話の続き6
放課後になり、私は友達との談笑もそこそこに、バイト先に向かった。私は喫茶店でバイトをしている。喫茶店って言ってもスタバとか、ドトールとか、チェーン店じゃなくて、店長の福井さんが個人的にやっている、純喫茶というのだろうか、純喫茶というのはどこか響きが昭和っぽい。
そこで週に四日火曜と木曜と金曜と土曜日、五時から八時まで。喫茶店は七時に閉まって、そのあとは皿を洗ったり、掃除をしたり。土曜は昼から五時までシフトを入れてある。
電車で十分くらい揺られて、そこから数分歩いた閑散とした路地に喫茶店はあるのだ。
校門をくぐり、駅に向かう。授業が終わった達成感と今日も張り切って行こうって感じの気力で歩調は速くなる。
春の風と、まだまだ暮れる気配のない空。季節感があっていい。最近は随分と暖かくなってきた。
駅に着く。階段を上って改札に向かう。
線路にまたがるようにして建てられたこの駅は、階段を上って改札をとおり、また階段を降りて駅のホームに向かい、そこで電車を待たなければいけないのだ。
小学生たちが走って改札を通る。小学生にとって日々が過ぎていく体感速度がいかほどのものなのだろうか。高三になって、時の流れを感じるようになった私は、自分の小学生時代を思い出してみようとする。
双葉ちゃんと、双葉ちゃんのおじいちゃんと遊ぶことが多かった気がする。他の友達との記憶は、背景が全部教室の中で、おそらく放課後遊ぶことはなかったのだろう。
おじいちゃんのことを思い出して、今朝のイタズラを思い出した。一人でニヤけそうになる。いけないいけない。変な人だと思われる。
私はわざと真面目そうな顔をして、回数券を財布から取り出して、改札を通った。
階段を降りると丁度電車が来ていた。私はそれに乗り込む。電車は少し空いていて、私は簡単にあいている座席を見つけることができた。
さっき改札を走りすぎていった小学生は、車両の端っこで何やら手を使ったゲームをしている。
電車が動き出す。まだまだ暮れることのなさそうな空と、それに照らされた建物を見る。
電車に乗って車窓を眺めるとき、私はいつも線路沿いに立つ家の中で、誰が何をしているのかを想像する。
このぼろぼろのアパートでは自称小説家の冴えない男が、火曜の夕方から恋人と情事に励んでいそうで、そのあと電車が運んできたこっちのクリーム色の市営住宅では、宅浪生が熱心に勉強をしていそうだ。こっちの綺麗な一軒家では、若い奥さんが洗濯物をたたんでいるような気がする。
去っていく雑多な建物をそうやってみるのが私は好きなのだ。華の女子高生にしては、冴えない電車の乗り方だと思う。でも、スマートホンとにらめっこして電車の移動時間をやり過ごすと、なんとなくしょぼくれ度が上がるような気がして、読書をする時もあるけど車内で携帯をいじるのはやめているのだ。
そうやって何駅かやり過ごしているうちに、降りるべき駅に着いた。
電車を降りて、改札に向かう。私が乗っていた電車は、改札に向かう私を追い越して次の駅に行く。
改札を出て、バイト先に向かう。歩きながら携帯を開くと、店長からメールが来ていた。
「ふと衝動的に京都に行きたくなったため、店は斉藤さんに任せます。一緒に頑張ってください。カレーは作っておきました。そのほかのメニューは斉藤さんと河原さんが作れるものだけ、出してください。お客さんのメニューを聞く際、マスターが欠席のため、出せるメニューが限られていることを言ってください」
「わかりました。」
私はそう返信する。
今日は店長は休みなのね、と思う。店長がふと店を放ってどこかに行くことはよくあることなのだ。私たちもそうだし、常連客も気にしない。斉藤さんは大学生の女の人で、私と同じウェイトレスだ。
スラッとして背が高く、接客の笑顔が苦手ですって感じのツンとした人だけど、丁寧できちんとしているから、お客さんからも人気なのだ。
喫茶店についた。




