年も頑張ったんだ、最後にちょっとご褒美をもらってもいいよね!
これまで貯めたお給料はそっくり置いていくんだし。
こっちの世界のお金を持って行っても、たぶん日本じゃ使えないでしょ?
それに日本に帰れば私はお金に困ってないから全額寄付したのだ。
ぜひ復興費にあててください♪
という訳で、二人でバルコニーに出る。
窓の内側にはしっかり護衛騎士が立っているし、バルコニーの外、庭園にも巡回している衛兵が見えるから、別に二人きりという気にはならないけど。
「少し酔っちゃったわ。ロイも飲んでる?」
「いえ、飲酒は控えております」
「ん? ロイってお酒飲めなかったっけ?」
「飲めますが、聖女様の有事の際に動けなくてはお側にいる意味がありませんので」
「そうだったの!ごめんね!ありがとう!でも今日は護衛がたくさんいるし、ロイは今夜は仕事じゃないでしょ?」
「いいえ、仕事とか休暇とか関係ありません。聖女様のお側にいるならお守りするのは当然です」
真面目だなぁ。笑ってしまった。
月明かりに、ロイの顔がよく見える。相変わらずイケメンだ。
私はフツメンが好みだったけど、好きになったらイケメンでもフツメンでもどっちでもかまわないわね。
ずっと長く憶えていられるように、よく見ておこう。
「あの…、聖女様…」
私があんまりジッと見ていたもんだから、ロイは困ったように私を呼んだ。
顔が赤くなっている。
「あ、ごめんごめん。ちょっとね」
意味の分からない返しをして、続く言葉がなく黙り込む。
沈黙の間を、涼しい風が吹き抜けた。
ロイはなんだか落ち着かないようにもじもじしていたけど、意を決したようにジャケットの内ポケットから何かを取り出した。
月明かりにもわかる程ロイの顔は真っ赤だ。
「あの…、聖女様、もしよろしかったら、これを…。いつかの街歩きの時に、聖女様がお気に召したように見えたので…。
……あの、よろっ、よろしかったら、贈らせて、ください」
あ、かんだ。
とか思いつつ、もらった包みを開けると
「あ、これ…。
ありがとう!これ、ちょっとほしかったのよ!よくわかったわね!」
月の光を受けて輝く、あの琥珀色の石がついたペンダントがあった。
ロイの瞳の色に近いこれがほしいなぁ、なんて恋愛脳で思って勝手に恥ずかしがってたのは、今となってはいい思い出だ。
本当に、いい思い出がたくさんできたな…。
もちろんそればかりじゃなかったけどさ。というか大変な事の方が多かったけどさ!
だけど過ぎてしまえば、なんだか全部いい思い出だよ。
好きな人から、本人をいつでも思い出せる品までもらえたし。
「本当にありがとう…。
大切にする。これを見ればいつでもロイを思い出せるね」
ん? あれ。
「……聖女様? それはどういう、事ですか?」
しまった!
感傷的になっていて、うっかり口が滑った!
「聖女様…」
何て言っていいか無言になった私に、ある予感をもったようなロイの声が呼びかける。
わー、どうしよう! 誤魔化せる? どう誤魔化す?
ちょっとパ二くった頭の中に、ルイーセの声が甦る。
『聖女様、差し出がましい事をお尋ねしますが…、この事を彼は知っているのですか?』
昨日のお茶会の後、二人きりになった時にそう聞かれた。
言ってないよ。私は帰るんだから言っても仕方ないし。
何度も自分に言い聞かせた言葉を答える。
『本当にいいのですか?私に告げてくださったように、彼にもきちんと別れを告げてあげたら…、きっと生涯の思い出になると思います。私のように』
ルイーセはとても誇らし気な笑顔で言った。
『天上人の聖女様と下々の者を並べるのは滅相もない事ですが、聖女様が彼を気にかけておられるのであれば…。
聖女様に悔いなくお帰りになってほしいのです』
……もうこれ言っちゃっていいんじゃない?
好きな人にちゃんとお別れが言えるチャンスじゃない?
でも、私が元の世界に帰る事はトップシークレットなのよ~!
とその時、よく知る気配が流れてきた。
少しだけ冷たい空気…
エミル!エミルの魔法だ!これきっと防音魔法だ!
何故かそう確信できた。エミルありがとう!




