表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/25

8.5




◇◆エミル◇◆




できた…。

できてしまった。


はあぁぁ…。


聖女様をお返しする方法を探す事は、召喚した初日に契約した最重要課題となっている。

諸々の決め事が記されている契約書には、内容が反故されないよう魔法をかけてられている。

大陸一と自負している自分がかけたのだ、やらない訳にはいかない。


それまでもしていない訳ではなかったが、ウィリディスでは浄化の旅に同行したため、後の探求は魔法使団(まほうしだん)の副団長以下に任せた。


自分は聖女様をお守りしなければならない。

各国が、喉から手が出るほどに聖女様を欲している。どこからも、どんな相手からも、完璧に守りきらなければならない。

自分が聖女様を召喚したのだ。その責任がある。


魔獣や物理の襲撃などは騎士の仕事だが、その他のあらゆる防御は自分がしてきた。

聖女様がどこにも奪われる事なく、ついでに申し上げれば、あれほど恐れられた虫の対処も自分がしたというのに!


ウィリディスの澱みをすべて浄化し、王宮に戻った自分に聖女様は手ひどい拒絶をされたのだ!

あの絶望感は今でも忘れられない。

もう二度とあんな目で見られるのはごめんだ。


それ以来、スマラグティーへの浄化の旅の最中も、寝る間を惜しんで探求し続けた。

もともと魔法の構築は寝食を忘れるほどのめり込める。

だが今までに誰もなしえなかった事だ、当然難しい魔法になる。


召喚したのだから、その逆を展開すればいいのではないかという簡単なものではない。

それに、お返しする方法を探し(作り)だしてしまえば、当たり前だが聖女様はお帰りになってしまう。


我が国はすでに救われたので、そこは問題ではない。

問題は、聖女様がいなくなってしまうという事だ。


聖女様にお仕えした者全員が心から哀しむだろう。

いったいいつまで虚無感に囚われ続けるか…。

自分もそのうちの一人になるが。


だけど、そうだからといって手を抜く訳にはいかない。

何より聖女様が望む事なのだ。




そうして、帰還の魔法陣が完成した事をお伝えすると


「すごい!エミルすごい!! あなた本当にすごい魔法使いね!!さすが稀代の魔法使いだわ!」


感激された聖女様に抱き着かれた!


これほど喜んでもらえるなら……、

仕方ない。


「聖女様…。喜んでいただけるのは嬉しいですが、複雑です…」

「ごめん!でもやっぱり嬉しくて!今だけは喜ばせてよ!」


それにしても、稀代の魔法使いとは。


その言葉を光栄に思います。

聖女様、生涯で一番の褒美になりました。







◇◆アルベルト◇◆




聖女様が憂いていらっしゃる。

前から時々そういう事はあったが、澱みの減少をお話しした日から、もっと考え込まれるお姿を見かけるようになった。

さり気なくお顔を拝見すれば、何事かお悩みのご様子だ。


私ごときが聖女様のご内心を推し量る事など出来る筈もないが、これでも王家に生まれた身、責任を背負っているという重圧を少しは分かるつもりだ。

聖女様のお立場を考慮して、想像してみる。


召喚時には厳しい言葉で我らを責められた聖女様だが、その後の澱みを浄化する旅や、他国にまで救いの手を伸ばされているお心は尊い。


責任感が強く慈愛に満ちた聖女様は、少しでも早く、少しでも多くの澱みをなくし、民が安心して暮らしていけるようにご尽力されている。


だが、聖女様はご自分のお国にお帰りになる事を望んでいらっしゃる。

我が国にご降臨された初日にはっきりとそうおっしゃられ、魔法契約書にも最重要課題で記されている。


しかしお優しい聖女様は、帰られた後の我々の世界をご心配されているのではないかと推察した。

いったんそう思いつくと、もうそれ以外思いつかなくなる。聖女様はそのお姿が美しいだけではなくお心まで美しいのだ。


だから、帰還の魔法陣が完成した事を報告した時に、喜びの次に迷うような表情になった聖女様に申し上げたのだ。


「聖女様、僭越ながら申し上げます。お帰りになった後の事はお気になさらずともよいのです」

「え…」


聖女様はとても驚いたお顔をなされた。


「お優しい聖女様は、お帰りになられた後のこの世界の事を憂いておいでと推察いたしました。聖女様はここのところ時々お元気のないご様子でしたから」


聖女様は笑顔になられた。


「私そんなに顔に出てた?」

「聖女様はご自分で思っている程ご自分を繕えておりません」


笑顔には、安堵の色も加わった。

くるくると表情のお変わりになる聖女様は、とてもお可愛らしい。


「ご心配なさらずとも、私が高額レンタル料で他国に赴き、次の聖女様を召喚します。一仕事終われば、希望により元の場所にお返ししますのでご安心ください」


エミルまでそんな事を言い出した。


「ありがとう…。二人にそう言ってもらえて重荷がなくなったよ」


聖女様!

御礼を申し上げるのはこちらの方です!

本当に本当に、ありがとうございました!


あともう少し、どうぞよろしくお願いいたします。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ