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 八人はその人数を半分に分け、四人ずつの二チームに分かれる。そのメンバーは学人、夜江、未遊、瑠奈の四人と鵺夜、直人、幸也、ガンジスの四人。


「こっちに男集中しすぎ……っていうかそっち女ばっかじゃないか?」

「大丈夫かそっち?」


 メンバー分けをした私に疑問の視線が向く。まあ確かに女性ばっかりが集中すると戦闘能力的にどうかとも思うけど。


「戦闘能力持ちが学人と鵺夜、ステータス上ではそうでしょ? 現実的にこの二人は別チームにするべきよね。で、鵺夜は学生。子供っていう程でもないけど、大人っていうほどでもない。だから鵺夜のいるほうはある程度大人の戦力がいたほうがいい。それに学人は銃持ち、場合によっては私たちが使ってもいいわけだから、学人と銃を持った私たちのうちの一人という戦力二人にもできる」

「女性がこちらにいない理由は何ですか?」

「足手まといがいない方がいいでしょ? こっちは八人の中で一番強い……と思う学人と、貸与できる武器があるからそっちよりも単純戦力は高い。それに一応銃なら女性でも……まだある程度扱えるしね。傘もあるから」


 武器がこちらに集中しているという点は大きい。非力な女性でもある程度のダメージは出せる。傘は微妙だけど、銃なら個人の身体能力は関係ない。問題があるとすればジャムることや反動でまともな命中率を期待できないこととかそのあたり。


「おい、こっち武器ないじゃねーかそれ!?」

「……一応金物ならありますよ」

「え? あ、電気工だからか!?」


 理由になってない。いや、別にいいや。向こうにもガンジスが持ってる工具入れにいくらか金属で鈍器代わりにできるものがあるようだ。まあ、鈍器にできるほどの長さはないし、近づいた所に殴りつけるか投げるかくらいしか使えない。今回は投擲技能持ちはいなかったから運かな? いやいや、そもそもゲーム的に考えるのも変か。


「とりあえず、チーム分けはこれでいいわよね?」

「……まあ、仕方ないと思うな」

「まともに戦えるのが僕だけなのが心配ですね」

「大丈夫です。戦う前に逃げることを考えましょう」

「そもそも出てくるのが戦って勝てるようなやつとは限らねーしな」


 そう、基本的に戦う前提ではいけない。戦うのはどうしても逃げられない、戦わなければ通れない場合だ。勝てる相手とは限らない場合も多い。せめてここに武器か、魔術書でもあれば……読んでいる暇がないからダメか。







 チーム分けをして進む。道は入り口付近と大して変わっていないが、所々壁に切れ目がある。近づくと自動でその切れ目が開き、その中に入れるようになる。入って出られるかもわからないし中に何がいるかわからない。最初に開いた所は一応覗いたが、それ以降は出来るだけ近づかないように進んでいる。

 そうして進んでいると、途中から床や壁が植物の素材のようなものになっている。床を蹴ってみるとやはり樹々のように感じられる。


「周りの様子が変わったわね」

「そうだな……」


 学人は周囲に視線を向け警戒している。銃を持ち、いつでも撃てるようにしている。チーム分けの時に一応私達も扱えると言ったが、銃を使ったことのない私たちに使えと言われてもせいぜい引き金を引くくらいしかできない。リボルバーじゃないから多分オートマチックだと思うのだけど、安全装置とか細かい所を知らないので正直まともに使えるとは思えない。あの時の話はチーム分けを納得させる程度の詭弁だ。


「……?」


 不意に瑠奈が視線を動かす。何かに気づいたような感じだ。


「どうしたの、瑠奈?」

「……何か音が」

「聞き耳かしらー? 私には聞こえないけどー」

「……気のせいかも」


 気のせい……ならいいが、仮にそれが化け物であれば危険だから近づかない方がいい。しかし、そうでない可能性もある……あるが、その場合何があるのかは疑問だ。ならばやはりその音がする方にはいかない方がいいのだけど、念のため調べたほうがいいかもしれない。


「……どうする?」

「……照月、場所は何処だ?」

「え? あ、えっと、あっち」


 瑠奈が指で音の下方向を指し示す。彼女もその音がしたことに関しては半信半疑と言った所だ。まあ、こんな場所だし気がまいって幻聴がっていう可能性もあるだろうし、できれば気にしないで早く先に進みたいっていうのもあるかもしれない。


「調べるの?」

「安全を確保する必要があるだろう? 危険ならば排除するか、その危険が何か調べる。そうでなければ何があるか調べて役に立つものを探す。こんな場所だ、頼りになるような物は多い方がいい」

「ゲーム的に言えば何かあってもおかしくはないわねー」

「……そうね」


 この世界はゲームではない。しかし、用意された舞台はTRPGのゲームとしての世界観。であれば、そのような配置がされていてもおかしくはない……かもしれない。もちろんあの声がどういう考えかはわからない以上、注意してしかるべきだけど。


「俺が安全を確かめる。大丈夫そうなら手招きをする」

「……お願いね」


 学人がその方向に行き、姿を消す。道の途中にある横道、その奥のようだ。


「仲いいわねー」

「……別にそういうわけじゃないけど」

「うふふ、ちょっとからかってみただけよ。どうせ元の世界に戻ったら別れるんだもの。せめてここで楽しめるだけ楽しんだらいいのよ」


 私は未遊ほど楽観的にはなれない。ただ、言うことはもっとも。私たちは別の世界の住人である可能性が高い。であれば、輝く杯によって元の世界に戻れば縁は完全に切れる。ただ、ここでの思い出は話は別。できるだけいい記憶であった方がいい……その方が後に引かない。

 仲がいい……か。まあ、自分の作ったキャラクターだから当然と言えば当然だろう。自分が好まないキャラクターをわざわざ作るのも変だし、どこか自分がやりたいことや投影したいこと、望むことをキャラクターに盛り込んでいるんだと思う。と、言うか。


「未遊だって仲いいんじゃないの?」

「えー? そうね、まあ、うふふ、あのくらいの子と付き合ってみたいなーって思ってたから遊び心でね」

「…………ショタコン」

「違うわよー!?」


 未遊をからかって遊ぶ。まあ、ショタコンというほどじゃないと思うけど……趣味はそれぞれだから。


「あ、あの!」

「え? あ、瑠奈、どうしたの?」


 そう言って聞くと瑠奈が指をさす。そちらの方向は先ほど学人の消えた横道。そこで学人が背を向けながら手招きしている。


「学人ね。じゃ、瑠奈、未遊、行きましょ」

「うー……ショタコンじゃないわよー」






「…………」

「…………」

「…………」

「……きもいわ、これー」


 壁から肥大した突起物がでていてそれに顔がついている。いうなれば顔面だけの壁から生えた化け物、とでもいうべきなのだろう。そして未遊が呟いた通り、誰がどう見ても気持ち悪いという感想しか出てこないだろう。ただ顔面だけということもあってこっちを襲ってくることはないと思う。まあ、舌を延ばして攻撃してきたり睨むだけで発狂させてきたり酸を吐いてきたりとかしないとは言い切れないのだけど。


「お? そこにいるのは誰か?」


 呟きを聞かれたのか、それともこちらの気配にでも気づいたのか、顔面がこちらを見てくる。首がない、顔を動かせないようで本当に視線だけだ。気持ち悪い。


「……どうする?」

「……話せるなら話した方がいいんだけど……どうする?」

「……逃げる準備して話しましょう。何か知ってたら御の字よー」

「…………」


 そういうことで、顔面と話すこととなった。まともに話せる相手ならばいいのだけど。


「ええっと、いいかしら?」

「……ああ、人間か。珍しい、いや、欲しい。しかしここで封じられている。私も体を移せるのならばいいのだが、こんな変な場所に来て移動もできず何もできずにいるとは……ああ、つまらない、おもしろくない」

「……あなたは何者なの?」

「動けない、肉体もない、この不便な入れ物に入れられただけ。実に詰まらない…………ああ、私か? ここで残念な形で呼ばれただけの存在だ。君たち人間とは時々知識を分け合ったりする仲だよ。そうだな…………私のことは大いなる種族とでも呼べばいい」

「大いなる種族……?」


 その名前に少しだけ心当たりがある。あるにはあるが、こんなだったかと言われると少々疑問だ。


「えっと、なんでここに?」

「人間は面白い。知識は私達よりはるかに劣るが私たちにない思考を持つ。神経を弄るのも、心を操作するのも、肉体を作り替えるのもいろいろとやってみると楽しいものだ。特に反応が面白い。心というのがそれぞれで違うのか、千差万別とはいかないが………………私がここにいる理由か? 私は知らない。知れればいいのだが、移動もできずにここにいるのみだ。しかも戻ることもできない。実にふざけた話だろう。まあ、この世界は仮初のようだ。だからこそ私の入れ替わりも機能不全を起こし使えなくなっている。ああ、なぜそうなったのか。少なくともここは私達よりも上位の者が作ったのだろう。実に悪趣味だ。悪趣味、そう、悪趣味。邪悪、邪悪な神。ああ、あの神だな。私としてはあの神に関わるのは拒絶したいところだ。ああ、早く帰りたい」


 話は一応できる……できるが、すぐに話から別の方向に思考が移動する。ああ、うん、まともに会話できない。


「えっと、ここから元の世界に戻るにはどうすればいいかわかる?」

「この世界は仮初。作られた物。実空間ではない虚構の世界。ああ、どこからか掻き集めたものを適当に組み合わせたりぐちゃぐちゃにかき混ぜて形だけ作ったのだろう。品がない、面白みがない、形だけできていればいいというものでも…………奥に行け。ここの神を奉じるものがあるだろう。それに願いをかければここを作った神がお前の願いを叶える。そうすれば私も元の世界に帰れるだろう。機能不全をおこしたが、ここがなくなれば元に戻る。希望的観測ではなく、真実だ。ああ、注意しろ。注意しろ。神はお前の願いをかなえる。叶えるだけだ。叶えてそのあとは知らんふりだろう。神に注意しろ。神は敵だ」

「…………ありがとう」


 情報収集としては微妙な所……だけど、やはり奥に向かえばいいのだろう。これが真実を言っているとは限らないが、結局情報的にそれ以外の答えが見つからないたいだ。


「もう用事はないわ。これは動けないから気にしなくていいだろうし、先に行きましょう」

「ああ……」


 よかった。これがまだまともで。聞いているだけで理解の外の内容だったけど……しかし、神を奉じるもの? 邪悪な神……もしかして、輝く杯って……いや、私の考えすぎならいいんだけど。

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