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勇者パーティを追放された【費消士】、商人と組んで最強に至る  作者: カレーアイス
第三章 ノスバット防衛線
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三十三万 兄と弟

 街に帰って来たというヒリックら勇者パーティを見に行く。

 四天王フィクロストの討伐に行っていたらしいが……街の反応的に、その結果が芳しくないものであることは分かる。


(……まさか、誰か死んだのか?)


「先行っとくぞ」

「ちょっと!」


 いけ好かない奴らではあったが、数年間旅した仲だ。死んでほしくない。

 何だか本当に気になってきて、走るスピードを上げた。


 街には同じ思いの人の塊がいたので、見やすいように近くの家の矢ねに飛び乗る。

 彼らは、本当に散々な有様だった。


 ヴァルの入れ替わりに入ったらしい聖騎士が、ぐったりとしたウィズマを抱え。

 セインは聖杖を杖として使い。

 ヒリックは……何だか闘志を失っている。

 何より、なんだか全員生臭い。


 観衆からはガッカリとした声が聞こえてきたが、一行はそれに反応しようともしない。


「……とりあえず、全員無事で良かった」


 フィクロストに負けてきたというところか。

 あの有様なら、逃げられただけでも上々だろう。


「……」


 問題は、アイツらが負けたフィクロストという奴だ。

 性格的には三人とも好きではないが、実力は誰よりも分かっているつもりだ。

 アイツらが負ける相手なんて、考えたくない。


「幾ら必要になるか……俺にどうにかできる問題なのか」


 四天王や魔王は勇者に任せて、街の防衛を手伝うくらいだと思っていたが、そうもいかないかもしれない。


「さて、どうするか……どうなるか」


 空を眺めてこれからの苦難を思い浮かべる。

 しかしその時。ヒリックからの視線が向けられた気がした。


「ヴァル?」

「あ、やべ」


 追放された身として、再会するのは気まずいので、家の屋根から降り、逃亡を開始した。


「勇者さま!?」

「急にどうしたんですか!?」


ダッダッダ


 背後から驚くような声がしてきて……ヒリックが追って来る。


「待て、待ってくれ!」

「……」


 ……いつもと調子が違う。

 討伐失敗の八つ当たりでもされるかと思ったが、それにしては懇願するような言い方だ。

 勇者の方がスピードが速く、逃げるために金を使うのもアホらしいので、話を聞いてみることにした。


 人気のない適当な場所で立ち止まり……兄と対話する覚悟を決める。



「……久しぶりだな。兄さん」

「あぁ」

「お前らが負けるなんて、何があったんだよ」

「……あっちに地の利があった。魚の魔物相手に水中で戦うべきじゃない」

「そりゃそうだろ……」


 話をよく聞くと、どうやら今回のは偵察のようなものだったらしい。

 勿論本気で戦いはしたが、どこで退くかを常に考慮に入れていた。

 実際には簡単に撤退することはできなかったが、新メンバーのラティが機転を効かせて、なんとか撤退してきたらしい。


「なるほど、大変だったんだな。……それで、そんな苦労話をしに、ワザワザ追って来たのか?」

「いや……戻ってきてくれないか、ヴァル」

「え?」


 衝撃の言葉に、一瞬固まる。

 追放したのはヒリック達の方なのに、どういった心境の変化だろうか。


「ムシが良いのは分かってる。だが、人類全体の命運が掛かってるんだ。力を貸してくれ」

「……他に良い奴が見つからないのか?」

「いいや、お前じゃなきゃ、ダメなんだ」


 そう言って、彼は思い出話を始めた。


 旅を始めた当初。勇者の伝統とやらで、メンバーはヴァルとヒリックの二人だけだった。

 当時の彼らには、魔物についての知識が無かったので、実力と不吊り合いの敵と当たることはままあった。

 しかし、そんな時は全て、大金を使ったヴァルがどうにかしていたのだ。

 それによって、ヒリックは甘やかされている状態にあった。

 次第に、命の危機になっても『ヴァルがどうにかするだろう』と思うようになっていた。

 ウィズマやセインと合流してからはそんな事態は減ったが『保険がある』というのは、確実にヒリックから覚悟を奪っていた。


「もう俺はお前がいないと戦えないんだ。……俺の命を、保障してくれ」

「……兄から聞きたくない言葉ナンバーワンだよ」

「頼む!」


 そう言って、彼は初めて弟に頭を下げた。

 ヒリックがこんなことになっているとは。

 だが、甘やかしすぎた責任の一端は、ヴァルにもあるのかもしれない。

 溜息を一つついて気合を入れ……


パシッ


 後頭部に手刀を叩き込んだ。


「ッテ!」

「甘ったれんな! テメェは勇者として世界を救うんだろ! それが弟に頼りきりでどうすんだ!」

「で、でも――」

「でもじゃねえ!俺でも対応できない相手は絶対出る! んな時にテメェがそんなんでどうすんだ!? 命を懸けられないって泣きわめくのか!?」

「……」

「覚悟は魂にでも刻んどけ」


 ヒリックの胸に拳を当て、軽く突く。

 顔を上げた彼の顔は、以前のように引き締まったものになっていた。


「すまん。……ありがとう」

「ったく、弟にこんなこと言わせんな」


 人は簡単には変われないない。

 だが、少しずつ変わる努力はできる。ヒリックは、その一歩を踏み出していた。


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