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五十四万 北といえばミサイル

 高速で飛来する鋼鉄の弾頭。

 育ちも生まれもこの世界のヴァルは見たことが無かったが、何が起きるかは大体察する。


「おいおいおいおい!」

「ヘッグ、防壁」

「ヴヴッ」


 竜も、遠方より飛来するその兵器が、一直線に自分を狙っていることを察し、ガードを解いて避けようとする。

 しかし、ミサイルは着弾まで待たず、ある程度接近したところで、その破壊力を示した。


「耳をふさいで伏せたまえ。あと、ヘッグはもっと防壁を固く」

「キル!」

「お前たまに狂ったことするよなぁ!?〈金強化〉!」


ドッカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


バキ、バキ、バキ、バキィ!


 ヘッグは多重に防壁を巡らせていたが、ミサイルはそのほとんどを破壊し……


「おおおおおおおおおおおおおおお!」


 ヴァルが補強した最後の一枚で、止まった。


「キルゥ」

「もし俺が防壁を強化できなかったら、どうするつもりだったんだよ」

「初めて作ったから、爆薬の量を間違えたみたいだ。まあ、結果良ければ無問題ってやつだ?」


 二人でリサを睨みながら、ヘッグが金属の壁を解除した。

 あの規模の爆発だ。

 消滅していても不思議では無かったが……デュラゴンはピンピンとしていた。

 奴を守護したのは、巨大な深緑の盾。


「……風の盾、か」

「にしても強度が異常だ。概念的な守りの力があるのかもしれない」


 風の盾が消え、奴の盾の光が収まり、竜騎士はヴァル達に向き直った。


「……さすがに、あの盾を無制限に使えるということは無いだろう」

「となると、フェイントを織り交ぜながら、必殺レベルの攻撃を多重に繰り出す……難しいな」

「けど、やらなきゃ!」

「……ああ」


 ヘッグの力強い言葉に頷き、ヴァルは数歩前に出た。

 所持金はまだ百万以上ある。できれば、それで終わらせたい。


「とりあえず、盾は俺が使わせる」

「まあ、それが妥当だろうね。あとは、一人一首か」

「あーあ」


 ヴァルは回り込むように走り出した。

 勿論足は強化しており、風を切って、砂埃を上げながら疾走する。


「ヴァウ!」


 竜の双頭が口に火の玉を灯し、ヴァルに向かって連打した。

 それを、蛇行と加減速だけで避け切り、カリバーンに力を集める。


「〈飛閃〉!」

「〈妖風の盾〉」


ギィン!


 避けられないよう、三十万も込めた斬撃は、深緑の盾に阻まれた。

 しかし、それは予定通り。


「まずは一つ」


ダァン!


 リサの対物ライフルが火を吹き、竜の脳天に穴を開けた。

 傷としては浅く、すぐに再生されそうなものだが、隙を作るには十分。


「行こうか。〈金消費〉二十万」


 ヴァルは向きを変えて一直線に竜へと跳び、宙に浮遊する盾を足場にして一気に加速する。

 そのまま、身を捻って回転を加え、


「〈旋・閃〉!」


ギュン!


 一筋の独楽(コマ)となったヴァルが、二つの首を一度に切り落とした。

 しかし、首を落とすことに集中しすぎて着地に失敗し、体勢が崩れた。


「クッ、〈疾風・穿雅〉」


 唯一生き残った騎士が、風の槍を突き出し……今度は、頭を狙う。

 一発で頭を破壊されると、再生も間に合わない。

 だが、そのドリルの様な風は、ヘッグが止めた。


「キル!」


 いつもはリサを守っているのに、今回は前に出た。

 その分、リサの方のガードは甘くなるだろうと、騎士は彼女の方に視線を向け――


「〈幽閃〉」


 潜んでいたナートが、鎧の無い首部分からナイフを差し込み、心臓部分を貫いた。

 

「これでどうだ!?」

「見事。……だが、まだだ」

「ヴァアアアアアア!」

「ッ!」


 竜の……尾が咆哮を上げ、背中に乗っているナートに火を吹いた。

 突然の攻撃に、咄嗟に霊体化を使ってそれを回避するが、最大の逃げ札を切ってしまった。


「「「ヴルアアアアアアアアアアアア」」」


 再生を終えた三つの頭がナートの方を向き、一斉にブレスを照射する。


「きゃああああ!」

「不味ッ!」


 炎に襲われるナートを助けに行こうとしたが、風の槍に阻まれる。


「キル!」


 ヘッグが立ち上がり、金属の盾を作ってヴァルを守った。


「ありがとう!」


 そんな彼女に感謝し、ポーチから銃を取り出して、三十万ほど込める。


「もう全部ふっ飛べ!!」

「〈妖風のた――」

「させない」


 リサがライフルを撃ち、騎士の手から盾を手放させた。

 しかし、竜のヘイトを取ってしまい、防御力皆無なリサに炎が向けられる。

 

「ヴヴア!」

「リサ! ……よくも!」


 引き金を、引く。


ドガァン!


 鼓膜を破るほどの轟音が鳴り、ヴァルの銃が爆発する。

 その強大な一発は、竜の胴体に大きな穴を開け、騎士の下半身をふっ飛ばした。


「リサ、ナート、大丈夫か!?」

「はい……」

「なんとか」


 ナートは自慢の足で粘り、リサは背中の巨大なリュックを盾にしたらしい。

 しかし無傷とはいかず、ナートには所々に火傷があり、リサのリュックは燃えカスになってしまった。


「……」


 一筋の願いを込めてデュラゴンの状態を見たが、ガッポリと空いた大穴は塞がりつつある。

 やはり、三つ、いや四つの頭を一気に破壊するしか無いだろう。


「……やれるか?」

「キル」

「あ、ありがと」


 ヘッグが、金貨を乗せてきた馬車を引っ張ってきてくれた。

 所持金が心もとなくなっていたので、とても助かる。

 感謝しつつ、緊張しながらそれを手に取り――


「……やべぇ、使えねぇ」


 ……勇者パーティVS魔王っている?

 もうこれ最終決戦でいい?

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