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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第23章:エクアドル・種の起源の島へ【2030年2月10日】
346/371

第346話:ネオゴシック建築

挿絵(By みてみん)


 2030年2月10日 エクアドル・キト


「まるで季節が早送りされたみたい」

 わたしは思わず呟いた。


 つい半日前まで冬のドイツにいたのに、キトはまるで小春日和だ。

 半球を超えてきたのだから当然なんだろうけど、でもやっぱり不思議な感じがする。


「あれが、ヴォト大聖堂よ」

 十萌さんが二つの尖塔を持つ壮麗な聖堂を指さす。


「なんだか、プラハで観たヴィート大聖堂に似てますね。名前もそうですけど、薔薇みたいな窓のデザインとかも……」

 全く違う街並みや文化なはずなのに、街の中心の聖堂には似通ったものを感じる。


「ええ。プラハ(あっち)のはゴシック建築で、こっちはネオゴシック建築だけど、同じ源流であることは間違いないわ」


「ただ、向こうと違って、ヴォト大聖堂(こっち)はまだ未完成なの」

「え、でも大分旧そうに見えますけど……」


「建築自体は、1883年代から始められているから、もう150年以上完成していないことになるわね」

「どうしてなんですか?せっかく作ったのに……」


「一説には、こう言われているわ。『この大聖堂(バシリカ)が完全に完成したら、世界の終わりが来る』ってね」


 ――ふ、不吉な。


「逆に、完成させなきゃ世界は滅びないってことかもね」

 そう言って、十萌さんが笑う。


 このジョークが、ただの冗談じゃないってことに気付いている人は、まだまだ世界には少ない。


「給油までもう少し時間がかかるわ。せっかくだから、エクアドル(現地)っぽい食事をしていきましょう。ガラパゴス等にいったら、食事は大分制限されるから」


 **********


「これが、キヌアスープよ」

 そう言って、十萌さんはテーブルに置かれた色鮮やかにスープを口に運ぶ。


「キヌア……って?」


「キヌアは、エクアドルのアンデス地域で古くから栽培されている植物よ。高タンパク質だし、食物繊維も豊富な”スーパーフード”なの」


 わたしも口に含んでみる。

 優しい味わいが口中に広がる。


「なんか、プチプチしてますね」

「不思議な食感でしょ。でも何より優れているのは、このキヌアが、3~4000メートル級の高地でも育つってこと」


 ――それって……。


「ええ、やがて来る氷河期には、食糧事情は一変する。だから、キヌアのような高山植物が飢餓克服の助けになるかもしれないの」


挿絵(By みてみん)

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