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四十八万 かんこー

 魔族領の中央。

 魔王城、玉座。


「……フィクロストに、DEATH・WALKERまでやられたか」

「DEATH・WALKERは、まだ復活できたハズですが……」

「聖女に完全に消滅させられてしまったらしい」


 まだ成長の余地があっただけに、DEATH・WALKERの死滅は悔やまれる。

 あと三回ほど回帰できていたら、四天王筆頭にもなれたかもしれないのに。


 玉座に座る魔王は、溜息をつき、現状を冷静に分析する。


「少し前までは互角だったのに、一気に劣勢となったな」

「……ですが、まだ私が残っています」


 玉座の前に、一人ひれ伏していた騎士が立ち上がり、マントを翻して窓の一つを開けた。


「この盤面をひっくり返すには、少し賭けに出る必要があるでしょう。私が出ます」

「任せたぞ……我が騎士よ」

「吉報をお待ち下さい」


 そう言って騎士は窓から飛び降り……一頭のドラゴンが、魔王領の空を駆けていった。





 一方、人類領。


「もう四天王を三体も滅ぼしたのか」

「はい。歴代と比べても、かなりハイペース……というか、記録が残っている中だと、最速です」

「なるほど」


 十七で四天王を三体仕留めるとは。

 実際は、その内の一体に勇者はほぼ絡んでいないのだが、情報の伝達を繰り返す過程で、その情報は消えてしまった。

 こうなると――


「……速攻を仕掛けた方が良いかと」

「であるな」


 魔王は、勇者と同時に誕生し、その実力は二十歳で最大となる。

 勇者も、魔物を倒すことでその実力は増すが、その成長速度は魔王と違って変速的。

 つまり、まだ勇者も魔王も成長途中だが、現在は勇者の方が強い可能性が高い。


 国王は、顔を歪めて悩み、思考を繰り返してから……結論を出した。


「世界中の実力者をノスバットに集めろ……決戦だ」

「一月ほどかかりますが、よろしいでしょうか?」

「うむ……戦争など、とっとと終わらせてしまおうではないか」



 


 また、ある一方。


 ノスバット、メタトル公爵の屋敷の一室。

 ヴァルはエルシオン系列の宿に泊るつもりだったが、ミナに押し切られて……こうなった。

 その連れということで、エルシオンは全員屋敷に泊らせてもらっている。


 用意された朝食を食べ終わってから、四人は打合せをする。


「さて、今日はどうする? まだ魔王軍の残党はいるだろうし、それを狩りに行くか?」

「いえ、今日は休みにしましょう」

「え?」


 ナートの意外な提案に、ヴァルは間抜けな声がでた。


「どうして?」

「最近働き詰めだったからね。復興も大体完了した頃だし、観光といこうじゃないか」

「私、貴金属屋さんに行きたーい」

「よし行こう」

「……相変わらずヘッグには甘いですよね」

「私らが下手な策を弄す必要なんて無かったじゃないか」


 リサが何か失言を発した気がしたが……無視して観光の準備をする。


「じゃあ行くか。誰か、ミナからお勧めの観光スポットとか聞いてない?」

「待ってください、その格好のまま行くのですか?」

「うん」


 ヴァルの格好は、いつもの黒と白の雑着であり、腰には三代目カリバーンが刺さっている。

 とても観光客の姿では無い。


 全員いつもと同じ服装だと思っていたが……みんなラフな格好になっていた。

 戦闘の時ですら白衣を脱がないリサも、何故か今日はベージュのケープとミニスカートという、一般的なものとなっている。


「どうだい? 似合ってるかい?」

「それでいいのかと思わなくはないけど、いいんじゃないか?」

「そ、そうか」

「ヴァルも、今日は仕事を忘れて、楽しもうじゃないですか」


 ナートもガラにもないことを言う。

 何か不信感を覚えつつも、ヴァルは着替えを取りに行った。


「とは言っても、俺は戦闘用の普段着しか持ってないぞ。たまに魔物の血ついてるし」

「……同じ服しか見ないと思っていたが、やはりそれしか持ってなかったか」

「……最初に行く場所が決まりましたね」


 こうして、最初に行くのは服屋となった。



 屋敷を出て、警備の人に挨拶してから、服屋に向かう。

 いつもは、何となくエルシオン商会の系列店で買っているが、今回はノスバットの一般店に入店する。


「こんなのどうだ?」

「真っ黒じゃないですか」


 ヴァルが適当に選んだ服は、ほぼ純黒のTシャツ。

 もう少し整っていれば、葬式にでも出られそうなデザインだ。


「黒が好きなのですか?」

「いや……昔、誰かが金髪には黒服が映えるって言ってたから」

「一色なのがダメなんだよ。私に任せたまえ」


 自信満々にそう言ったリサが持ってきたのは……ダボダボな白衣。


「いつもの白衣を俺に着せようとするな」

「でも、意外と悪くないですね」

「カッコいいよー」

「……そんなもんか?」


 結局、ヴァルの服装は純黒のTシャツとデニムに、ギリギリ手が出るくらいのダボダボ白衣になった。

 慣れてくると、いつものリサのイメージがあるからか、理知的に思えてきて、割と気に入ってる。


「次はどこに行く?」

「私に任せてくれたまえ。良い見世物を見つけたんだ」

「ナイス」


 他に行くあても無いので、リサの誘導に従って見世物を見に行くことにした。

 少し変わった四人が、復興を終えた街を往く。


「ところで、見世物って何だ? サーカスとかか?」

「今町で話題の、めちゃくちゃ面白い劇だよ」


 そう言って、リサはヴァルに……仮面を渡した。


「ナニコレ」

「さっきの服屋で買ったんだ。もしかしたら、付けといたほうが良いかもしれない」

「ちょっと待てどういう意味だ!」


 何だか途轍(とてつ)もなく嫌な気配を感じた瞬間、リサがヴァルの金を入れているポーチを奪い取った。


「おい、何するんだ!?」

「逃げられたら面倒だからね。ほら、見えてきたよ」


 劇に使われる、木製の建物が見えてきた。

 その看板には、今回行われる演劇の題名が書かれており――


題名『ヴァル・アスター』


「待て待て待て待て!」

「さあ、入りましょうか」


 グルだったらしいナートがヴァルの腕をがっちりと捕え、面白そうな雰囲気を察したヘッグが、それを後押しする。


 ……ワケも意味も分からないが、何かヤバそうなことは分かる。


「おい、自分の名前が題名の演劇見るって、相当」ヤバいからな!」

「騒いではいけないよ。さあ、入ろうじゃないか」

「もうこれ一種の拷問だろ」


 嫌がるヴァルの意思は無視され、劇場のとても見やすそうな席に座らせられた。

 人気の劇というのは本当なのか、広い観客席が次々と埋まっていく。

 気づくと、満席になっていた。


「嫌な予感しかしない」

「食わず嫌いは良くないよ。君は偏見と先入観のみで物事を判断するのかい?」

「……それっぽいこと言って誤魔化すなよぉ」


 確かに、実際に見もせずに嫌悪するというのは、褒められたことではない。

 不承不承ながらも、とりあえず黙って鑑賞することにした。


 ……それが、間違いだった。


 劇は、この前の防衛戦でのヴァルの行動を演劇にしたものだった。

 街に来てからの流れが、上手く二時間ほどにまとめられており……その出来には感心した。

 だが、演劇となると、多少の脚色が入るのは当然。


「ミナは絶対俺が守る!」

「言ってない! 俺アレ言って無い! ……言ってないよね?」

「静かにしなさい。今いいところですから」

「もしかしたら、言っていたかもしれないよ」


「この一撃に、俺の全てを懸ける。〈シャイニングオーヴァーレイ〉!」

「少なくてもアレは言ってない! 俺はあんなスキル持ってないからな!」

「にちゃ、カッコいい」

「……ってか、その時にDEATH・WALKERを倒したの俺じゃないし」


 さすがに銃を探す部分は無かったが、それでもかなりの脚色があった。

 途中からナートに〈静寂〉をかけられたが、心の中ではずっと声を張り上げていて、全体的に疲れた。


「もうやだ」

「えー、面白かったよ? もう一回見よ」

「絶対やだ。とりあえず昼にでもしようぜ」


 その時。


カンカンカンカン!


 敵襲の鐘が鳴り響いた。

 それと同時に、一つの大きな影が街に落ちる。


「ヴァアアアオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「さあ、街落としを始めよう」

「ッ!?」


 上空を見上げると……そこにいたのは一体の巨大な双頭竜と、それに騎乗する、首無しの騎士。

 最後の四天王。


 首無しの竜騎士、虚頚(きょけい)のデュラゴン。


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