15
ローレンジェのギルドでアーシェの師匠および錬金術師の来報について話を聞くが、特にこれといった情報はない。錬金術師に関してはすでに知っており、アーシェという錬金術師の弟子という立場の人間がいるので話を聞くのに問題はなかったが、やはり特に知っている人はいなかった。やはりこっち方面には来ていないと言うことだろうか。
「戻るか?」
「戻っても流石に追いつけないと思います……」
「まあ、もうアーシェの師匠が街を出て何日もたってるしな」
向こうが急ぎでないにしてもこちらと同じくらい移動しているとみて良いし、仮に戻るのであればその分だけ余計に進んでいるわけだ。追いかけるにしても普通に旅をするのではなく馬車とか使って移動しなければ無理そうである。
「じゃあ追いかけるのはあきらめるか?」
「それはありません。えっと……戻るよりは、ずっと旅して一週するのがいいかなって」
「なるほどな」
この国は街から街へとめぐっていると自然に一周できるように道が作られている。国としての形は大きな楕円か横長の六角形といった感じか。まあ中央に王都みたいのがあったりするから確実とは言えないだろう。
「じゃあこのまま旅をつづけるってことでいいか?」
「はい」
まあそれはそれでいいだろう。俺もそれについていくだけだが……
この辺りの依頼はどうやら討伐よりは採取の方が多いようだ。というのもそもそも平野に棲む魔物の多くはこちらを襲ってくるような危険なものが少ない。代わりにそのあたりに生えているような薬草の類の方が多い。一応この獲物を狩ってきてほしいみたいなものもあるが数は少ない。この辺りはこっちを見かけると逃げるような動物や魔物ばかりだから専門に獲る人間がいてそっちが獲って提供していて他に獲りに行く人間がいないとかだろうか。
そういうことなので俺はアーシェと一緒に薬草を取りに来ている。基本的に冒険者の依頼は俺が受けることが多いがアーシェも依頼を達成しないとだめだろうと言うことでの薬草とりだ。
「見つけたよー!」
「早いな……それはどういうやつなんだ?」
「うーんと……確か傷に効くんじゃなかったかなー。錬金術で傷薬を作るのに使ってるよ」
アーシェの説明はあくまでその薬草の効能、役割に関しての説明だ。まあ薬師のように磨り潰したりなどどう加工するかまでは知らないのだろう。錬金術は通常の過程や詳しい作業を無視していきなり結果の薬を作っている。それゆえに何がどんな役割をするのかくらいしかわかっていないようだ。
「あ、これも薬草かな?」
あちらこちらでいろいろとアーシェは薬草を集めている。それぞれが全く違う薬草でアーシェもよく知っているものだと思う。
「……えっと、どれがどれなんだろー」
「……薬草だってわかってて取ってたんじゃないのか?」
「薬草だって言うのはわかるんだけど……どういう名前の薬草かっていうのはわからないんだよー。効果ははっきりわかるんだけどね」
「いや、名前も知らないのに見ただけで薬草ってわかるのか?」
それは普通どうなのだろうか。仮に図鑑などの本でそれを確認しているのであれば名前も知っているはずだ。
「えっとねー、実はこれなんだよ!」
そう言って手に持っている板状の物をこちらに向けてくる。丸いレンズのようなものがついた……ルーペのような感じだ。いや、何か持っているのは知っていたが、どういうものかはわからなかった。採取に使うかとも思っていたがそういうものではなさそうだ。
「それは?」
「えへへー、このついている丸いので物を見るとそれがどんなものかっていうのが分かるんだよー! すごいでしょー!」
「確かにすごいな……つまり、薬草を見つけていたのはそれのおかげっていうことか?」
「そうなんです!」
確かにすごいのだが、それは道具がすごいのであって……
「つまりアーシェには薬草を探し出す能力はなし、役立たずということか」
「え!? ひ、酷いよー!?」
「じゃあそれ無しで薬草探せるのか?」
「……探せません」
涙を流してもダメです。評価は覆りません。
「で、でも、これ錬金術で作ったものだもん! だから私が薬草探せる能力があるってことで別にいいよね!?」
「へえ……作れるのか」
流石錬金術。不思議服に不思議鞄と謎道具を作るすごい技術である。ただ、アーシェの眼が泳いだのにしっかりと気づいている。
「アーシェ?」
「な、なにー?」
「……それ、アーシェが作ったものか?」
「……違います」
「師匠が作ったものなのか……」
こくりとアーシェが頷く。まあこういう時に嘘つかないのがアーシェの良い所ではあるのだが。人の成果で自慢するのはどうだろう? まあ、アーシェも錬金術師である以上作れる……はずだ。
「ま、アーシェも作れるんだろ…………今作れなくてもいつか作れるようになるなら大丈夫だろ」
「うん……」
しかし……あると便利そうだな。
「材料は知ってるのか?」
「うーんと……確かー……宝玉虫の複眼と、月光石と……龍の宝玉だったかな」
「ちょっと待て!」
龍の宝玉とか相当な代物なんだが……実在の龍と戦える人間はかなり少ないだろ!?
「それ最後本当に必要な物か?」
「うん……あ、でも代用品でもいいって言ってたと思う。それはたしかー……人形石の頭脳だったかな?」
「よかった……龍の宝玉とか普通は持ってこれないものだぞ……」
というかそんな希少品を使って作ってるのか。ということはあのべんりな鞄も何か稀少な素材を使って作っているんだろうか。
「でも材料なんて知ってどうするの?」
「いや、便利そうだからアーシェに作ってもらおうかなって思ってな」
「えええ!? 無理だよー!?」
断言しないでほしい。というか今まで散々師匠に習って鍛えてきたのであればちょっとは何か難しい物でも作れるようになるべきではないだろうか。
「素材さえ集めれば何度か失敗してもいいから作ってほしいとは思うけどな……まあ、素材を集めるまでが大変そうだけどな」
「失敗してもいいって……」
「アーシェだっていつまでも師匠のところで学ぶだけってわけにはいかないんじゃないか? 自分でいろいろ作れるようになるべきだろ」
「うーん……そう、だよね……」
かなり自信がなさそうだ。普通に錬金術そのものは使えるようだし作れると言うこともわかってるんだけどな。まあ簡単な物を作れるからって難しいものが作れると言うわけでもないだろうし。
「ついでにその鞄はどうやって作るんだ?」
「えっとねー……龍の胃袋と、青鬼の皮と、大翼竜の飛膜と、魔層石だよ」
「また龍か……っていうか、そこにでてくるラインナップやばすぎだろ」
龍、青鬼、大翼竜……上位の冒険者でも倒すのが難しいのばかりじゃないか。アイテムボックス系の素材は格が違うな……っていうか、アーシェの師匠もよく素材を集めて作れたものだと思う。それをぽんとアーシェにくれてやってるあたりとんでもないな……




