四十七万 リザールト
「……」
リサは、防壁の一室で目を覚ました。
そういえば、昨日はほぼ徹夜で作業していた。
そこに銃の紛失という心労が加わって、いつの間にか寝てしまっていたらしい。
最後の記憶にいたヴァルの姿は見えない。
彼は彼で、銃を出回らせないために動いているのだろう。
「私も動き出すとしようか」
思考を巡らせながら部屋を出る。
すると、通路の奥からヴァルとミナの話し声が聞こえてきた。
「腕の良い【結界師】貸してくれない?」
「いいけど……何に使うの?」
「DEATH・WALKERが何故か蘇生してた。なんとか氷付けにしたけど、いつ動き出すか分からないから封印しときたい。本当は……聖女に滅して貰いたいんだけど、アイツは負傷者の治療で忙しいから」
「なるほど」
……寝ていた間に何があったのだろうか。
話の筋が全く分からない。
「じゃあ、後の処理は任せていいか?」
「どうぞ任せて下さい」
「頼んだぞ」
会話が終わったのか、声は途切れて、片方の足音がこちらに向かってくる。
現状を知るために、リサはヴァルに話しかけにいった。
「お、リサ。よかった、探す手間が省けた」
「やあ。現状はどうなっているんだい?」
「この通りだ」
ヴァルはポケットに手を入れ……幾つかの金属片を差し出した。
「これは……銃の引き金?」
「持って行かれたヤツのな。一個足りないけど、それもDEATH・WALKERの氷の中に確保してある」
「……え?」
幻惑のような言葉に、思わず聞き返してしまった。
だが、リサに手渡された引き金が、それを現実だと確信させる。
「……本当に、本当に銃を全て――」
「回収とはいかなかったけど、破壊はしてきたよ。疑うなら、ヘッグに聞いてくれてもいい」
「……」
これで、銃が広がることは無い。
それが、戦争で使われることも……人を殺すことも。
いつの間にか、頬に涙が流れていた。
人前で何度も泣いてしまうことを恥ずかしく思い、白衣の袖で涙を拭う。
「……私たちは、最悪の兵器を作った罪過を、背負わなくていいんだね」
「ああ、そうだよ」
感極まって号泣してしまったリサを前に、ヴァルは気まずそうに目を背け……突然、リサを持ち上げた。
「失礼」
「え?」
「見て欲しい場所があるんだ」
金は無いのか、素のままの力でリサを抱えて、防壁の階段を登っていく。
「重たい……お前、何を持ち歩いてんだよ」
「女性に重量の話をするな」
「はいはい」
軽口を叩きながら、階段を登り終え……防壁の頂上に着いた。
丁度夕暮れ時なこともあり、美しい自然の景色が広がっている。
「……戦争の血が無かったら、もっと綺麗だっただろうにね」
「見て欲しいのはそっちじゃない。こっちだ」
ヴァルは、反対方向の……街の方をさした。
目に移ったのは、活気あるノスバットの様子。
人々は、街の近くで戦ったせいで傷ついた建物の、修復をしていた。
「こっちに木材持ってきてー!」
「ちょっと待て、今持って行く」
「そろそろご飯ができますよ」
「おう、楽しみにしてるぞ」
まだ戦争が終わってから半日も経っておらず、日常が戻ったとは言い難いが、街には間違いなく活気が、笑顔があった。
「……」
「胸を張れよ。この光景を守れたのは、間違いなくお前の決断と、行動のおかげだ」
「そうかい」
「……今回は、守れたな」
「……うん」
一際大きな風が吹き、彼女の白衣が風に靡いた。
一応書いておくと、現実で銃を作った人にとやかく言うつもりはありません。
そもそも誰が作ったとかではなく、歴史の流れとして少しずつ性能が上がっていったものだし。
リサが苦しんでいるのは、平和な池に外来種を持ち込んだとか、そういう意味なので。
これで第三章は終了です。
ブックマーク★★★★★感想よろしくね。多分、更新頻度上がるよ。
次は遂に最終章。この物語の結末は?




