常勝の神③
ボクは策略を書いてはバツをつけて丸めて投げ捨てた。
憎い、、、
許せない、、、
ボク達が何をしたと言うんだ!
「ぐっ。。。」
奥歯をガリガリさせながら冷静でない自分を感じている。
無辜の民は必ず守らなくてはいけない。
下限条件を元に策略を書き殴った。
最低の策略だが、無辜の民は守れる可能性が1番高い、、、
ボクは頬を伝う涙を拭うと少し外の空気を吸うために城壁の上へと歩いた。
いつの間にか、陽が暮れて夜を向かえていた。
ふと、、、いや、自然と森の方向に視線が向いた。
全身の毛が逆立つのを感じた。
『ふざけるな!』
敵国は部下の頭部を貫いた槍が夜間でも見えるように灯りを灯していた。
ボクは駆け出した。
『助ける!必ず!』
ボクは戦備えを手早くすると森へ向けて駆け出した。
罠なのは分かってる。
理屈より感情が身体を動かしている。
『城門は空けられない。。。』
城門を開ければその隙に敵国の本隊が突撃するだろう。
開けた門を閉める時間やそこに割く人員で押し切られる。
相手は遊んでるんだ。
ボクは城壁の上から森から目立たないところからロープを垂らしそこから降りて森へと駆けた。
当たり前のように弓矢の雨がボク目掛けて飛んできた。
『こんなのトールとの模擬戦に比べたら。。。』
ボクは迫り来る矢を掻い潜ろうと思い駆けて行った。
「くそ。。。」
迫り来る矢の数程憎しみが溜まってくる。
ボクの部下を囮に使った!
許せない!
「くっ。。。」
矢がボクを掠めた。
継続的に降り注ぐ矢に敵国の兵の物資の豊潤さや兵士の量を片隅に考えながら端にある槍の下へ速度を落とさずに駆け抜ける。
その時、あと少しで槍に手が掛かりそうな瞬間、浮遊感に襲われた。
落とし穴、、、
森の奥で下卑た笑みでボクを見てるのを感じた。
『必ず。。。必ず連れ帰る!』
ボクは長剣を鞘のまま落とし穴の先に地面に突き立ててそのまま飛んだ。
その反動を利用して鞘を置き去りにして矛と柄を切り、部下を回収していく。
最後の槍を切り落とすとボクは森に向かって憎悪を込めて睨み付けた。
部下を全員回収するとボクは城壁まで駆けた。
「隊長!早く!」
城門に着くと上方から声が聞こえる。
ゴンドラが城壁から下りてくる。
「隊長!!!」
ボクはゴンドラに飛び乗った。
森から騎兵がこちらに迫って弓を構えているのが視線の先に見えた。
「放て!」
城壁から声が聞こえると矢が城壁から騎兵に向けて五月雨のように放たれた。
その光景を見ながら痛みを感じていた。
「。。。!?」
城壁の上まで引き上げられたボクを見た皆は絶句していた。
「隊長。。。早く手当てを!」
誰かがそう言った。
無数の矢が両手両足をを貫いているのを確認してからボクは意識を手放した。
参
夜が空ける前にボクは目を覚ました。
『身体中が痛む。。。』
ボクは痛む身体を意思だけで動かした。
痛みが回収出来た証明であると教えてくれる。
ボクは共通墓地に向けて歩きを緩めない。
何度も転び、何度も休憩を挟んで、やっとの事共通墓地にたどり着いた。
そこには名もない墓穴が作られその周囲にボクの部下が揃っていた。
「掘ってくれたんだね。弔いの為に埋めよう」
ボクがそう声をかけると先頭の年配の兵士が大きく首をふった。
「隊長。。。彼等は歯を噛み締め睨み付けるように死んでいます。全員がです。その想いを受け止めて下さい」
年配の兵士はボクに槌を握らせた。
「ボクに死者を冒涜をしろと。。。?」
か細いボクの声に皆が覚悟を決めた目で見詰めてる。
震えるボクの前に頭部が運ばれて来る。
視線が集まる中、ボクは手にある鎚を使えなかった。
手を歯と歯の隙間に入れてこじ開けようとした。
だけど、ビクともしなかった。
「隊長。。。舐めないで下さい。私達の忠誠は死後も続くのです」
年配の兵士がそう言うと皆の気迫が増した。
ボクは震える手で槌を歯に目掛けて振り落とす。
歯が抜け顔が変形し、口の中から唾液や血で汚れないようにコーティングされた紙が出てきた。
恐る恐る紙を開くとそれは敵国の情報だった。
それを読み終えると次の頭部が運ばれてきた。
全ての兵士の頭部を壊し集まった30余名の情報、、、
全てを得た地獄の先に皆が膝を着いてボクが最後に書いた最低の策略をボクに突き付けてきた。
「私達の命をモノとしてお使い下さい」
「。。。出来ない」
「私達1人1人の命が友を家族を救うためにお願いします」
「。。。」
ダメだと思った。
彼等は覚悟がもう決まっているんだ。
空を見上げた。
夜の闇が空けようとしている。
「。。。分かった。共に死のう」
ボクは出来るだけの笑顔で彼等に答えた。




