第6話 自己嫌悪
玲奈、美月、優花の3人の中で特に厳しいのは美月。
「それじゃ駄目よ」と何度もダメ出しをくらった。
自室での特訓の日、凌はついに音を上げ始めた。
「オレなんか年齢イコール彼女いない歴だし。気の利いたトークなんか無理だよ……」
美月は呆れる。
「何、それ。今までの特訓は、全部無駄ってこと?」
「だって……」
「じゃあ、もうやめれば?」
美月の声は冷たかった。
そこに登場したのが伯父の橘和真だ。
和真は穏やかな口調で尋ねる。
「どうしたのかな?」
「別に……」
そう言いながらも美月の目は潤んでいた。
和真が美月の横にしゃがみこむ。
「なるほど。せっかく美月ちゃんが一生懸命頑張ってくれたのに、凌くんが投げやりになったから、悲しくなったんだな」
「……うっ」
美月がワッと泣き出した。
和真は美月の頭を撫でながら凌に話しかける。
「凌くんは伯父さんと血が繋がっているだろ」
「え、ええ」
「大人になったらハゲ・デブ・チビの三拍子揃っちゃうかもよ?」
「はあ」
「どっちみち、人間は配られたカードで戦うしかないんだからさ」
「……」
「今のうちに覚悟しておいた方がいいんじゃないかな?」
配られたカードが悪くても投げやりになるなって意味だろうか。
確かに三拍子揃いながらも、和真伯父さんはいつも堂々としている。
「よしよし、美月ちゃん。伯父さんが家まで送ってあげよう」
「……」
「マックシェイクを買っていこうか?」
「……うん」
涙ぐみながら美月が微笑んだ。
「あの……なんでマックシェイク?」
自分でも間抜けな質問だと凌は思ったが、尋ねずにいられなかった。
和真はニヤリと笑って答える。
「太宰も言ってるじゃないか。大学入試で出るぞ」
怪訝な顔の凌が訊き返す。
「そんな時代にマックシェイクなんかないでしょ」
「太宰を全部読んだら、どこから引用したか分かるよ」
そう言うと和真伯父さんは美月と一緒に部屋を出て行った。
1人になった凌は自問自答を繰り返す。
まさに自己嫌悪だ。
美月さんは、いや他の2人も時間を作ってくれた。
何をやっても期待を裏切るオレに懸命に付き合ってくれた。
それなのに自分から駄目だとか、もう出来ないとか。
一体オレはどんな馬鹿野郎なんだ!
美月さんを悲しませただけじゃない。
玲奈ネエにも呆れられているだろう。
せめて全力で頑張ったら、本番で負けても納得がいくじゃないか!
なんてオレは卑怯者だったんだろう。
そう思わずにはいられない。
我知らず涙が出ていた。




