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「……フェリちゃん、私の気持ちを言うね」
「…………いいわよ。きなさい!」
少しだけ、フェリが震えているのが分かる。アーシェからくるのは恐らく拒否、拒絶ではないのはわかる。だけど、はっきりと答えが返されるのは怖いだろう。特に同性を好きになる、愛すると言う普通とは違うものだからこそ、余計に怖いはずだ。でも、答えは出さなきゃいけない。
「私はフェリちゃんのことが好き。大好き。それは、私の中ではっきりとしてる」
「………………そう、嬉しいわ」
「でも、フェリちゃんの、フェリちゃんが想う、私への想いと、多分違う好きだと思う」
「うん」
フェリもそれはわかっているのだろう。アーシェの言葉を素直に受け入れている。フェリの好きは、愛するとか普通は異性に向けるような、そんなものだろう。だけどアーシェの好きは、恐らく友人に向けるもの。だから、好きだと言われてもフェリの想いが叶うわけではない。
「そう、そうよね……」
「フェリちゃん」
ぐっと、アーシェがフェリの手を掴む。
「でも、私はフェリちゃんと一緒にいたい。フェリちゃんの手を、離したくないの」
「…………アーシェ?」
「フェリちゃんが私に向ける想いと、私がフェリちゃんに向ける想いは違うし、多分私……アルシェリット・ヴィルレンスはミツヤスさんが一番好きだと思う。でも、フェリちゃんのことも、私は大好きなの。だから、私は二人と一緒にいたい」
「……ええ?」
思わぬところでアーシェの本名、名字が…………と、そこは置いておいて。いきなりアーシェが言い出したことにフェリも戸惑っている。
「そうだよね?」
「うん、そうだね。ミツヤスさんと一緒にいるならフェリちゃんと一緒にいたらだめってわけじゃないよね」
「…………」
「えっと、アーシェ?」
「そうだよ!」
「二人と一緒にいればいいだけだよね!」
「ミツヤスさん!」
「フェリちゃん!」
「私とずっと一緒にいようよ!」
「私とずっと一緒にいようよ!」
恐らくは、これはアーシェの本気の想いなんだろう。ちょっと内容的にはあれだが……純粋なそれだ。
「……だ、そうだけどどうする?」
「どど、どうするって言われても困るわよっ!? なんていうか、完全に想定外よっ!」
まあ、フェリに関してはかなり戸惑う所なんだろう。フェリの想いと同じ、アーシェの言っていることは普通の事じゃない。普通なら実現するのは難しいような内容だ。いや、これがアーシェが男で俺が女ならまだ普通に見かける可能性のある光景かもしれないが……女で男と女両方を選ぶ、とかは珍しいとかそういう話でもないだろう。男二人ならまだしも。
さて、アーシェのいったことに関して。俺の答えはすでにでている。というかさっき言ったばかりだ。
「アーシェがそう決めたのなら、俺はアーシェの想いを尊重する。あとはフェリが決めなきゃいけないことだな」
「ミツヤス!? 決めるの早すぎじゃない!?」
「俺の答えはさっきアーシェに言ったのがすべてだ。アーシェがしたいと思うことを、全力で手伝う。フェリと一緒にいたいなら、それができるだけの環境を作る手助けをするし、フェリの説得だって手伝う。それで、フェリ。お前はアーシェの想いにどうこたえるつもりだ?」
「フェリちゃん」
「………………っ! 本当にっ! アーシェってわがままねっ!」
フェリがちょっと怒ったように言う。いや、怒ってはいるのだろう。だけど、そこに本気で怒っているような、拒絶するような感じの怒りは見えない。
「何よっ! 何がずっと一緒にいよう、よ! それができないから、普通じゃないから離れる気でいたのに! 人の気も知らないでっ!」
「…………」
「ミツヤスも、何で普通に受け入れるのよ! おかしいじゃない!」
「…………」
「なんで、そんなこと言うのよ。どうすればいいかなんてわからないじゃない…………」
「フェリはアーシェが嫌いか? さっきのアーシェの言葉を受け入れられないか?」
「…………正直言わせてもらうと、複雑よ。なんて言えばいいのかしら? 嬉しいけど、素直に受け入れられない感じ」
「……それ、多分さっきの私と同じじゃないかな? 私もミツヤスさんの言葉を聞いた時、素直に喜べなかったし」
「…………ああ、そっか。そうね、アーシェの答えって……ミツヤスのものと近いのね」
なんかそういう風に言われると複雑だが……確かに、相手と同じ好きじゃないが好きだ、と言っている点では同じだろうか。
「はあ、なんか、悩んでいてもしかたないのかもしれないわね…………惚れた弱みってやつかしら」
「えっと……」
「悩むのは、後にするわ。アーシェは……私と一緒にいてくれるの?」
「うん、ずっと、一緒に」
「そう。そう、そう想ってくれているなら、嬉しい」
フェリとアーシェが見つめ合う。なんだろう、こういうときは百合の花でも背景に咲かせればいいのだろうか。
「で、ミツヤス。あなたも一緒ってことよね?」
「……まあ、アーシェの望み通りってことならそうなるんだろうな」
「なら、これからもよろしくね。いい、ちゃんとアーシェを幸せにするのよ? 私はアーシェに幸せにしてもらうから」
「ちょっとまて。何の話をしているんだお前は?」
何か話がすっ飛んだ気がする。
「これから、皆一緒でしょ? で、アーシェはミツヤスが好きなんだから、ミツヤスはその想いにしっかり応えるべきよ。言っておくけど、拒否権はないわよ? その道を選んだのは、ここでそういう選択を選んだミツヤス自身なんだから。そして、私はアーシェに幸せにしてもらうの。私と一緒にいたいって言ったのはアーシェだもの。当然そうしてくれるわよね」
「ええ!? う、うん……まあ、頑張る……かな」
何かフェリがすごく悪い方向に吹っ切れたような気がする。でも……これが、悪いとは言わない。三人、一部同性愛というのはちょっと普通じゃないかもしれないが…………まあ各人は納得できて、幸せを望めるのなら、まあそれでいいのかもしれない。問題があるとすれば、これから先だろうな。周りの目、アーシェの実家……ヴィルレンスだったか? そっちの貴族関連と、あとはアーシェの師匠、錬金術の方面。何にせよ、俺とフェリとアーシェの三人で解決していくしかないんだろう。それを選んだのは俺たち自身なんだから。
「……さて、これからに関しての答えは出たな」
「うん、そうだね」
「それで……これからどうする?」
「まず、アーシェ二人を元に戻すところからだな。そもそも、それがここまで来た目的だろう」
当座の問題。アーシェが二人に分裂した問題。そもそもその原因は俺とフェリと一緒にいたいから、ということでそれぞれを分けたことだ。それが解決し、二人ともアーシェと一緒にいることになったのだから一人に戻っても問題はない。二人でいる必要性がないのだから
「…………」
「…………」
「ああー! ほんとだー!」
「えっと、もう二人に分ける必要ないんだ!?」
「そうだね、じゃあ戻ろう!」
「えっと、操作しないといけないだよね、中に入って……」
「早く入って戻ろう! なんか、私ぽっかりとフェリちゃんへの想いがない感じがして……」
「それ私もだよー。ミツヤスさんへの想いがなんかー、ぽろっと落ちちゃってる感じがして」
本人たちには自覚は薄かったのかもしれないが問題の影響はあったのかもしれない。ただそれを認識できていなかっただけで。
「もしかして問題あったんじゃないのか? 早く一人に戻ってこい」
「そうよ! 心配かけさせないでよね!」
「はーい!」
「今やってきまーす!」
二人が機械の中に入る。そしてすぐに機械は作動した。小さく息を吐く。これでひとまずは安心…………はできるが、解決するべきことは多い。これからのこととかな。




