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フィラデルフィアの夜に、機械が音を奏でます。
それは空調機です。
街一番のビルの中、もう何年も一秒の休みもなく大きな音を出し続けながら、誰にも気づかれる事無く地下の一室で働き続けていました。
埃に覆われ、時たま作業員が点検に来るのみ。
雄叫びの様な轟音を延々と出し続け、それでいながらまるでそこに存在しないかのよう。
ビルの中の人々は、目の前の事で忙しいのでした。
その日もビルの中は大忙し。
何百という人々が行きかい、何万という物が売買され、何億というお金が取引されていきます。
そんな中、ビル全体がリズムを取り出す。
床が揺れ、壁が鳴り、天井が震える。
何より、コンセントから何か這い出してきた。
針金。
針金がコンセントより、次々に出てくる。
人の形を取って。
次々にその辺に落ちていたゴミや小物に絡みつき、人の形になる。
そして。
踊る。
大小様々な針金が、床、壁、天井のリズムに乗って。
踊る踊る踊り狂う。
コンセントというコンセントから,、ダクトというダクトから、排水口という排水口から、人の形を取った針金が、無限かと思えるほど大量に舞い続け踊り続ける。
そして、一人気づく。
揺れる床を、床だけでなく、壁に張り付き、天井にぶら下がる針金たちを蹴散らして。
絡み、じゃれつく人形たちを跳ね除けて。
戸惑い、動けなくなった人々を尻目に。
地下、扉を開く。
空調の機械が、リズムを取っていた。
埃が立ち、重低音がドラムとなって音頭を取って。
よく見れば、空調の隙間からも人の形の針金が、這い出し続けている。
何をする訳でもなく、踊り続ける。
心臓に届くリズムに、思わず体をゆだねそうになって。
楽しそうに、面白そうに、空調機が踊っている。
作業員はそれでも空調機の埃まみれの電源スイッチを切りました。
ビルは、リズムを取るのを止めます。
あれだけ踊っていた、ビルの中を占拠していた針金の人形たちも急に動きを止め、バラバラと音を出しながら床に転がっています。
もう一度空調機のスイッチを入れると、いつもと同じような轟音を出しています。
つまらなそうに、空調機はいつもと同じように働いています。
嘘のような出来事でしたが、床に足の踏み場がない程大量の針金の人形が転がり続けていました。
作業員は首を傾げながら掃除道具を手に取りました。
こうして延々と働き続ける空調機がまた響くだけでした。
たまに一人踊る針金人形と、一人の作業員が密かに物陰で踊りながら。




