第16話 田舎の拠点
ファーミングシミュレーターで得た情報をレジスタンス本部に持ち帰った夏喜と杏はオペレーターから解析結果を聞いた。
「よう、お二人さん。コイツを見てくれ」
相変わらず咥えタバコが似合うくたびれた姿はこの本部の名物になっている。彼はVRシミュレーター内で出会った利用者を解析し、利用者の知り合いの連絡先を入手していた。
その情報を元に国内に居る者を特定し居場所を映した衛星画像をモニターに表示させた。
「こんな草むらに錆びた壁のヤードがあっても廃墟くらいにしか思えないよね」
そう、夏喜が言うようにこの国の地方のインフラはもう機能していないところも多い。このヤードがある場所も元は人口二十万人の地方都市だったが今はボロボロのアスファルトで繋がっている廃墟だ。
ここまでになる前はオフロードバイクやSUV車の運転が好きな人間がよく走っていたそうだが今となってはほとんどの車が速度抑制装置が付いているのと静か過ぎてそもそも運転が楽しくないので誰も寄りつかない地となった。
「そう。傍から見れば廃墟で、屋根も付いているがボロいのでまさかこの中で車両爆弾が作られているとは誰も思わないだろうな」
「じゃあ、この中にテロリストがうじゃうじゃいるの?」
「ああ。その通りだ」
「う~ん……この件は警察に言った方がいいのかな?」
「ないな。むしろ言わない方がいい。調べたところこいつ等は政府系企業に雇われた建設作業員で、普段は作業員として働いている事にしてるようだ」
「しているようだって事は働いている事にしてお金をあげてるの?」
「そういう事だ。こいつらに金をバラまく事で雇用している事にして補助金を貰っているクソな議員がこの田舎にいるって事だ。
面倒を一切、見てないし生存確認すらしていないのでこんな事が出来ているわけだがな」
「でも在留カードについてるICチップはどこを通るにも読み取られるはずだけど?」
この国では日本人は国民カード、外国人は在留カードを所持する事が義務となって久しいが昔と変わってICチップの精度と機能が向上し、かなり離れた距離からでもチップを読み取ることが出来るようになった。
この進化は国民がどこを通ったかや、何をしているかをリアルタイムで監視できるようになったのだが、当然ながら後ろめたい思考を持つ人間から猛批判され読み取り制限を設ける事となった。
情報を読み取られる事や、思考を読まれる事に恐怖する人間というのは後ろめたい事を隠しているものでそれはどこの国でも変わらない。
反発する人間をよく観察すると普段から他人を陥れる事や何らかの不正等をしようとする姿を見れる。だから見透かされる事が怖いのだ。
そして、この読み取り制限は不正を働く権力者にとっては格好の機能となった。
「まあ、このロクでもない議員と県警は繋がっている。当然ながら不正選挙をしたが県民も分かっていてもいつもの事だと選挙に行く者はほとんどいなかったってところだ。
で、この議員の一族が経営しているのがその政府系企業で癒着に裏金、秘密パーティーで酒池肉林の日々。おまけにコンパニオンはとんでもなく可愛いのが映ってる。コレを見てみろ」
怪訝な顔をした杏がモニターを覗き込むと贅を尽くした宴で踊る女性の姿が映っていた。
「え? この子……。まあ、でも……そうだよね。ああ、でも嬉しそうだし生贄なのかな? 報酬がいいとか?」
「いいや。この手のパーティーは絶対に秘密を守れる子じゃないと生贄にすらできない。という事は報酬は貰っても意味がないくらい金持ちって事だ」
まあ、この手の秘密パーティーというのは権力者が好む方法で権力を誇示し、秘密を共有して逃げられないようにコントロールするためにするパーティーという名の事実上の契約のようなものだ。
「ところでそんな秘密のパーティー会場を映したこの画像はどうやって入手したの?」
「ああ。こいつはヤードにいるテロリストの端末に入っていた画像だ。連絡先の情報がクラウドに上がっていたのでついでに調べたら入っていたってワケだ」
「こんな最もヤバイくらいのネタを上げていたのも凄いね。何も言われていなかったのかな?」
「多分なんだが、公安にバレそうになったら高飛びするつもりなんじゃないか? この手の画像は相当な金になるからな。端末ごとどこかに売って金にするつもりだと思う」
今の世の中ではどこに何が流出するか分からないというリスクが付き纏うがそれは誰にとっても同じである。
選挙に行っていい国にしようと言う気概もなければ正義という言葉を卑怯な手を使うための免罪符と勘違いしているこの国の状況はどれだけ監視装置が高性能になっても犯罪者にとっては活動しやすい事に変わりはない。
そこでレジスタンスはこの議員を潰したいと思っている連中に応援を要請する事にした。




