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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第23章:エクアドル・種の起源の島へ【2030年2月10日】
350/369

第350話:ガラパゴスと世界

挿絵(By みてみん)


 ――なんだか、海に突き立てられた巨大生物の骨みたい。


 サンタクルス島の港を見た第一印象は、そんな感じだった。

 緑の大地とエメラルドグリーンの海に、白色の建造物やヨットの帆が立ち並ぶ様子は、何ていうか、やたらと違和感があった。


 もちろん、わたし自身がヨットで島に向かっている以上、そんなことを言えた義理じゃない。


 ただ、この島はきっと、「人間が主役ではない」のだ。

 太古から独自の進化を遂げてきた、その数千もの生物こそが主人公なんだという空気が伝わってくる。


 **********


 実際、島に上陸すると、その感触はさらに強くなった。


「あれが、ガラパゴスゾウガメよ」

 十萌さんが、道路のど真ん中で、微動だにしない巨大な亀を指さす。


「野生、ですよね?」

 十萌さんが頷く。


 その甲羅の巨大さからして、体重は優に300キロを超えているだろう。

 私たちが乗っている軽量のバギーと衝突したら、むしろ壊れるのはわたし達の方だろう。


 カイが雇ったらしいガイドが、ゾウガメを避けながら、手慣れた手つきでバギーを進めていく。


 海辺に辿り着くと、今後は大量のセイウチが昼寝をしているところに遭遇する。

 日光浴をしながらうたた寝する彼らからは、警戒心のかけらも感じない。


「捕食されない危険のない生物って、ああいう表情になるんですね」


 テレビやネットで見る野生動物は、もっと何かしらの”張り詰めた感じ”をもっていた気がする。

 それは、狩られる危険性かもしれないし、飢えへの緊張感かもしれない。


 ただ、もしそんなリスクもないとすれば、生物はやっぱりあんな感じになるんだろう。

 この一件に巻き込まれる数か月前まで、ベッドの上で、スマホを見ながらだらだらしている人間(わたし)も、またそうだったから。


「ま、でも、外敵が殆ど来ないガラパゴス(この島)だからこそ、独自の生態系が生まれ、こうして世界中の人がこの島に惹きつけられるているのかもね」


 十萌さんが言う。


「かつて、ガラパゴス携(ガラケー)帯って言葉が流行った時、グローバル化に乗り遅れた端末だと揶揄されたわ。でも、そんな空間だからこそ、生まれる文化もある。日本のマンガやアニメとかね」


 確かに、そうかもしれない。

 今でこそ世界中で愛されている日本の漫画やアニメもまた、日本という東の島国で育まれた、先人のマンガ家たちのオリジナリティーがあってこそだ。


 セイウチは、そんなわたし達のことなど一顧だにせずに幸せそうな表情を浮かべていた。


挿絵(By みてみん)

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