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勇者パーティを追放された【費消士】、商人と組んで最強に至る  作者: カレーアイス
第三章 ノスバット防衛線
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三十一万 海淵のフィクロスト

 久しぶりの登場なので

 【勇者】ヒリック

 【賢者】ウィズマ

 【聖女】セイン

 【聖騎士】ラティ

 エストトの崩壊が進行している頃。

 勇者一行は四天王の一角、海淵のフィクロストのいる城に攻め入っていた。


 何故か洪水のように足首まで浸されている水にイライラしながら、城を進む。


「あー、面倒ですね」

「仕方ないだろ。そろそろ成果を上げないとだからな」

「ウェルガン・ロボ二号の屑鉄をぶっ壊したばっかじゃん。もう圧力掛けられたの?」


 一行は、数週間前に同じ四天王である鉄の魔物、鋼越(こうえつ)のウェルガン・ロボ二号を討伐したばかりだった。

 苦戦はしたが、そこまで強くもなかったので、今回も大丈夫だと――


「ん! 接敵です! 行きますよー!」

「おい、突っ込むなよ!」


 斥候を担っていたラティが敵を発見し、足元の水を押しのけながら、盾と剣を構えて突っ込んで行った。

 相手は、湿地に生息するリザードマンの集団。


「リザッ!」

「オリャー!」


 トライデントのような形をした槍を左手の盾で受け流し、右手の剣でザックリと切り込んだ。

 しかし、リザードマンは大量にいて、一瞬で囲まれてしまう。


「〈ディフェンス〉」

「〈ファイアランス〉」


 そのカバーとして、セインが防御上昇の支援魔法をよこし、ウィズマが炎魔法を放つ。

 ラティに集中していたリザードマンは炎に焼かれ、防御が上がったラティがダメージを気にせず暴れ出し、


「〈紅錬斬り〉」


 ヒリックが全てを蹴散らした。



 ラティは、剣の血をふき取りながら、


「よーし。結構連携も洗練されてきたんじゃないですか?」

「……そうだな」


 ヒリックは、今でも少し考えてしまう。

 別に、ヴァルでも同じことはできたのではないかと。


「……一応弟だからな」

「何か言った?」

「いや、何でも。早く行こうぜ」

「そうですよ。こんなに水に触れていたら、かぶれてしまいます」


 城の構造的に、もうすぐ主であるフィクロストのいる玉座に着くだろう。

 その証拠に、さっきから魔物の数が増えている。


「フィクロストってどんな奴だと思う?」

「こんな城だから……やっぱり、リザードマンの進化系とか?」

「意外と蛇系の奴だと思います」

「ん、それっぽいのありましたよー」


 そんな会話をしている内に、玉座らしい大扉の前に着いた。

 門前に敵はいない。中に固まっているのだろうか。


「準備はいいですか?」

「おう」

「いいよ」

「どうぞ」

「オープーン!」


ジャバー!


 ラティが扉を開けた瞬間。

 大量の水が流れ出し、四人はその奔流に飲まれた。


「ンン!」

「がぼがぼ!(〈窒息耐性〉!)」


 セインが窒息耐性を付与し、なんとか溺れるのを阻止する。

 ヒリックは感謝しようと、セインの方を見……彼女が四本指を立てていることに気付く。

 タイムリミットは四分。


「……」


 撤退も考えたが、せめてフィクロストの姿を見ておきたい。

 扉の中を指さして継続の意志を示し、三人もそれに頷いた。

 フィクロストもこちらを誘っているのか、水の流れは扉側に向かっている。

 ラティを先頭に、ヒリックが続き、最後にウィズマとセインが並び、一行は玉座に突入した。


 玉座は円柱状のかなり広い空間で、フィクロストはその中心に佇んでいた。

 その正体は、魚。

 足は無く、完全に水の中に特化していて、蛍光に淡く光り輝いている。

 額には鋭利な一角。

 そして、サメのように鋭い牙。


「ヴァアアアアアア!」


 その声は水中にハッキリと轟いた。


 異形の姿に少し戸惑ったが、やることは変わらない。


「がぼがぼがぼ!」


 ラティが口から泡を出し、フィクロストを引き付ける。

 奴は一転してから彼女に標準を定め、角を先端に突っ込んで行った。


ギュン!


 矢のような、凄まじい速度。盾に綺麗な穴が空く。

 しかし、彼女はしっかりと反応し、穴が空いた盾で攻撃を逸らして、肩を少し掠めるのみにとどめた。


「ガッ」

「〈光の奔燗(ほうかん)〉」

「〈聖剣〉!」


 そこに、ウィズマが光魔法のレーザーを放ち、ヒリックが横腹に切り込む。

 セインが無言でかけた多重の強化もあってか、その刃はすんなり入り、フィクロストの腹に穴をあける。

 だが、奴はあまり気にする様子もなく、


「ヴゥウウウ」

「がぼ!?」


 角が刺さった盾を強引に奪い取り、こちらから距離をとりながら、それをバリバリと噛み砕いた。

 愛盾が粉々になっていく様子を見て、ラティが水の中でも分かるくらいの泣き顔を浮かべる。


「がーぼがぼ!」

「……!」


 空気を出し過ぎだと、セインがラティの後頭部を殴った。

 残り三分。段々苦しくなってきたという実感が、三分という時間に確信を持たせる。

 彼女の性格からして、三分というのは十分に活動できるタイムリミットだろう。


 撤退経路も考えながら、次の攻撃に備える。

 盾を砕いたことだし、また突っ込んでくるかと思いきや、


「ヴァアアアアアア!」

「ッ!」


 奴の周りの水が流れを変え、棘を形作った。

 見えにくいが、確かに殺意が詰まっている。


「ヴッ!」

「がぼ!」


 かなりの速度だったが、ヒリックとラティが協力してそれを弾いた。

 盾が無いラティは左側の防御が甘くなっており、棘の一つが腹に刺さるが、瞬時にセインがそれを治す。


 そのまま、特に有効打を与えられないまま、時間のみが過ぎていった。

 やはり、水の中だと動きにくいか。

 何より、連携が取れないのが辛い。

 なんとか攻め手を考えていると――声が、直接頭の中に語り掛けてきた。


『二号の奴がやられたというから、どんな奴かと思いきや、その程度か』

「……」


 魔王軍の四天王なのだ。擬人化で人並みの思考力を持っていたとしても不思議ではない。


『だが奴は四天王の中でも最弱。アレで四天王の尺度を計られても困る』

「がぼがぼ(うっせえ。拮抗してんだろ)」


 適当に言っただけだが、伝わったらしく――


『それはどうかな?』

「ガッ」


 圧力。

 大きな水圧が、ヒリック達を襲う。


(どうして急に……)


 見回すと、ウィズマがとても苦しそうにしている。

 そういえば、彼女は途中から攻撃に参加していなかった。

 どうやら、フィクロストが強める水圧に対抗してくれていたらしい。

 水のせいでヒリック達に伝えることもできず、一人で必死に食らいついていたが、とうとうその均衡が破れた。


 眩暈がする。

 鼻や耳から血が吹き出しそうになり、目玉が飛び出しそうな感覚に襲われる。


 その時。ヒリックは無意識にヴァルを探した。

 そういえば、こういう時は何だかんだでヴァルが何とかしてくれたのだ。


 緊急脱出装置が無いことに気付き――初めて死を身近に感じる。


(嫌だ、死にたくない!)


 今までは、言ってみればゲーム感覚だったのだ。

 心のどこかで『大金を払えば、最悪ヴァルが何とかしてくれる』という思いがあった。

 だが、そのヴァルはもういない。

 死を回避することができない。

 命の保障がない。

 恐慌で動けなくなり、その間にフィクロストはまた突撃しようと狙いを定める。


 そんな中、一人だけ動く者がいた。


「〈聖撃〉!」


 ラティが、思いっきり壁を破壊した。


バシャー!


 高くなった水圧によって、水が勢いよく外に流れ出す。

 大きな水の流れから、突撃の照準はズレ、四人は部屋の外に投げ出された。

 そのまま、水に乗せられて城の中を流れる。

 要所要所でラティが壁を壊し、一行は外の荒野に出た。


「ゲホッ、ゲホッ!」

「撤退! 撤退!」


 魔力切れで昏倒しそうなウィズマをラティが背負い、四人は人類領へと逃げて行った。



『……逃がさんぞ』

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