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フィラデルフィアの夜に、針金が掃き出します。
毎日、祈りの声が聞こえてきます。
病院の一室、その中から。
いつの間にか体の中に悪い物が植えられたように大きなのができており、全身に悪いものが拡散してしまったのです。
ありとあらゆる検査と治療にもかかわらず、やれることがもうありませんでした。
僅か数日の事で、あまりに急激に命の瀬戸際となっています。
寝る事も出来ず、夜の中で祈りをし続けています。
命が、助かることを。
ベッドに月明りが差し込み、窓枠がまるで十字架のように映りこみました。
朴の木がその十字架に軽く被さり、それが祝福のようにも見えます。
朴の木から一枚、木の葉が窓枠に落ちました。
木の葉は根元が窓枠に根付いたように突き刺さります。
そして木の葉の根元が十字架にも見える窓枠を侵食し始めた。
朴の木の葉が、窓枠から部屋全体へ侵食を始める。
根が、這いずり、巻き上げ、埋め尽くす。
不意に、それらが一気に窓枠へと集まりだした。
太く、長く纏まり、十字架に見える窓枠にガラスを割りながら絡みついた。
その姿は、大蛇の様に。
白銀に光り、金属質な体が目に映る。
そして、その蛇が大きな口を開けて向かってきた。
その口には、朴の歯が一枚、その歯とそっくりな多くの針金が集まったような歯が無数にある。
身動きできず、目を見開いたままで。
その感触は、やわらかな羽のようでした。
何度も何度も。
何度も何度も。
何度も何度も。
本当に、何度も。
気が付くと、朝日が窓より差し込んでいます。
窓はあの時に見た様に割れ、部屋にはあの侵食された跡が痛々しく残っています。
医者と看護師がその部屋の異常な光景に驚きつつ、検査のために入ってきました。
ふと、窓の向こうにある朴の木の根元を見ました。
何かが箒で掃き集めて纏まっています。
昨日には確実になかった、何かが。
医者にそれを伝えます。
訝しげでダルそうな医者と看護師と、不思議に軽い足取りで朴の木の下へ歩いていきました。
近づけば近づくほど、医者と看護師が目を見開いていきます。
足を進めるほどに、顔を青くしていって。
ゴミとホコリを払い、それは腐ったような感触で悪臭が漂っています。
それは体の中にあるはずの悪いものだ、と医者が言うのでした




