↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想設定作品集二  作者: 蒼和考雪
alchemist
53/554

10


 翌日。本日分の宿も確保し、受けておいた依頼を終わらせるつもりで街を出る。


「……で、何でアーシェがついてきているんだ?」

「え? えっと、ダメだった?」

「聞き込みはどうした」


 師匠を探しているんじゃないのだろうか。こっちについてきても魔物を倒すくらいしかないが。


「えーっと……ひ、一人じゃ不安で……ミツヤスさんがついてきてくれないと怖くて……」

「……まあ、アーシェだけだと何かあったらどうしようもなさそうだけどさ」


 ちょっと依存されている気がする。いや、もともとこういうタイプなのかもしれない。自分に主体がない、もしくは弱い。保護者や先導者がいなければどうにも力を発揮できないタイプ。性格的にも能力的にも後方支援的だろうし問題はないかもしれないが……

 アーシェのことは置いておくとして、街を出て依頼の対象である魔物を狩りに行く。対象となる魔物は小型の猿の魔物だ。強さとしては大したものではないが、狩りにくい相手だ。特に木の上に隠れていたり、基本的に高所にいたり。その上逃げ足も速い。相手に勝てそうにない場合はすぐに逃げるらしい。そして相手の攻撃もダメージこそないが、フンを投げてきたりとすごくうざいうえに嫌悪感たっぷりでいやらしい攻撃をしてくる。そのせいで常設依頼であっても強さの関係上受けられる冒険者は多いが受ける人間が少なくそこそこ報酬がいい。

 素材で役に立つ部分がほとんどないのが残念だが基本的にこの猿は一般農家などの被害が大きいらしい。魔獣の害ではこの辺りでは猿や猪がメインで、猿は特に対峙する人間がいないせいで中々面倒なことになっているようだ。頭も普通の魔物と比べると良いため余計に面倒で厄介だ。


「も、森の中って怖い……」

「なら街で聞き込みをしていればよかったと思うんだが」

「おいてかないで下さい」


 服を掴まれている。この世界の服はあまり伸びないので掴まれるとちょっと引っ張られるので危ない。だけど咎めるのもなあ……まあ、腕が自由になるのであればどうにでもなる。

 がさり、と草が揺れる音でいちいちアーシェがびくつくのを掴まれている部分から感じながら、気配を探す。動物の気配は各動物で違うのでうまく探ればすぐに見つかる。ただやはり猿の気配と思われるのは殆ど木の上だ。魔物としても動物としてもあまり強いわけじゃないのでできる限り安全な高所に逃げているのだろう。高すぎると今度は鳥に襲われる可能性もあるのか一番上ではないしきちんと枝葉に隠れているようだが。

 別に枝ごと斬りおとすことはできるが、樹々を無駄に切り裂くのも良くない。できるだけ下に降りている猿を探す。


「あれか」

「お猿さんですね」


 木にしがみついている猿が見える。既にこちらの事に気づいているらしく視線がこっちに向いている。


「さて……落とすか」


 剣を振るう。ただそれだけだが、それだけで風圧を操り猿に衝突させる。見えないから風を感じれなければそうそう避けることは難しい。見てから避けるの難しい……一般には難しいしな。

 強烈な風圧の一撃、剣を振るった時のように切断は出来なくとも、剣の腹で思いっきり叩いたような衝撃は感じるだろう。その一撃を受けて猿は木から手を放して落ちた。猿も木から落ちるというが、自分のミスではないから別だな。

 落ちた猿に近づき止めを刺す。落ちた衝撃があるといっても、流石に魔物はタフで復帰も早い。落ちてすぐに倒しておかなければすぐに起き上がって木に戻る。それでも倒しようはあるが逃げられると面倒だし何度もやるのも疲れるから急いで倒す。

 猿の討伐証明……基本的には頭部、眼のあたりだ。一応狼みたいに歯でもいいが……狼のようにはいかない。


「このお猿さんを倒すんですか?」

「ああ。こいつらは逃げ足が速くて、フンとか汚いものを投げつけてくるから近づきにくく、木の上にいるから攻撃が届かなくて倒しにくい。さらに言えば時々下に降りてきて農家の人が育てた野菜とかの食料を奪ってく。そういった降りてきたときを狙うんだが、行ったとおり逃げるのが速くて汚いものを投げるから倒しに行きたくないということが多くて数も被害も全然減らないわけだな」

「へー」


 弱くても倒しにくい、面倒な相手。その上被害が多いという地味に厄介な奴だ。


「私も倒していい? こういうのやってみたことないし」

「…………アーシェにできるのか?」

「できますよ! 私だって魔法を使えるんです!」


 確かに魔法を使えるのは聞いてるが。


「……じゃあ、やって見せろ。あそこにいるのを落とせるか?」


 木の下の方に掴まっている比較的近い猿を指してみる。この場所からだとちょっと遠いか。


「ここから!? うーん…………まあやってみるね」


 アーシェが手を前に出して構える。その手の前に渦巻く力のような気配を感じ取れる。魔法は恐らく魔力を用いる力だが、その力は俺の使う技術とは別の力であっても力は力、そこに在り流れている。存在するのであれば感じ取るのは不可能ではないが……そもそも己使う剣技の方が異質、異端だな。俺自身もそうだけど、この世界のそれとはちょっと違うようなものだ。

 自分の事や自分が学んだ剣技をアーシェの使う魔法を見ながら考えていると、どうやら完成したらしく風の球っぽいものがアーシェの前に存在する。時間としては数秒くらいか。戦闘時に使うとなるとちょっと溜めがいるのが問題になりそうだが、ただ剣で斬ったりするよりははるかに威力の高いのが魔法だ。弓を番えて撃つのと同レベルのことをその道具なしでできると考えれば十分すぎるか? まあ俺や師匠なら魔法を使う前に剣で斬り捨てたほうが速いだろうな。


「いくよー! ウインドバースト!」


 野球ボールを発射する機械が撃ちだす野球の球のように風の球が撃ちだされる。それは狙いをつけたらしい木に掴まっている猿へと一直線に向かい、猿に衝突するとともに爆発的に解放され、猿の体を大きく引き裂いた。圧縮した風を解放し爆発させて破壊する感じか……それも、鎌鼬的な風の斬撃としているのか? しかし何故に英語……? いや、そう聴こえているだけで別の言語か? 言葉に関しては最初から使えていたからあまり気にしてはいないが……まあいいや。

 猿がばらっとばらばらにされて落ちていく。ちょっと時間はかかるが、猿を普通に倒すのと比べると手間もリスクもはるかに少ないか。


「どうだー!」

「凄いな。ばらばらになったから回収が面倒になるかもしれないが」

「え……それは……うん、ごめんなさい」

「気にしなくていい。必要なら目玉でも頭でも持ってけばいいだけだからな」


 要は殺したことを証明できる部位であればいいわけだ。腕や足、尻尾は死んでいなくてもとれるからダメだが、目玉や頭骨なんかは殺さなければ取りにくい。仮に殺せなくても、片目で生きるのは難しいし両目ならばほぼ死んだも同然。腕や足でもそれは言えなくもないが、それならば同一個体の両腕でも持ってこないとだめだろう。下半身あたりなら足でもよさそうだが、そこまでいくと嵩張りすぎる。なので目や頭骨、歯とか部分的でいい嵩張らないものがいいのだが。目はちょっと保存道具ないと無理か。どうせ売れるものでもないし、やっぱり処分しやすい部分が一番だよな。


「ところで、錬金術にこの猿とか使ったりするのか?」

「お猿さんは使わないかなー。でも、骨とか肉とか皮はわりとなんでもいいから使おうと思えば使えると思うよ」

「へえ……今使ってみることはできるか?」

「うん、どこでもできるしなんでも使えるから……やってみてほしい?」

「ああ」


 その場でできると言うのは結構な利点だろう。無くなっても材料さえその場で確保すればどうとでもなるのだから。


「見たいって言うなら見せてあげるー。でも何作るの? あまりそういう材料使った来ないから」

「…………肥料とか?」

「もしかしてゴミ箱扱いされてるー!?」

「……そんなことはないぞ」


 いかん。ばれている。


「もう……まあ別にいいですけどねー。師匠もいらない物は錬金術で処理して捨ててましたしー」


 アーシェは散らばっている肉片をいつの間にか取り出していた錬金術を行う箱に入れていく。そして錬金術を行い、中のものを木の側によってひっくり返す。どばっと土のような雰囲気の何かになって出てきた。


「悪い」

「別にいいです。師匠もやってました。何か私でも役に立てるかなーって思ったらゴミ箱とかそんな感じみたいな使い方をされてちょっと怒ったりしてません」

「怒ってるじゃないか……」

「怒ってないですー! ほら、まだまだ倒すんでしょー! 行きますよー!」


 アーシェに引っ張られる。猿探しをするようだ……一応こちらが受けた依頼なのだが。いや、まあいいのだが。


「あ、いた!」


 そうしてアーシェが魔法を使いすぎた結果、ぐったりとするまで猿狩りは続けられた。恐らくしばらくは常設の猿の討伐依頼を受けなくても大丈夫そうなくらい狩ってから街に戻った。結局アーシェは聞き込みしていないが……まあ、明日依頼達成の報告に行った後にでも付き合うか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。