外伝1-4『外食』
「ず、ずびばせん、ご主人様、お嬢様。ゲホッゲホッ!1日休みをいただいたのにまだ絶不調みだいで……」
鼻声で寒気のせいなのかプルプルと震えながらパティが謝る。
「いや、こっちも看病できなくて悪いな」
「いえいえ、恐れ多い。ご主人様が看病なんてどても気持ち悪いでずよ」
風邪のせいなのか、本音がだだ漏れである。
ちなみに看病は出来なかったが、ダナーが調合した薬を適当に飲ませた。
さすがはダナーさん、こういうことは得意のようである。
▽
昨日のあの惨事を繰り返さないために軽く果物を剥いて食べてから城下町に向かった。
いつものように2時間かけて王城に入り、検問的な取締りを受けて城下町に入る。
「久しぶりにここに着たが……ぶっちゃけ、この辺ってどんな店があるのか知らないんだよな」
「だねぇ、観光というのも悪くないけど、まず腹ごしらえしようよ」
「そうだが……ダナー、定食屋を探す便利機能ってあるか?」
「そんな地図アプリみたいなものまではありません。そもそもそのような便利グッズと思われるのは癪なのですが」
「お前の逆鱗ラインが分からんが……頼りにしてるってことなんだよ。例えば、透視能力で室内の状況を調べるとか」
「プライバシーの侵害です」
「……りょ、料理をしている人を探すとか、動作とか熱とかで」
「一般家庭での調理との差を判断するのは私の能力では厳しいです」
「そうか……なかなか難しいんだな」
透視能力とかって空想の世界なら悪用して『ぐへへ』な展開になると思うんだけど、そういう展開ください!お願いします!
いや!それよりも光学迷彩の方を俺にもください!
「大丈夫、今ミコトとダナーがしょうもない話してる間にそこのオバサンにワイロ渡して良いお店を教えてもらったから。金の力って便利だね」
金の力にばかり頼っていたらろくでなしになりそうだが……
もうなってるから手遅れか、ご愁傷様です。
▽
特に何事もなく朝飯を食べ終わった。
まぁ、定食屋でメシを食っただけだからな。
そんな特別なイベントが有っても困る。
その後の午前中は忍とミドリとダナーが町を適当に回ると言うので公園(っぽい所)のベンチでくつろいで日向ぼっこする。
▽
「マスター、気分はどうですか?」
「あ?あぁ……居眠りしていたのか」
「気をつけてくださいよ、追い剥ぎにでも合ったらどうするつもりで?」
「……そこまでの無法地帯とは思えないが……もう昼時か?」
「いえ、夕食の時間です」
「マジで!?」
そういえば空が蒼色から茜色に変わっていた。
「はい、マスターが寝ていることを確認して電磁トラップを仕掛けて放置、ケホン、ゆっくりしてもらったわけです」
今『放置』って言ったよね?確実に言ったよね?
「で?どうするの?お昼は適当に済ませたけど?」
「なんで俺を放置して夕食を食べたんだよ……」
「放置してた方が展開的に面白いかな~と」
「……悪魔め」
「悪魔でいいよ☆」
こいつ、ムカツク。
しかし、昼飯を抜いたせいか、かなり空腹である。
てわけで、夕食はがっつり食べられるモノにしたい。
明日くらいにはパティも復活してくれるだろうが、それでもやはり食べたい。
▽
「いらっしゃいませ~♪あ……あの時の……」
空腹なのになぜかやってきたのはカオルーン公爵が常駐していることで有名(?)なあの酒場である。
俺達の姿を確認した女従業員さんはまるで『ブラックリストの人間がまたやってきたぞ!』と言う警戒態勢になった。ついでに周りのゴロツキ共もこちらを警戒している。
「マスター、何やら敵意を持たれているようですが?」
「気にするな、相手が攻撃してきたらやり返せ、こちらからは決して手を出すな。良いか?『後手』だからな?」
「了解、後出しを心掛けます」
「ご、ご注文は?」
「酒と肴と適当な料理を4人前」
「か、かしこまりました……」
以前の、というか俺達の姿を確認するまでの明るい営業スマイルは既に消えている。
居心地悪い……。
「忍、なんでここにしたんだ?」
「え?ここならなんか面白い展開になりそうだから?」
このクズめ!
「おぅおぅ!テメェ、あいつだろ?あの変態放屁女だろ?」
予想通りゴロツキが絡んできた。
カオルーン公爵とのポーカーの時のことをまだ恨まれているのだろうか?
「あら、どちら様で?見るからに残念そうなオツムのクズを記憶するほど私は優しくありませんの」
久々の気持ち悪い外面貴族様モードである。
「あぁ!?殺すぞ!」
ゴロツキのその一言にダナーがキレかけたが片手を挙げて制止させる。
「ゴミクズが貴族である私に手を出すと?不敬罪で処すぞ?ん?処すぞ?」
笑顔で挑発する。こういうのをしている時は心が愉快になるから楽しい♪
「くっ!」
雑魚みたいな捨て台詞を吐いて去っていった。
全く、小者は死ぬまで小者なんだな。
「なるほど、マスターは1人でもそれなりに戦えるのですね」
「まぁな(スタンガンだけだったが)ここで暴れた時はお前は居なかったし、隣に居たのは戦力外の忍だけだし」
「スタンガンだけで……中々興味深いものですね……」
この世界の連中じゃなかったらヤバイが……食事中にする話じゃないな。あんな酷いセクハラ三昧の闘いのことなんて。
「お待たせしました、ワインとカプレーゼです」
ゴロツキが消えてしばらくして酒とサラダがやって来た。
うむ、酒にチーズって合うんだよな。
「おい!テメェ、あの時の小娘だろ!」
さっきとは別のゴロツキ、ゴロツキ(B)が俺達に難癖つけてきた。
……はて?さっきの奴と違ってこっちの奴には見覚えがあるな。
誰だろう?
「この人ってアレじゃない?ディックとか言う最初に気絶した雑魚」
「誰が雑魚だ!」
その雑魚っぽい発言で思い出した。
最初にここに来た時に絡んできた赤のモヒカン野朗か、思い出した思い出した。
「お久しぶり、あなたのせいであの時はとても苦労しましたよ。あんなあっさり気絶する雑魚の分際でお礼参りですか?早漏は帰ってもらえます?」
「ケンカ売ってんだろ?」
その言葉と同時に拳が飛んできたが、ダナーが武術か何かで静かに飛ばす。
「他の客と店に迷惑がかからないようにな」
「承知しております」
と、一瞬の内に気絶させた。
すごいよダナーさん。こういうときは頼りになる。
別にこいつが居なくてもスタンガンがあれば暴漢も怖くは無いのだけどな。
「あの……お客様?」
店員が何やら言い難そうに何かを言いたそうにしていた。
「ん?何か?」
「ここから出て行け!」
その言葉と同時に金を取られて摘み出された。
今日の夕食はカプレーゼ(サラダ)のみ。
おなか空いた……。
▽
「どうもご心配おかけしました。パティことパトリシア・ルーテミリィ・シーザーは今日から仕事に復帰させていただきます。なんなりと命じください」
「口上はどうでも良い!!メシを!!メシを作れ!!メシはまだなのか!!」
「え?い、いきなりどうなされたのですか?」
「黙れ!そんなことはどうでも良いだろ!腹が!!腹が減ったんだよ!!察せよ!!」
外食後の翌日、俺は空腹への抵抗として不貞寝して空腹のまま起きたためヒステリックを起こしている。
辛い……食材と調理器具があるのにマトモな料理を作れない自分が辛い……。
「お嬢様?いったい私が寝込んでいる間に何があったのですか?」
「ま、まぁ……色々?」
「色々って」
「喋る暇があるならさっさとメシを作れよ!!いや、作ってください!お願いします、パティ様!!」
「いや、やりますけど……そこまで本気で頼まれると心情の変化が気になりますよ、ご主人様」
何を言っているんだ?この駄メイドは。
腹が減っているからメシが食べたいんだ!
それ以上の理由が要るか?要るわけがない!!
~数分後~
「はい、アーリオ・オリオ・ペペロンチーノです」
パスタなんてこの屋敷にあったのか?という疑問は無視してアーリオ・オリオ・ペペロンチーノ(一般的にはペペロンチーノと略されるスパゲッティ)を飲んだ。
言い間違いではない、言葉通り飲んだ、咀嚼せずに一気に飲み込んだ。
「美味い!!さすがパティ!!」
「恐縮です」
「マスター、噛まずに飲み込むと体調に悪いかと……」
「やかましい!お前のせいで牛の脳みそを食べさせられたりと酷い目にあったんだ!これくらい多めに見ろ!!」
「の、脳みそ!?」
パティは驚愕している。どうやらこの国でも牛の脳みそを食べる文化はないらしい。
どこで仕入れたのだろうか?この使えそうで使えない少し使える人造人間は。
「本当に一昨日は酷い目に合ったよ、まさか牛の金玉を食べさせられるとは思わなかった」
「き、きんたま!?」
パティはまた驚愕している。どうやらこの国でも(以下少略。
「パティ!おかわりだ!」
「はい、少々お待ちください」
はぁ……こいつは使えないようで使える少し微妙な駄メイドだからなぁ……。
また倒れられても困るので扱いには気をつけよう……。
はぁ……ペペロンチーノ、超うめぇ~~♪
如何だったでしょうか?今回の外伝シリーズは。
これで感想が頂けるならどのように書いていこうかと指針も立てられるのですが感想は基本的に書かれません。
ゆえにいつものように迷走します。
第二部になって元々なかった人気も一層減ったような気がします。
この辺りで、広げた風呂敷を畳んで打ち切りと言うのも視野に入れて連載していこうかなと思います。
では、最後に、こんな駄作を読んでいただいている読者の皆様、いつも感謝しております。




