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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第23章:エクアドル・種の起源の島へ【2030年2月10日】
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第357話:海のイグアナ

挿絵(By みてみん)


「進化の鍵は、その絶滅を訴えるその特殊な脳波に対して『共鳴が起こり得るのか』ということなのです」


 ヒナの言葉を自分なりに反芻する。

 けれど、やっぱりよく分からない。


 そんな困惑を察知したのか、ヒナが言葉を変えて説明してくれる。


「例えば、リンさんがある村に住んでいるとして、そこの唯一の水源である井戸が枯れてしまったらどうしますか?」

「多分、他所へ別の水源を探しに行くと思うけど」


「では、例えば、同じ村の人がもっと深く井戸を掘ってみようと言い出したら?あるいは雨水をためる施設を作ろうと提案してきたら?」

「もちろん、それもやった方がいいとは思うけど……」


 ヒナが頷く。


「生物の絶滅の理由は多種多様です。ただ、ある日を境に、特定の種がいきなり滅ぶということはまずありません。大抵の場合、徐々に滅びていくのです」


ヒナが一拍置いて、言い換える。

「滅びの過程においては、通常、いくつかの取りうる選択肢と時間が用意されているのです」


 ――確かに、巨大隕石の衝突で絶滅した恐竜もまた、衝突の衝撃波よりも、それによって起こされた気候変動によって徐々に滅びていったと聞いたことがある。


「そうした”逃げ場”の存在は、むしろ”共鳴進化”の阻害要因になります。”進化のベクトル”が分散するからです」


 十萌さんが話に加わってくる。

「つまり、①種として絶滅の危機に瀕し、②ある個体が強烈に進化を望み、③そして進化のベクトルが合致す仲間がいるということが、”脳波による共鳴進化が起きやすい条件”ってことね」


「ええ。それが隔絶した空間であればあるほど、進化のベクトルが重なる可能性は高まります。例えば、このガラパゴス諸島の海イグアナのように」


 ヒナが、海を臨むイグアナの映像を映し出す。

 白い壁面には、脳波らしきグラフも投影されている。


「冷血動物の海イグアナは、体温が低いときはほとんど動きません。脳波は、極めて規則的なθ(シータ)波リズムを示しています」


 更に、画面が切り替わり、今度はその上空の鷹を悠然と飛ぶ映し出される。


「ただ、鷹などの外敵に襲われたときや、餌の海藻を取りに海に潜るときは、一気に、γ《ガンマ》波が爆発します。そしてこれは、哺乳類が「ゾーン」に入ったときに見られる脳波とほぼ同一です」


 ――え?

 私たちがあれだけ苦労して会得した「ゾーン」を、ガラパゴス(ここ)の動物たちはごく自然に身に着けているというのだろうか。


「これもまた、進化の過程の一部だと思われます。まずは、”初めの個体”がゾーンを身に着け、それを近くにいた周りの仲間が共鳴したのでしょう」


 ここまで聞いて、わたしはようやく理解できた。

「もしかして、わたしにとっての”初めの個体”っていうのが……」


 カイが言葉を継いだ。

「ああ。深山一心。君のおじいさんだ」


挿絵(By みてみん)

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