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勇者パーティを追放された【費消士】、商人と組んで最強に至る  作者: カレーアイス
第三章 ノスバット防衛線
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三十五万 死法のDEATH・WALKER

 街から少し離れた丘の上。

 ノスバットに滞在していた冒険者たちは、街に一匹も魔物が入らないように、前の軍を突破してきた奴を殲滅する役割を担っていた。


 まだ戦闘は始まっていない。

 味方の軍の方はギリギリ視界に入るが、相手の軍の方は遠すぎて詳細が分からない。


「どんな魔物が相手か見ておきたいんだけどな」

「そんなあなたに、双眼鏡~」


 リサが、二つの筒が連結した形の道具を取り出した。

 言われた通りに覗き込んでみると……視界は狭くなるが、遠くの様子がよく見える。

 相手の魔物は……リザードマン、ポイゾンフロッグ、ワ・カメ、天空クラゲなどなど。

 魚の四天王、フィクロストの軍だからか、半水棲モンスターが多い気がする。

 そして、その上空には、宙に浮かぶ水の中を泳ぐ、蛍光色の巨大魚。


「あれがフィクロストか……不気味な奴」


 数は、二万くらいか。

 軍の方は三万ほどいるが、単体では魔物の方が強いと言われているので、どちらが有利かはまだ分からない。


「ヒリック達が、フィクロストを倒せるかが鍵になりそうだ」

「そうこう言っているうちに、始まるよ」


ヒュン! ヒュヒュヒュン! ヒュヒュヒュヒュヒュン!


 人軍の弓兵が弓を引き、雨のような矢が降り注ぐ。

 スキルも乗った矢が魔物の大軍を襲うが、防御力が高いワ・カメなどが盾となり、大した損害にはならない。

 逆にポイゾンフロッグが毒液を吐き、兵の一部が毒状態となる。

 しかし、


「〈聖女の陽光〉」


 【聖女】セインが、それを全て治した。


 こうして、互いに大きな被害は出ないまま、前哨戦は終わり。本格的にぶつかる刻が訪れた。


「うおおおおおおおおおああああああおおおおおおおお!」

「リザ!」

「ヒュロロロロロ!」


ガァン


 すぐに巨大な戦闘音が鳴り響き……土煙で、後方からは何も見えなくなった。

 入り乱れ、食い乱れ、酷い乱戦状態になっている。


「……戦争って、こういうものなのか?」

「さあ? それは私にも分からないね。それより、そろそろ戦闘態勢を整えた方が良いよ」

「ちょっと早くね?」


 まだこちらに走って来る魔物どころか、軍を突破したものもいない。

 しかし、


「見ていたまえ」


 リサはリュックから……


「……何それ」

「ロケットランチャーという奴さ」


ドッ! ヒュー


 煙を上げながら、弾頭が天空へと昇る。

 斜方投射かと思ったが、その弾頭は落ちることなく、上へ上へと登り続け、


バシャーン


 水中(・・)で、爆発した。

 どこからか現れた水が弾け散り……同時に、魔物も出現する。


「は!?」

「さてさて冒険者のみなさん、お仕事の時間だ!」


 どうやら、空中にはフィクロストが操る水の塊があり、そこに多くの魔物を潜ませていたらしい。

 水で包んで戦力を輸送する。そうして砦を空中から攻め落としたのだ。


「え、魔物が空中にいたら気付くだろ?」

「光の屈折というやつさ。今日は雲一つない晴天だからね、さぞ隠しやすかったことだろう。だが、注視すれば分かる」


ダダダダダダダ!


 言いながら、自由落下中の魔物を次々と銃で撃ち抜いていく。

 しかも水の中では、なるべく見つからないように密集していたらしく……ほとんどはロケットランチャーの爆発に巻き込まれており。

 生きて地上に降りれたのは、ほんの一握りだけだった。


「討伐……沢山だ。報酬が楽しみだね」


 こうして、フィクロストの策略は失敗に終わった。



『空挺隊はやられたか。同じ手を使い過ぎた』


 呟きながら、フィクロストは一歩退いた視点から戦場を見渡す。

 状況的には、ほぼ互角といったところか。

 予備選力はあるが、あちらもまだ冒険者どもが本格参戦していない。


『……そろそろ我も参戦するとしよう』


 フィクロストの眼前で、水が圧縮されていく。

 そのまま、人類軍の中央に水を撃ち込もうとし――


「ウォーターストリ――」

「させるか!〈電磁雷〉」


バチバチバチ!


 フィクロストを包む水に大量の電気が流し込まれる。

 体中に電気が駆け巡り、圧縮された水は霧散した。


「やっぱり電気は効くみたいだね。淡水魚!」

『貴様ら……』


 電気魔法を放ったのは、【賢者】のウィズマだった。

 回り込んできたらしい。遅れて、ヒリック、セイン、ラティの三人現れる。


「前回は私たちも感電するから電気魔法は使えなかったけど、今なら使える」

「作戦は決まったな。俺とラティで時間を稼いで、ウィズマの電気魔法で削りきる」

「愛盾の怨みー!」

「話聞いてたか!? 時間稼ぎにシフトしろっつってんだよ!」


 考え無しに突撃しようとしたラティをヒリックが叩いて止めた。

 不服そうに頬を膨らませながら、急ごしらえの盾と剣を構える。


『〈霊水〉』


 フィクロストの水が揺れ動き、ヒリックとラティを水の中に引きずり込もうと、数個に分岐して這いまわる。

 しかし、セインに強化された二人は簡単に捕まらず。

 草原を駆け回って、水を避け続ける。

 その間に、ウィズマは詠唱を終えた。


「食らえ! 〈エレクティア・ノヴァ〉!」


 高密度の電雷の珠。

 チカチカと黄橙に輝き――バチィ!

 光速の電球がフィクロストの体を貫いた。


『グゥ!』

「あと二、三発ってところかな。天まで泳ぐ準備はできた?」

『ほざけ!〈アクアエッジ〉』


ザザァ!


 水の高圧カッターが幾つも伸び――試しに防ごうとしたラティの盾が、一瞬で真っ二つになった。

 そこらの武器屋で買った盾ではあるが、強度は確かなものだ。

 直撃すれば、ヒリック達でもただでは済まない。


「やっば!」

「退避!〈アーツブレード〉」


 ヒリックは、足に不安が残るラティを庇いながら、強化した聖剣でレーザーのような水刃を切り抜ける。

 しかし、数本の水刃は、魔法準備中のウィズマに向かっていた。


「セイン!」

「分かってます。〈守護教会〉」


 光の教会が立ち上がり……少し傷ついただけで、水刃を退けた。

 そうこうしているうちに、ウィズマの魔法が上がる。


「雷星よ、其の電雷を以て我が敵を穿ち貫け。〈エレクティア・ノヴァ〉!」

『クッ』


 恒星のような電雷の珠が、フィクロストに向けられる。

 奴はなんとか回避しようとしたが、雷の速度からは逃げられない。


 雷珠はバチバチと音を鳴らしながら、フィクロストの頭を貫いた。


『グアアアアアアアアアアアアアアア!』

「水に入らなきゃ、淡水魚なんてその程度なんだよ! ヒリック、止め!」

「おう!」


 聖剣を構えて、果敢に水の中に飛び込んだ。

 かなりダメージを与えているとはいえ、まだ水圧で圧死させられる可能性もあった。

 以前のヒリックならできなかった行動。

 勇気をもって、その聖剣を振りかざし――



「全く、何をしているのか」

「ッ!?」


 悪寒。

 勇者の直感に従って背後に聖剣を回し……その一瞬後、聖剣に衝撃が走り、ヒリックは水の外までふっ飛ばされた。


「ガッ!?」

「ヒリック!?」

「大丈夫ですか!?」

「ああ……」


 勘が当たっていなかったら死んでいたが、なんとか防御が間に合った。

 体勢を整えながら、フィクロストと……ヒリックをふっ飛ばした者に向き直った。


「それでも四天王の一角か?」

『……貴様こそ、勇者を仕留めそこなっているではないか』


 漆黒の外套に、骸骨頭。

 巨大な死神鎌が、首を求める。


「あれは、まさか……」

「四天王、死法のDEATH(デス)WALKER(ウォーカー)!」

「紹介どうも」


 水から出た不気味な死神が鎌を構え、フィクロストも体勢を立て直す。

 四天王二体はさすがに不味い。


「……よし、逃げるぞ」

「そう簡単に逃がすと思うか?」

「ッ!?」


 死神は、いつの間にかそこにいた。狙いは、フィクロスト攻略の要、ウィズマ。

 鎌が彼女の首を狩ろうと振るわれ、


「〈聖女の儷光〉」

「〈聖撃〉!」


 セインの聖なる光で、死神の動きが一瞬止まり、そこにラティが聖属性の攻撃を叩き込んだ。

 勇者パーティには聖属性の攻撃をできる者が多い。

 攻撃面では余裕がある。問題は、あの神出鬼没さだ。

 一対一ならどうにかなるが、他にも敵がいるととんでもない脅威になる。


「……やっば」


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