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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第22章:チェコ共和国・変わり身と城【2030年2月5日】
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第337話:アレクサンダー大王

挿絵(By みてみん)


 旧市街広場の裏道を抜けると、ユンたちが待つ大学病院が見えてきた。

 中欧・東欧で最も古いとされる大学だけあって、古都プラハの街並みにもしっかり溶け込んでいる。


 入口では、看護婦が迎えに来てくれた。

 ただ、その額には、うっすらと汗が滲んでいる。


「申し訳づらいのですが‥‥‥」

 彼女は戸惑いの表情を浮かべながらそう切り出した。


「実は、今、別の者が問診中なんです」


「なんだと!? 誰が、そんな勝手なことを……」

 シモン刑事が喰ってかかる。


 何ていっても、ユンは今日狙撃されたばかりなのだ。警戒して当然だろう。


「本大学病院の病院長、つまり総責任者(トップ)です。もしこの大学病院で脳外科手術をするのであれば、自身の目でその症状を見ておきたいと……」


 その病院長とやらは、いわば主治医()の一番上の上司にあたるらしい。

 この大学病院にいる以上、部下である主治医や看護婦が断ることは難しいのだろう。


 ただ、せめてもの条件として、カタリーナと久我教授の同席を認めさせたらしい。


「まあ、確かに真っ当な要求ではあるわね。高難易度の手術の成否は、病院の名声にも関わる以上、病院長本人が来たとしても不思議じゃない。それにカタリーナと龍樹も同席しているなら、変なことにはならないだろうし……」


 十萌さんが幾分ほっとした表情を浮かべる。


 ――良かった。

 わたしも胸を撫でおろした。


 まだ、さっきのカフカ美術館での混乱の余韻のせいか、どうしても疑い深くなっている自分がいる。


 さっきの一瞬で、実はこの病院に「魂を支配する者(教団)たち」の刺客が紛れ込んでいて、病室に向かった時は既に……なんて、サスペンスドラマみたいな想像が頭をよぎったほどだ。


 ただ流石に、世界屈指の脳外科医である久我教授と、元ドイツの精鋭部隊出身のカタリーナの前では、滅多なことなど起こせないだろう。


 **********


 控え室に向かうと、部屋のモニターからは病室の要素が映し出されていた。


 そこには、ユンのベッドを中心に、5人ほどの白衣の医師と看護師が取り囲んでいた。


 その中心にいる白髪の高齢の人物が、おそらく病院長だろう。

 傍らには、先ほどの主治医も同席している。


 ただ、英語でない言語で話されているらしく、何をいっているのは聞き取れない。

 それでも、病院長が、ユン―あるいはその第二人格―と、やたら前のめりに会話をしている様子が見て取れる。


 シモン刑事も内容は聞き取れない以上、チェコ語やドイツ語でもないということだろう。


 わたしは、久しぶりにカスタマイズ型人(サラ)口知能を起動する。

「久しぶり、サラ。二人が話している言語って、何語?」


 サラの答えによどみはない。

「古代ギリシャ語だよ。二人とも、かなり高度なレベルだ。特に、あの女の子の発音はネイティブに近い」


「どんな話をしているの?」

 そう尋ねると、サラはしばらく会話を追跡(トレース)し、やがてこう答えた。


「どうやら、アレクサンダー大王について話しているみたいだ。()()()()()()()()()()


挿絵(By みてみん)

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