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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第22章:チェコ共和国・変わり身と城【2030年2月5日】
338/382

第338語:脳内プロジェクター

 挿絵(By みてみん)

 

――古代ギリシャ語で、アレクサンダー大王が死んだ時のことを話している?


 モニターの向こうで行われている、およそ現代とは思えないやりとりに、わたしの頭がバグってくる。

 そもそも、何でそんな会話になっているのかさえ分からない。


 ようやく会話が終わったのは、それから20分ほど経ったのことだった。

 白髪の病院長が、主治医、久我教授とカタリーナを共に控室に入ってくる。


 椅子に座ると、開口一番、病()長はこう言った。

「脳内チップの除去手術は、認めることはできない」


 ――え?

 反論しようとするソジュンを制して、十萌さんが尋ねる。


「先ほどの問診の結果だと思われますが……。ご事情を聞かせてくれますか?」


「主人格の少女のためじゃよ」

 白髪と肌の感じから、60歳を超えているはずの病院長は、背筋がピンと伸び、しっかりとした意思を感じさせる。


 主治医が口をそろえる。

「病院長は、脳内チップを除去した場合の、主人格(ユン)への影響が大きすぎる――とおっしゃっているんだ」


「は?なんで、そんなこと分かるの?」

 案の定ソジュンが、主治医に喰ってかかる。


「さっきまで、アレクサンダー大王がどうこうっていう、訳分かんない歴史の話をしていただけじゃん。大学の授業じゃないんだし、もっとまともに診断をしてくれよ!」


「ほう。あの古代ギリシャ語の会話が聞きとれていたのか?」

 病院長は感心したように言う。


 ――ま、まあ、本当はAI(サラ)に訳してもらっていたんだけど……。

 ということは言わないでおく。


「それなら、感じ取れたのではないか? あの第二人格―ケルベロスとやらが、ことさら()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ソジュンが、目を逸らしながら吐き捨てる。

「一人の人間が、ギリシャ時代から生きているなんて、あり得るわけないじゃん!古代ギリシャの神々じゃあるまいし……」


 そう言いながらも、ソジュンの目はどこか不安で自信なさげに見える。


 ――そう。

 その不安はわたしも抱いていた。


 単に 第二人格(ケルベロス)が、流暢な古代ギリシャ語を喋っていたから――というわけではない。彼からは、嘘を自覚している人特有の、迷いや後ろめたさの気配が全く感じられない。


 韓国を語るときも、古代ギリシャについて話すときも、全くブレない。「アレクサンダー大王の死」でさえも、あたかも見てきたことのように語っていた。


彼の脳内では、時間も空間も完全に隔たれているはずの二国が、地続きであるかのようだ。


「あの脳波チップは、単にユンの脳波を制御し、強化するためだけのものではなかったのかもしれない」

 久我教授は言う。


「恐らくあれは、人類の綿々とした歴史を頭の中で流し続ける、いわば”脳内プロジェクター”のような役割なのだろう」


挿絵(By みてみん)

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