三十七万 超スーパーDX弓
パン!
乾いた銃声が鳴り、壁の一部がへこんだ。
「凄いね。これが、ヴァル君の心当たり?」
「ああ。AK‐48って言うらしい」
とりあえず、出来上がった銃一号をミナに見せる。
今回作る銃は、大量生産がしやすく、遠、中、近距離の全てである程度のパフォーマンスを発揮できるアサルトライフル、AK‐48。
「まあ簡単に言えば、超スーパーDX弓だ」
「簡単に言ったね」
「一番の違いは、誰にでもほぼ同じ成果を出せることだ。少量の魔力は必要だけど、ほぼ誤差みたいなものだし」
「なるほどなるほど。これを、志願兵に持たせると」
「そういうこった」
ミナは銃をあちらこちらに振り回し、数回引き金を引く。
もの珍しそうにしばらく眺めていたが『私は慣れた弓の方がいいかな』と言って、ヴァルに銃を返した。
「誰にでもとは言ったけど、扱いに癖がある。訓練するなら早い方がいい」
「そうだね。志願者を餞別するように言っておくよ。本格的に訓練を始めるのは、明日からになりそうだけど、間に合いそう?」
「多分」
明日からとなると、訓練期間は二日。
十分ではないが、やるしかない。
「三日でどれくらい作れそう?」
「分からない。……マジで分からない」
この銃は、『ヘッグが部品を作り、リサがそれを組み立てる』という行程でできているのだが……ヘッグが不良品を作る。
一ミリもズレてはいけない精密な作業とはいえ、精巧なものを作れる確率は三割ほど。
さらに彼女の散漫な集中力も合わさり、最初は一時間に五丁作れれば良い方だった。
ただ、慣れてきたのか、現在は一時間に安定して六丁は作れるようになっている。
「これから慣れてもっと早くなるかもしれないし、急に飽きるかもしれない。……最終的に何丁になるかは、神のみぞ知る」
「そっかぁ……。うちの鍛冶師に手伝わせようか?」
「いや――企業秘密だから、作り方は教えられない。それだけは了承してくれ」
「……オッケー」
ミナは少し不満そうだったが、ヴァルの気迫に押されたのか、了承してくれた。
領民の命が懸かっているのだ。彼女が必死になるのも分かる。
しかし、これだけは譲れない。
これでも、かなり無理を言っているのだ。
◇
次の日。魔王軍の侵攻まであと二日。
早朝から、ノスバットの志願兵が集められた。
その数、約五千人。これでも、かなり選抜された方らしい。
「……」
志願兵の訓練を任されたヴァルは、その光景に歓喜を覚え。
全員の姿が見えるように、簡単な土魔法を強化して、高台を作り出した。
ゴゴゴゴゴゴゴ
土が天高くそびえ立ち、その頂点にいるヴァルに全ての視線が集まった。
何か始まるのかと、ざわついていた場が静まり返る。
丁度いいと、一万で喉を強化し、人の海に言葉を投げた。
『あ、あ。……自分の街を守ろうと、立ち上がってくれた誇り高き志願兵の諸君』
思ったよりずっと大きい声が出た。
きっと、全員に届いている。少し緊張してきたが、言うことは変わらない。
『この戦争、勝率は高くて四割といったところだ。それでも、お前たちを戦えるか?』
「当たり前だ!」
「どうせ戦わなくても死ぬ」
「それなら、戦って散ることを選ぶ!」
さすがノスバット市民というべきか。遥か上空まで、その闘志は届いた。
ヴァルはニヤリと笑い、
『その意志、受け取った! ならば、無力なお前たちに、女神様からの贈り物を授けよう』
口角を上げながら、指で天を指す。
上空には、偵察のためにフィクロストが放ったと思われる、巨大な魚が泳いでいた。
計算通り。
『よく見てろ』
〈命中補正〉と〈武器強化〉に二万ずつ掛け、手持ちのAK-48で上空の魚を狙う。
奴は、上空千メートルくらいか。これなら、十分射程範囲だ。
パン!
銃声が鳴り……魚が、段々と大きくなる。
「違う! アイツ、落ちて来てる!」
数秒後。巨魚は五千の兵の真っ只中に墜落した。
あのサイズなら、Cランクくらいか。
「す、すげぇ。どうやったんだ!?」
『ちょっと狙いを合わせて、引き金を引いただけだ。少し訓練すれば、お前たちでもほぼ同じことができる。戦争までの二日、励めよ!』
「「「「おお!」」」」
決起の怒号が響き、集会は終わった。
ノスバット近辺の森中。
普段ならば木鳴や鳥の声に満ちるであろうその場所は、
ダダダダダダダ! ダダダダダダダ!
銃声に満ち溢れていた。
教官でもあるヴァルは、喉を強化したまま声を張り上げる。
『銃弾にも限りがある。無駄打ちするな。銃声と反動に慣れたら、次の奴に代わってやれ』
「はい!」
――的として、印を付けた木を見る。
弾痕は散らばっており、命中率は決して高いとは言えない。
本番の相手は密集した魔物の軍隊だ。適当に撃っていても、ある程度は当たるだろう。
だが、狙った所に当たるに越したことはない。
『本番で銃を持てるのは、命中率が高い二千人だけだ。自らの手で街を守りたいなら、命中率を上げろ』
「はい!」
……どこかヴァルのに従順過ぎるのが、どうにも不気味な気がしたが、やる気があると好意的に見て、兵を鍛え続けた。




