第344話:ガラパゴス島へ
「は? 今からガラパゴス島に来い!?」
全く想像もしていなかったメッセージに、思わず声を上げる。
後ろを歩いていた十萌さんが、声をかけてくる。
どうやら、彼女も同じメッセージを受け取っていたようだ。
「まったく、カイさんはいつも唐突ね」
十萌さんが、笑いながら肩を竦める。カイの無茶ぶりには、半ば慣れっこなんだろう。
「十萌さん、何か聞いてます?」
「人類の進化についての調査――とだけね」
――確かに「ダーウィンが進化論を発見した島」だと学校で習った記憶くらいはある。でもそれ以上のことは全く分からない。
「……っていうか、そもそも、ガラパゴス島ってどこにあるんですか?」
十萌さんがスマホで地図を見せてくれる。
「エクアドルよ。ざっくり言うと、コロンビアの南で、ペルーの北って感じね」
ドイツからだと、行くだけで半日はかかりそうだ。
「それに、ガラパゴス島への直接入島は禁止されているの。だから、エクアドルの首都のキト経由で行くしかないわね」
そう言うと、スマホを電話モードに切り替えた。
「ジャック。次の目的地は、エクアドルよ。12時間後、ベルリンのブランデンブルク空港で会いましょう」
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前を歩いていたソジュンとユンも、わたし達の突然のエクアドル行きには驚いたようだ。
「私まだ、何にもお礼ができていないのに‥‥‥」
ユンが悲しそうな顔を浮かべる。
「いいのよ。子どものうちは、大人をどんどん頼りなさい」
十萌さんが、ぽんとユンの頭を叩く。
「僕も一緒に行きたいけど‥‥‥もう暫くはベルリンにいるよ」
「ええ。ユンに付き添ってあげて」
術後の一定期間は安静にする必要がある上、その後は、教団の目から逃れるための整形手術も待っている。そう言った時期だからこそ最も心を許しているソジュンこそが、傍にいてあげるべきだろう。
「さてと‥‥‥。じゃ、龍樹のところに戻りましょう」
「また、術後の検査ですか?」
「いえ、リンちゃんの診断よ」
「え、わたし?」
十萌さんが呆れたように言う。
「もう。なんでベルリンに来ることになったか、忘れたの?」
――あ。
そう言われて、ようやく思い出した。
今回のドイツに来たそもそもの目的は、「気」らしきものが見えるようになった原因を探るためだったことに。




