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猿たちを狩り、街に戻り宿で休んだ翌日。依頼達成の報告をするついでにアーシェの目的である師匠探しの手伝いとして聞き込みを行う。
「で、聞き込みって言ってもどうするんだ?」
「うーんと……ミツヤスさんの依頼報告もあるし、やっぱりギルドからでいいと思うかな? 師匠もギルドにはよく行ってたみたいだし」
「へえ……依頼でも受けてたのか?」
確か依頼の中には討伐や採取のようなフィールドワーク以外にも、その地域の店で売っていないような製品を要求するような依頼、普通の物とは違う上質な素材を求めるような依頼、普通に作られている物ではない物を要求する依頼なんかがあったりする。薬とか、金属とか。そういうものは普通の薬屋や鍛冶屋が作るのかとも思ったが、錬金術師がそういう依頼を受けている可能性はあるだろう。錬金術師以外にも魔法使いもそういうことができる可能性はあるか? 魔法とかに関してはあまり詳しくはないんだが。
「うーん……まあ、多分受けてたとは思うけど、どっちかっていうと錬金術に使う素材なんかを貰いに行ってたんじゃないかなあ。ほら、錬金術で使う物って討伐した魔物の素材とか採取した薬草とかだったりするでしょ?」
「なるほど」
「あとギルドとかから依頼を受けることがあって、その依頼で作った物の納品とかもしていたと思います。もしかしたら壊れた物とか直していたとかもあるかもしれないし」
まあありえそうな話ではある。しかし、かもしれないとか基本的に推測っぽい感じなのは……
「アーシェはついて行ったりしていないのか?」
「私基本的にはお留守番でした」
目がウルウルしている。
「泣くな泣くな……」
「はい……」
「じゃあ、とりあえずギルドで聞き込みか……でもそういう珍しい人なら来ていたなら噂になるとかしているんじゃないか? アーシェみたいに変な服を着ていたら物珍しいはずだし」
「変な服じゃないです! 可愛いでしょ!」
「ああ、うん、可愛いのはそうなんだが……」
「えへへー」
ええい、話が進まない。可愛かろうが可愛くなかろうが物珍しい変わった服装であるのは事実だ。
「珍しい格好をしていたら変わった服を着た人が来たなって話にあるだろう。そういう話は聞いた覚えがないが……」
「でも、それだけじゃ断定できません! だから聞き込みします!」
まあ、確かに聞いてみなければはっきりし亜にか。
「じゃあギルドで依頼の報告がてら、職員に聞き込みをするか」
「はい! 行きましょう!」
ギルドに向かうのは昼の時間帯。冒険者ギルドは基本的に朝の時間に混んでいる。依頼を張り出すのが朝だからだ。職員が来て、受けている依頼を張り出す形式だからだろう。まあ俺もあまりそのあたりは詳しくないが、そんな感じっぽい。朝に張り出される依頼を求めて朝に来て、依頼の取り合いに敗れ他の依頼を適当に受け帰る。まあすべての冒険者が依頼を受けに来ているのではなく、前日に受けた依頼の報告に来る冒険者もいるだろう。基本的には皆朝にそれらを行っている。まあ習慣で朝にギルドに来るから依頼報告も朝になるのだろう。
昼は人があまりいない。この時間帯に依頼を取りに来ても残っている依頼が常設や割りのよくない依頼、危険な依頼だったりするうえに、基本的にギルドでやれることが少ないと言うのもある。食事処のようなものはなく、ギルドでパーティメンバーが集まって座るような机やいすのようなものはあるがそこでわざわざ食事を持ち込んで食事をすると言う面倒なことをするわけでもない。まあたまにメンバーが集まってたまたまそこで食事をすると言うこともあるのかもしれないが、そういうことは基本的に少ない。
なので昼間に来る人は少ない。前日に依頼を受け、翌日の昼に戻ってきてその報告をすると言うパターンはあるかもしれない。あと、旅の途中とかで魔物を倒し素材を手に入れたとかそういうのを買い取ってもらうためとか。まあそういうことでもなければわざわざ昼に来ると言うことはない。来てもそこまで多くはない。その時間帯であれば職員も話しかけられ多少仕事の邪魔をされる形になっても忙しい時間帯よりは比較的ましだろう。
「すいません、いいですか?」
「なんでしょう?」
職員に話を聞く。聞き込みの内容は錬金術師の来訪についてだ。そもそもギルドの職員が錬金術師という存在について認識しているかどうかが分からないのだが。少なくとも俺は錬金術師をアーシェ以外に見たことないし、アーシェから聞いて初めて知った形である。魔法使いならば数は少ないなりによくいるようだが錬金術師はどうなのだろう。そう思って聞いてみたが、どうやらギルド職員は錬金術師について知っているようだ。ただ、何故そういったことを尋ねるのか。理由や間柄について尋ねられ、情報を出すのを渋られた。まあ当然と言えば当然だろう。
しかしアーシェが錬金術師の弟子であると言う話を聞き、その証明をすることで最初は驚いた様子だったがその後は神妙な様子で錬金術師に関して話してくれた。まず、アーシェの師匠はこのギルドには来ていない様子である。そもそも錬金術師の来報ということ自体がほとんどない。絶対数が少ないと言うこともある。
錬金術師はまずなるための条件が厳しい。魔法の才能が必要でそれも全属性という稀有な才能がいる。その時点で数が限られるのだがさらに錬金術師になろうと言う人間が少ないだろう。そもそも錬金術師についての周知がなされていない。知っている所は知っているのかもしれないが、知らない方が多いのではないか。そしてアーシェのように師匠から学ぶ必要がある。箱のような特殊な道具も必要だろう。そういう意味では前提条件が多すぎる狭き門だ。ゆえに錬金術師は数が少ない。そして数が少ない割に錬金術師という存在はかなり重要な存在でもあるようだ。
錬金術師の作る道具は希少なものが多い。アーシェを見ていればわかるが、服は防御とかなにそれと言わんばかりの絶対無敵な性能を持ち、鞄は運搬能力という概念をぶち壊すかのような収容能力を持っている。それ以外にも、鳥の羽から織物を作ったりと個人の能力とは別に様々な物を作れる。もし錬金術師の数が多ければ多くの職人や商人が仕事を失いかねないだろう。それくらいに恐ろしい作成能力を持っている。そして作られる物の性能もとんでもない。アーシェの持っている物は防御や補助の道具だが、もしこれが攻撃になればどうなるか? 爆弾、剣、魔道具。考えられる可能性だけでもかなりやばいことになりかねないと言う予測がつく。ゆえに錬金術師という存在は所在が秘匿されるようである。その内容についても秘匿されているのはそういう理由からなのかもしれない。
さて、それではなぜ錬金術師はギルドに訪れるのか。それは錬金術師の仕事がギルドに関わることが多いからである。張り出されている依頼を受ける、というのも一部ではそうだが、ギルドでは錬金術師の作った道具を使用しているのである。例えば買取した素材はそのまま置いていれば腐ったりするものも多い。それを保管できるものがあるとありがたいし、場合によっては他のギルドでも取り出せるとさらにいい。連絡もできればどこかのギルドで依頼を出していればその素材を得られる可能性が高くなる。情報と得られた素材の共有をできる道具などの作成を錬金術師に依頼すると言うことである。作った後も調整をしたりしてもらっているようだ。
もちろん他の様々な依頼を受けたりもする。また、ギルドで得られた素材を錬金術師に提供したり、買い取ってもらったりもするらしい。基本的に錬金術師はその作る道具の性能の関係上お金には困らないらしい。まあ、アーシェの持っている物だけでも売ればとんでもない額になりそうだからわからなくもない。
まあ、諸々の事情から錬金術師のことはあまり他者に情報を漏らさないようである。ただ、アーシェは弟子ということもあって詳しい話をしてくれたが……結局はここには来ていないとのことだ。ギルドに来ていないだけで他のところにいる可能性はあるが、それについてはわからないとも言ってはいたが。
「で、どうする?」
「どうしましょうか……」
他のところで聞き込みと言ってもアーシェの師匠がどこに行くかは知らない。そもそもこの街に来ていない可能性もあるのだからあまりここで調べても情報が出ない可能性も少なくはない。来ていてもあまり関わらずに出て行っている可能性もある。
「……まあ、とりあえず昼飯を食べに行くか?」
「……そうですね。おなかすいたー」
お腹も減ってきたので、昼飯を取りに行く。ついでに飯屋にアーシェの師匠が来ていないかの聞き込みもすることにしよう。一人旅なら下手にご飯を作って食べるよりも食事処でご飯を食べるほうが楽だしおいしいだろうし。




