第4話 会話の特訓
玲奈の家にて。
「じゃあ始めるわよ。私がマドンナ役だから」
美月の特訓が始まった。
「趣味は何ですか?」
「えっと……特にないです」
「却下!」
横から玲奈にダメ出しされてしまった。
戸惑う凌。
「えっ、なんで?」
「『特にない』って答えた時点で会話終了よ。相手が『ふーん』で終わるパターンだね。会話が続く余地がなくなるでしょ?」
今度は美月に厳しく指摘された。
「じゃあ、もう一回いくね。趣味は何ですか?」
「……特にないけど、最近ランニングを始めました」
「そこで!」
「うん」
「ランニングって言ったんだから『どんなコースを走ってるの?』とか『目標はあるの?』って話が繋がるのよ」
「なるほど」
3日後、今度は凌の家での特訓。
美月とのマンツーマンでのレッスンだ。
「次の質問ね。休日は何をしていますか?」
凌は少し考える。
「えっと、友達とゲームをしています」
「悪くないけど、そこから話が拡がるかな?」
「最近は格闘ゲームにはまってて、負けた方がアイスをおごることにしています」
「そのアイスっていう情報が重要なのよ」
「……」
「『どんなアイス?』とか『負けた時の金額は、いくらまでOK?』って
会話をつなげやすくなるでしょ」
美月の指導は具体的だ。
「じゃあ、さらに質問を続けるわ。どのような女性がタイプですか?」
「素直で可愛い人です」
「それ、10人中12人が言うパターンね」
「じゃあ、どう答えればいいんだよ?」
「『例えば』をつけるのよ」
「『例えば一緒に映画を観に行けるような人』とか『例えば料理が上手な人』とか」
「なるほどね」
美月の言うとおりにすれば、いくらでも会話は拡がった。
「じゃあ、もう一度きくわよ。趣味は何ですか?」
「最近ランニングを始めて、目標は10キロを走れるようになることです」
「いいじゃない!」
ようやく美月が微笑んでくれた。
さらに翌日、今度はカフェだ。
美月は手を緩めない。
「じゃあ、英語パートもやるからね。What’s your hobby?(趣味は何ですか?)」
「I like running. I started it recently, and my goal is to run 10km without stopping.(ランニングが好きです。最近、走り始めたのですが、休憩なしで10キロ走れるようになるのが目標です)」
「Good! Now, what’s your type of girl?(いいね。さて、どんな女の子が好みですか?)」
「Umm… I think I like someone who's kind… and maybe someone who likes to watch movies together.(うーん、優しい人というか、一緒に映画を観ることの出来る人……かな)」
「Not bad.(悪くないわ)」
「……Really?(本当?)」
「But, if you want to sound natural, try this.(でもね、もし自然な英語に聞こえるようにしたいなら、こう言ってみたら?)」
なぜか美月は英語も流暢だった。
「I guess someone who's kind… and maybe likes to chill and watch movies together.(優しいというか、一緒にまったりと映画を観ることのできる人がいいかな)」
「Ah… I see… more relaxed.(あ、なるほど。もっとリラックスするわけね)」




