魔法の銃の使い方
「パワードスーツ?また物騒なのが出て来たな」
巨大な人型の兵器、見れば巨大なチェーンガンを装備している。
あれにやられたら一瞬で車程度ならスクラップになるだろう。
多分白兵戦用の装備を魔法使い用に引っ張り出してきたのだろう。
確かに彼女相手ならそれくらい必要かもしれないが、バットにとっては一緒にされてはたまったものではない。
「多分ドローンが在庫切れなんで持ち出してきたのね。良かったじゃない、話聞ける相手がいて」
だが、アテナはむしろ良かったとでも言わんばかりの様子で笑った。
そして杖を手に取り。もう一度パワードスーツの様子を確認する。
「多分、いいセンサー積んでないのね。こっちに気づいてないから、あたしが何とかしてくるわ。バットは援護できるならして」
「え?援護って?」
「相手の気をそらしてくれたらいいわ。ただし、見つからないようにね」
そう言ってウインクすると、アテナは猫のように駆け出していく。
どうやら、足に魔法でもかけたらしい、彼女は人間離れしたスピードでパワードスーツの前を横切ると、慌てて反応したパワードスーツの反応を超える速度で、パワードスーツを翻弄し始めた。
チェーンガンが咆哮を上げ、周囲の建物が穴だらけになる。
それにバットは急いで銃口を向けた。
「ああ、もう!無鉄砲すぎるよ!」
腕の力を抜いて、念じる。
バットは、慣れた手つきで本日何度目かの動作を行った。
銃口からエネルギーがほとばしり飛んで行く。
すぐにその場を離れたバットには見えていなかったが、エネルギーはありえない軌道を描き、パワードスーツの足の関節部を正確に射抜いていた。
そしてバランスを崩して倒れ込むパワードスーツ。
アテナは、その機会を逃さず、あっという間にパワードスーツに触れられる距離まで近づいていた。
「電撃!」
杖を関節の隙間に突きさし、電撃を放つ。
パワードスーツの電子機器は、高電圧に耐えかねて一瞬で焼き切れた。
そしてパワードスーツは、その場に崩れ落ちる。
それはまるで、力尽きた人間のようだった。
「すごいわね。すっかりその銃を使いこなしているじゃない」
ようやく静かになったことに気づいて物陰から姿を現したバットを、アテナは賛辞で迎えた。
一体何が起こったか、解らないバットはそれ一瞬、きょとんとしたが、やがてなんとなく状況を理解し、照れ臭そうに微笑む。
「何回もドローンを撃ったのがいい練習になってみたいだよ。狙い方さえ間違えなければ、こいつ、百発百中なんだ」
考えてみれば、さっきから外した様子が無い。
バットは、銃を眺め、改めてそのすごさを実感した。
だだ、それは誰にでもできることではないようだ。
アテナはそれに嬉しそうにしている。
「あなた、本当に魔法の才能あるかもね。船乗り辞めたら、魔法協会に弟子入りしたら?」
「……そうならないように頑張るよ」
さすがに今の生活を犠牲にしてまで彼女のような魔法使いになりたいとは思わない。
バットは、少し興奮気味のアテナの提案を、苦笑して固辞した。
そして、ぐったり地面に横たわったパワードスーツを見上げる。
「中の人は無事なの?」
「そう、道案内してほしいから、苦労して動きを止めたの」
バットの問いに彼女はそう答えると、ひらりとパワードスーツの上に立ち、杖を突き立てる。
するとパワードスーツの装甲が開き、中から意識を失った海賊の男が現れた。
彼女はそんな彼の頭に触れ、強制的に意識を回復させる。
「おはよう。ちょっと聞きたいんだけど」
「ヒッ!助けてくれ!」
笑顔で問いかける彼女に怯える海賊。
あんなもの見せられたら、怯えるのも無理はない。
バットは心から海賊に同情した。
「港にはどう行ったらいいの?」
「殺さないで!」
「道順は?」
「……この通路を右……え?いや?……一番エレベーターが直通……口が勝手に……」
明らかに、自分の意思に反して口が動いていることに海賊が戸惑っている。
だが、アテナはさらに笑顔で質問を続けた。
「さっき行ったら動かなかったんだけど?」
「命令で電源を落としています。コントロールセンターはその先……」
向こうの通路を指さし、自分でも驚く海賊。
バットは改めて海賊に同情した。
「そう、ありがとう」
アテナがそう言うと、海賊はそのまま意識を失った。
そして、それを確認すると、アテナはひらりとバットの前に降りてくる。
「こういうことみたい、急いで電源を入れに行きましょう」
そう言うアテナにバットは。
「……君には隠し事はしないようにするよ」
と、彼女の術のすばらしさを賛辞した。
コントロールセンターも人が出払ったのか無人の状態だった。
各部の監視をするモニターやドローンのモニターが起動したまま放置されている。
どうやら、ここのほかにもこういう所があるようだった。
「どうも、そんなに人は居ないみたいだね」
ドアを破壊して侵入してきたバットはその様子に安堵する。
多分、警備用ドローンがすべて破壊され、慌てて逃げだしたのだろう。
監視モニターには、もう映像を映さなくなっているモニターがいくつもあった。
「ちょうどいいわ、早いとこエレベーターの電源を回復させましょう」
アテナの言葉にバットもそれに大きく頷き、そして、周囲の計器類を見て、そのまま動きを停止させた。
「どうしたの?」
「いや、どれがその装置なんだろうって……」
「え?」
バットに言われてアテナも再度周囲を見回した。
大半の装置はタッチパネル式になっていてメニューを呼び出さないといけない形式のものだ。そもそもどれが電源回路システムの計器かわからない。
かといって、レバーかブレーカーのようなわかりやすいものも見当たらなかった。
「……参ったわ。私こういうの弱いのよ。こんな事ならあの人連れて来るんだった」
「こんなことしている時間無いのに……。どうしよう?」
うろたえる二人。
だが、そんな事をしている間にも時間は過ぎていく。
このままでは船が制圧されてしまうかもしれない。
そして、そんな二人の前で、急にすべてのモニターが切り替わり、一つの画像を映し出した。
そして、要塞内全館に繰り返しメッセージが流れる。
「この要塞のコンピューターシステム。およびドローンの制御はこちらの支配下にあります。全員無駄な抵抗を止め。その場で待機してください。繰り返します……」
モニターに映し出された映像。
それは、「ジュピター13」内部からシステムを掌握した郭の姿だった。




