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勇者パーティを追放された【費消士】、商人と組んで最強に至る  作者: カレーアイス
第三章 ノスバット防衛線
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四十二万 It's my guilty.

 四天王、海淵のフィクロストと死法のDEATH・WALKERは没した。

 総大将である二体を失った魔王軍の指揮は急激に下落し、そこにリサの隠し玉、超巨大爆弾が投下される。


ドガァン!


 威力はそこまででもない、見掛け倒しのものだったが、ガタガタになった魔王軍の心を折るには十分。

 ミナのせいで指揮官が消えていた軍は、散り散りになった。


「余裕がある奴は追撃、ただし、魔王領には入るな。少しでも負傷している奴は、動けないのを連れて戻れ」

「イエッサー」


 まだ戦闘は続くが、大勢は決した。


「この戦い、俺達の勝ちだ」





「やったよ! 勝ったよヴァル君!」

「苦しい苦しい!」


 容赦なく身体を締め付けるミナに抗議する。


 ヴァルはDEATH・WALKERを倒した後、ミナの護衛に回っていた。

 巨大大砲に敵を近づかせない役割だ。

 実際はここまで来れる魔物はおらず、護衛は必要なかったのだが。


「いやぁ、勝てるか不安だったけど、何とかなりましたよ」

「……まだ終わってないだろ。負傷兵の治療と、戦後処理と――」

「そうだね、そうよね。じゃ、行こっか」


 山を降りて、防衛拠点にもなっている城壁を目指す。

 舗装されていない道を、大柄なミナが通るには手こずってしまい、少し時間がかかった。



「じゃ、私は色々とやる事があるから」

「ああ。頑張れよ」


 城壁の近くでミナと別れ、ヴァルは負傷兵が雑魚寝している場所に向かう。

 他人に金回復は使えないが、包帯を巻くとか、その程度のことはできるハズ――


 そう考えて、城壁に裏口から入った時。

 

「ハァ、ハァ――!」

「リサ?」


 リサが、倒れているのを見つけた。

 劇薬でも飲んだかのように、苦しそうに浅い呼吸を繰り返している。


「どうした!? 大丈夫か!?」

「ハア、ハァ!」

「……過呼吸か!」


 戦争の被害を目にして、過呼吸を起こしてしまったらしい。

 ヴァルにはどうしていいか分からなかったが、とりあえず安心できるように、背中をさすってみる。


 少しすると、彼女は落ち着いたらしく、『ありがとう』と言ってポケットから出したハンカチで、口元を拭った。

 とはいえ、まだ万全と言える状態ではないリサのため、フラフラとした彼女を支え、適当な空いている部屋に入れ、椅子に座らせる。


 今の彼女の状態は、異常だ。

 錯乱する彼女に、水を出して落ち着くよう促す。


「大丈夫か?」

「ああ……お陰でね」

「何があった?」

「……銃が足りない。誰かに(パク)られた」

「マジか!」


 志願兵の誰かが、リサが作った銃を持ち去っていった。

 できれば、そんなことをする奴はいないと思いたかったが、数千人もいればそういう奴もいる。


「手がかりは?」

「幾つかあるけど……何せ八丁も持っていかれたから、全部回収するのは難しい」


「……まだフィクロストの死海は残っているだろ? この街の中だけなら――」

「希望的観測はやめろ。あの類の魔法は、術者が死んだら消える。もう街の出入りは自由だ」

「それなら……『超大金で買い取ります』って触れ込むとか」

「間抜けは捕まるかもしれないが、裏ルートの取引を望む可能性も高い。全ては回収しきれないだろう。……一丁も出回らせてはいけないんだ」


 リサは『それくらいはもう考えている』とばかりに、深い溜息をついた。


 それからも、ヴァルは考えを巡らせるが、名案は思いつかない。

 『俺が責任をもって、全部回収する』とは何だったのか。

 その後も思考は止めなかったが、案は思い浮かばず……代わりに、一つの疑問だけが残った。


「どうして、お前はそんなに銃を持って行かれるのを嫌うんだ?」

「……私たちは共犯者となる身だ。教えておこう」


 説明好きの血が騒いだか、彼女は重苦しい声ながらも、解説を始めた。


「前提として、銃の量産はそこまで難しくない。高位の錬金術師なら、半年ほどあれば仕組みを理解できるだろう」

「……それが、どうしていけないんだ?」


 銃が量産され、簡単に入手できるようになる。

 今回のように、魔物との戦争があっても、銃があればその勝率を大幅に上げられる。

 狩りの難度も減り、人間の生存率は全体的に上がるだろう。

 ヴァルとしては良いことずくめに思えるが――リサはその意見を一蹴した。


「……頭の中お花畑か? 君は夢見るシンデレラか?」

「ボロクソ言うじゃん……間違ってはないだろ?」

「確かに正しい。しかし、メリットばかりに目を向け過ぎだ。デメリットも直視しようか」

「デメリット……戦闘職の人に失業者が出るとか?」

「……この症状は、善人論者か。君に任せていると、いつまでも答えは出なそうだ」


 リサは、深い溜息をついて、解説を続ける。


「君の言った通り、銃があれば楽に魔物との戦争に勝てるだろう。だが、魔物との戦争が終わったら、次は何が始まると思う?」

「……叙勲式?」

「……間違いではないけれど、そういうことではないよ。始まるのは、人間同士の戦争だ」

「ッ!」


 確かに、昔実家のアスター家で聞いたことがある気がする。

 魔物との戦争が終わったら、人間同士の戦争が始まる。

 魔王と勇者の戦争である、人魔大戦で力を結集させやすいよう、人類の最高権力者は国王に決定されている。

 しかし、領主としての貴族は存在しており、中には王都より栄えていると言われる都市もある。

 土地、利権、財宝……それらを巡って、人は争い合う。


「……」

「人同士の戦争はいずれ絶対に始まる。さて、その時に銃があったら、どうなる?」

「それは――」


 人同士の戦争は、陣営の戦闘称号のみで行われている。

 軍と軍の戦いで全ては決し、一般市民がそれに関わることはほとんどない。

 なぜなら、一般人を戦線に投入しても、プロ相手には時間稼ぎにもならず、そのくらいなら兵站を作らせた方が有益だから。


 だが、銃があるとどうなるか。

 『誰でも戦える』という利点は、言い換えれば『誰でも戦争に出られる』という意味でもある。

 プロだけだった戦争は、ほぼ総力戦へと変化し。

 戦争に駆り出される人数は爆発的に増加し……その分、死者は増える。


 銃が出回ことにより、多くの人が死ぬ。



「……だから、私は銃を他人に持たせたくは無かった」

「……すまん」

「いいよ。最終的に決断したのは私だ。遠くない未来、銃は最も人を殺した武器になる。この大罪は、決断を下した私と、それを促した君の、半々で背負って行こうじゃないか」


 改めて言われると、自分の犯した罪に、眩暈がしてくる。


「お前は、そこまで考えて……」

「いや、考えたのではない。知っていたんだ(・・・・・・・)

「……どういうことだ?」

「……たまには話そうか」


 彼女は気まぐれだとでも言いたげだったが。

 実際は、今までため込んだものを吐き出すように、


「私は、転生者という奴だ」


 リサが転生者と分かってた、勘のいい人はグッドボタン。

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