五十五万 流星
「やべぇ、使えねえ」
「……どういうことだい?」
ヴァルの消費は、自分の物にしか使えない。
自身の認識の問題なのだが、他人の物を消費して力を得ることはできないのだ。
二百万ならなんとか受け取ることができたが、一億となると『マーチェから借りている』という認識が強くなって、使えなくなってしまった。
「そういうことは先に言っておきなさい!」
「だって、言ってたら同行させてくれなそうだったから……」
「……残金は?」
「……二十ちょい」
このぶっ壊れた金銭感覚の中、あと二十万で、竜騎士を落とさなければならない。
「どうするか……」
「仕方ない、切り札を使おうか」
リサはポケットから機械の箱のようなものを取り出し、三つの数字を呟いた。
「‐832,12093,13」
「……最後の攻勢だ。全てを懸けるぞ」
「全く、誰のせいですか!」
「キル!」
ヴァルとナートが同じ方向に走り出し、リサはライフルを構える。
さらに、ヘッグが使えなくなった金貨を使い……銃を、黄金の超獣型に変形させた。
倍ほど大きくなり、傍目からでも強そうなことが分かる。
騎士はもう銃の威力は身に染みて分かっており、その強そうな兵器に、風の盾を展開した。
ダァン!
轟音が鳴り響き、超獣ライフルが火を吹くが……弾は出なかった。
見掛け倒しの、ただの鉄金屑。
「やはり、熱で変形していたか。けど、盾は引き出せた」
「行っくぞおおお!」
直ぐ近くまで詰めていたヴァルが加速し、
「〈黄金の剣〉!」
竜の頭の一つを切り裂いた。
「ヴァアアア!」
「〈疾風・穿雅〉」
しかし、そこに竜のもう一つの頭と、騎士の槍が向けられる。
直撃すれば、もう治す金は無い。
そこで、
「〈霊幻起臨〉!」
「ヴァアアア!」
ナートがヴァルの倒した頭の霊を呼び出し、それを盾にした。
防ぎきれなかった炎が二人の身を焦がすが、それに耐えながら、その頭にヴァルが斬りかかり、もう一つの頭を落とす。
だが。四人だとここまで。頭を二つ落とすのみ。
だから。もう一人の援護を受ける。
「‐832,12093,13」
リサが置いていった機械が、三つの数字を彼女に伝えた。
それは……援護の座標。
「私の出番ですね!」
想像よりずっと早い要請だったが、彼女……ミナ・メタトルはその強弓を引き絞り、十本の弓を携え、見えもしない遠い彼方に弓を構える。
「響け強弓! 轟け弓鳴り! 届け、私の思い!〈流星十聖矢〉!」
迎角八十度。
ほぼ真上に向けて矢を放ち、目標の地点に流星の様な矢が降り注ぐ。
一仕事終えた彼女は、折れた相棒の弓を置き、酒を一口あおった。
次回、最終回☆




