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第9話 いざ出陣!

 陽南ようなん高校の体育館にて——


 バスケットボール部のキャプテンが荒れ狂っていた。


「予選落ちかよ……くそっ!」


 部員の1人が恐る恐る尋ねる。


「監督、罰として、やっぱり……」

「丸刈りだ、全員!」


 有無を言わせぬ監督の声。


「あの、オレも……でしょうか?」


 部員たちが一斉にりょうを振り返る。


「長いこと練習に来ていなかったし、試合があった事すら知らなかったんで……」


 凌の発言が皆の怒りに火をつけてしまった。


「なんだと?」

「お前が最初だ!」


 全員に押さえつけられた。


「え、ちょ、待っ……!」


 ウィィィィィィンというバリカン音の中。

 凌の髪の毛が体育館の床に落ちていく。



 茫然ぼうぜんとした表情で帰宅した凌。

 彼を待っていたのは玲奈れな優花ゆうかだ。


「リョウ、どうして丸坊主なの?」

「どうやらバスケ部が負けるとオレが丸坊主にされるというシステムになっているみたいなんだ」


 優花は泣きそうになっている。


「あれだけ一生懸命髪型も整えたのに!」


 玲奈はもう呆れ果てていた。


「学園祭は明日よ。どうするつもり?」

「配られたカードで戦うしかないんじゃないかな、和真かずま伯父さんも言ってた……んだけど」


 もちろん玲奈と優花に左右から責められた。


「今それを言う?」

「丸坊主にするにしても、1日待ってもらったら済んだことじゃない!」


 すっかり弱ってしまった凌だが、らずぐちだけは回っていた。


「確かに待ってもらうという手もあったよね。それにしても、良い考えってのはいつも後から浮かんでくるもんだな」

「何ですって?」

「これはオレのオリジナル名言……かも」

「はあ?」

「いや、すみません」


 優花が凌を磨き上げ、その外見で戦うという作戦が見事に崩れ去ってしまった。

 学園祭を前にして全員が絶望の淵に立たされた事は言うまでもない。



 いよいよ聖桜せいおう女学院の学園祭当日。

 朝、出かける凌はいつものように勝手口へ。

 ふと見ると靴がなかった。


「……あれ? 靴がない!」


 キッチンから母親の声がする。


「アンタの靴、玄関に移したから」

「……は? なんで」


 エプロン姿でゆったりと微笑む母親。


「正々堂々、玄関から行きなさいよ」

「え、でも」

「これだけ頑張ってきたんだから、そろそろ正面から行く時でしょ?」


 凌はしぶしぶ玄関に向かおうとした。

 その後ろから母親がつぶやく。


「赤穂浪士の討ち入りみたいね」

「……は?」

「いざ、出陣!」


 ドンッ!

 母親が凌の背中を叩いた。

 思わずよろける凌。


 玄関に立って扉を開ける。

 日差しが差し込み、風が吹く。


「それでは母上ははうえ、行ってまいります」

「頑張っておいで!」


 

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