三十万 終幕 新たなる旅立ち
「全部終わった。仇は取ったわ」
「……」
マーチェは両親の墓の前で独り語っていた。
一ヶ月ほど前。
ヴァルはドーシャを捕え、騎士団に突き出した。
奴の証言により、虚英団のアジトが発覚し、騎士団がそこを強襲。
『ドーシャが捕まっている』とは夢にも思わなかった虚英団は、アジトを変更しておらず、彼らは一斉摘発された。
「奴らの罪は白日の元に晒された。まだ裁判は始まっとらんけど、多分全員死刑や」
また、エストト商会の監査が始まり……ナートが見た骸骨などの、言い逃れのできない証拠が幾つも姿を現し、ドーシャの証言もあって、エストト商会の会長や上層部は逮捕された。
さらに大量の脱税まで発覚し――超過分の金額を払いきれず、商会の解体が決定した。
エストトの支店は全て潰れそうになり、多くの従業員が路頭に迷うところだったが、それを再び雇う者がいた。
マーチェ・エルシオンだ。
彼女は虚英団を相手に籠城している時も、忙しそうに書類仕事をしていたが、それはすぐ未来に潰れる支店を乗っとるための下準備だった。
他にも乗っ取りを狙う商会は沢山あったが、潰れるのを確信して下準備していたエルシオン商会には勝てず。
元エストトの支店は、ほぼ全てエルシオン商会の旗下に入った。
「今はまだヒステンに総資産は負けてるけど、一年もしんうちに追い越すわ。……アンタの作った商会が、世界一のもんになるんや」
表情も見えない、声も聞こえない。
けれど、なんとなく。彼らは喜んでいる気がした。
ピチョ
そのうち、薄黒い雲から、静かな雨が降り始めた。
「濡れるぞ」
「ん、ありがと。じゃあ、もう行くわ」
骸骨を埋めるために連れてきたヴァルの傘に入り、墓が並ぶ墓地を離れた。
「ナートも来れば良かったのにな」
「もう、十分語らったらしい。元から週一でかよっとったからな」
「そうか」
同じ傘に入っている分、いつもよりも距離が近い。
いつもより心臓の鼓動が早くなるのを感じながら。
静寂が気まずく、会話をすることにした。
「……悪いな、カリバーンを使わせて」
「別にいいよ。俺の力不足が招いたことだ」
今ヴァルの腰に刺さっているのは、ヘッグに作ってもらった鉄剣と、カリバーンの黄金鞘のみ。
カリバーンの本体は、ドーシャとの戦いで使ってしまった。
【費消士】は金だけでなく、物も力に変換できるらしい。
物を使った場合、そのパワーはヴァルの価値観に依存する。
例えば、数億の絵画とヘッグの落書きがあるとする。
だが、ヴァルに絵画の良し悪しは分からないため、娘のようなヘッグの落書きの方を大切に思うかもしれない。
そうすると、消費した時の力は数億の絵画よりヘッグの落書きの方が高くなる。
まあ、パワーが安定せず、使ってみるまでヴァルにもどうなるか分からないため、これからも基本は金を使うことになる。
「それより、これからどうする? これ以上、冒険者としえ宣伝しても意味ないと思うけど」
「せやなぁ」
「専属護衛人にでもなるか?」
「いや、やってもらいたいことがあるんや」
彼女は、ニヤリと笑い、
「ウチらはこれから覇権を握る。けど、魔王に人類が負けて、人類領が更地にされたら、その権威も無くなってまうんや」
「……まさか!」
「魔王、倒してきて♡」
無理難題を押し付けてきた。
これで第二章は終わりです。
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……三十話くらいで終わるつもりだったんだけどなぁ。
まだまだ続くよ☆




