話の続き13
楠橋君と別れてから、教室で授業を受けているときも、友達と雑談に勤しんでいる時も、どこか落ち着かなかった。頭に引っかかってるのは、楠橋君と戸澤さんの先週のデートのことだ。何が何でもおかしい。
私の想像では楠橋君と戸澤さんは二人で仲良く手なんか繋いだりして、おじいちゃんの平屋の引き戸を開ける。そうしておじいちゃんが来るのを待つ。おじいちゃんは誰かが来たと思って、部屋から出て玄関に向かう。
そこには知らないカップルがひと組。私でも双葉ちゃんでもないし、知り合いでも、回覧板でもない。おじいちゃんは驚くだろうけど穏やかな人だから「どうしましたか?」と聞く。
流石に中に入ってしまえば普通の民家だってすぐに分かるから、「すみません、間違えました」とかなんとか行って楠橋君は逃げ帰って行くに違いない。
我ながら今思い返すと結構残酷で迷惑なイタズラだ。思いついた朝は結構笑えたんだけど。
仕方ない。分からないなら聞けばいい。多分、おじいちゃんちに行けばすべてわかるだろう。
放課後がもう目の前まで近づいてきていたからだろうけど、私の決心は現実味を帯びていた。久しぶりにおじいちゃんのおうちに行くわくわくもあった。将棋が久しぶりにできる喜びもあった。将棋好きの友達なんていないし、クラスの武田君は将棋が得意らしいけど、純粋に将棋が打ちたくて、クラスの武田君と将棋を打つのは多分失礼なんだと思う。多分ね。ちょっと自意識過剰的な考えかな。
そう思うと授業が長く感じてたまらない。そわそわしてくる。いてもたってもいられない。ふわふわショートヘアのちっちゃい女の古文の先生が清少納言を悪く言ってる。自慢しいの女の人だって。自慢しいの清少納言はきっとコンプレックスが強かったと思うから、そんなに悪く言うこともないと私は思うんだけど。
真の自分好きは紫式部の方だったに違いない。
だって、あんなに大変な話を延々書いてるんだもの。きっと自分のお話が面白いと思ってるに違いない。清少納言は「こんな私にも褒めてもらえるようなことがあるの。こんな私でも頭の回転の速さなら誰にも負けないわ
って感じだけど、紫式部は「ほら、私の書いたお話面白いでしょ?今まで誰も考えたことがなくってよ?」って感じであんまり感じのいい女性じゃない。
まあやっぱり一番素敵なのは赤染衛門だ。旦那さんが大好きだったらしい。大変に仲良し夫婦だったとか。紫式部がそう言ってたらしい。諸説は色々だけど。
コンプレックス女と自分大好き物書き女、旦那さん大好きおしとやか衛門ちゃん。やっぱり、筆とばかり遊んでいる二人はだめだ。ちゃんと現実を見なくちゃ。現実にもずっと仲良しでいられる人がいるんだから。
そう考えるとやっぱり衛門ちゃんが一番いい
技術向上を目指して頑張ります。




