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フィラデルフィアの夜に、旅に出ます。
道路を作るのに土砂を掘り返していくと、するとしばしば忘れ去られていた昔を掘り起こす事があります。
その日、誰も知らないだろう壺を道路を作る重機が掘り出しました。
硬い機械が掘ったにも関わらず、運よく無傷でまたこの世に現れます。
それは大きく、様々に文様が刻まれ、どこから聞きつけたのか学者が駆け寄りその壺を持ち帰り、土を払っていきます。
幾何学的で不可思議な、今までのどこにも見られない物です。
使うのに不便そうな穴に、意味の分からない四角や三角に直線。
誰が何をどう考えたのか?
そして一か所だけある丸く刻みを見ていると何故だか明るい気持ちにもなります。
早速、新たな発見という事で、博物館にて展示される事になりました。
朝、なくなっている。
あれだけあった幾何学文様が全てつるりとなくなり、消え去っている。
ただそこにはつまらないほど平凡な壺があるのみ。
急ぎ監視カメラを確認、映像を見れば。
真夜中、一本の針金が壺から飛び出て、不意に音もなく壺の文様が一か所に集まっている。
それは人の形になり、あの見ていると明るくなる丸い文様を顔にして。
無数の直線を体の枠にそこに針金をはめ込み、四角や三角、穴をまるで髪や服それとアクセサリーにして。
すると、動き出す。
歩くような仕草で、壺から床に、監視カメラの枠外へ。
旅立っていったのです。
あちこちから、あちこちから、その壺から出発した人の形がいる報告がきました。
博物館近くの公園、動物園、美術館。
自動車に張り付き、遠くへ。
飛行機にこっそり乗り込み、更に遠くへ。
子供が、警官が、農家が、通りすがりが、漁師が、学生が、追跡する物好きが。
次々に写真に撮る。
捕まえようにも、二次元にいるからどうしようもない。
ただ追跡するだけ。
瞬間移動の様なフットワークの軽さでついには南極基地にすら到達し、前人未踏の山や洞窟の中から出てきたのさえ目撃されて。
物好きと研究者が追跡し続け、いつの間にかあの展示されていた博物館の壺にいました。
人々が壺に戻った人の形をビデオ撮影しつつ交代で監視し続けます。
ゆっくりとゆっくりと、少し寂しそうな感じで元の壺の文様に戻っていきました。
壺の文様に世界は振り回され、何だか気持ちが明るくなる丸い文様はずっとそこに刻まれています。
でもたまに、その文様は旅に出ていきます。
人の形をまた取って。針金で体の枠を作って。
世界の研究者と物好きが追いかけて。




