話の続き10
ブツ切り防止のため、前回投稿内容と最初かぶります
どうすればいいんだろうか。難しいな。何かいい案があれば教えてください
「例えば、アメリカの家族がお出かけに行こうとする。最近ませてきた長女のアンジェリカは、おへそが出るようなTシャツにジーパンといった格好。それに向かってお母さんは『もっときちんとした服に着替えてきなさい』という。この台詞を言う間の1秒弱でシーンはガラリと変わる。1秒弱で字幕を読ませなくちゃいけない。しかも、会話としての自然さもいる。さて、河原さんならどう訳す?」
「うーん、難しいですね」
「何かいい答えはある?」
私は考えてみたけど上手い訳し方が思い浮かばなかった。
「降参です、答えを教えてください」
原田さんは頭を掻く。
「いや、正しい答えがあるわけでなはいけど、昔見た映画では『へそ出しは駄目』って訳してたなあ」
なるほど、確かに「もっときちんとした服装に着替えてきなさい」だと20文字もあるのに、「へそ出しは駄目」だとその半分以下で済む。普通に訳すだけでも大変そうなのに、カットの長さで読める文量を意識しないといけないのは難しそうだ。
「確かに全然違いますね……そんな風にしながら訳すのって大変じゃないですか?」
「うん、だから困ってる。変な表現を使ったり、難しい言葉で短く言ったりするのにも限界があるしね」
「今までにどんな洋画の字幕を担当したんですか?」
「えーっと、河原さん見るつもり?」
「はい、見ようかと」
「じゃあ教えない。字幕に僕を見出しながら見るものじゃないからね」
「えーいいじゃないですか、少しくらい」
「誰にも教えてないんだ。この仕事始めてから。まだ5年目だけど、誰にも教えてない。僕は作品を歪めてる張本人だ。限りなく一次に近い二次創作をしているようなもんだ」
聞いてはいけない質問だったみたいで、原田さんの声色が少し変わった。どこか罪悪感を感じているようだった。
「えーっと、ごめんなさい」
私はやってしまったと思った。
「なーんてね、ちょっと芝居がかってるね」
原田さんの声色がまた元に戻る。笑いながらコーヒーを飲む。でも、さっきのはきっと冗談ではなないだろう。
「ところで河原さんは高校何年生?」
「高3です」
取り繕うように放たれた台詞に、取り繕うように早口で返した。
「高3かー進路は?」
「推薦で地元の国立大学に行くつもりです」
「へーあそこ?」
原田さんは北の方角を指差す。
「そうです、あそこです」
「そっか、じゃあ優秀なんだ」
「いえ、マメな努力とかは苦手じゃないんですけど、記憶力が悪くって」
私は笑って謎の言い訳をする。
「僕と真逆だ」
原田さんは嬉しそうにそう言う。
「真逆ですか」
「容量はいいけど、続かない。大学は高3の春に急にやる気になって、中学以来
全く勉強してなかったけど、頑張って有名私立大学に受かったんだ」
「どこの大学ですか?」
「でぃー」
「でぃー?」
「D」
「あー、Dですか」
「そうD」
「原田さんも賢いんですね」
「まあ、Dが賢い大学と言うなら」
その言い方が何となくいじけてて、おかしかった。
「中学以来勉強してなかったくせに、学歴コンプなんですか?」
私はいたずらっぽく笑ってそう言う。この冗談というか軽口は何となく許されるような気がしたし、きっとこの冗談は笑い合えるという確信のようなものもあった。
「うん、まあ、そうかな。行ってた高校がそういう高校だったから」
一年ほど前に書いていた作品を発掘してきてあげているんですけど、やっぱり色々と気になるところがありますね。
今ならまた違った雰囲気になるんだろうか。
1年あけて続きを書くのが楽しみです。
書き溜めはもう少し続きます。




