外伝1-3『夕食』
「こうなったら夜はBBQだ!!バーベキューだ!!ダナー!肉をありったけ買って来い!!」
クソマズいサラダとベーコンエッグを食べたことで俺はもう素人でも上手く作ることが出来るであろうバーベキューと言う結論になった。
焼肉のタレがないのは残念だが、さっきのよりはマシだろう。
「……マスターは来ないのですか?」
は?いったいどういう思考回路ならそうなるのだ?
往復だけで4時間もかかるんだぞ?
店で肉を買えば5時間にもなるだろう。
それなのに俺にもついて来いと?悪魔か!!
「5時間もかかるのにダナーに買って来いと言う辺り、ミコトはクズだね」
忍が何か言っているが無視しておこう。
「とりあえず、俺は行かない。それで何か問題があるのか?」
「いえ、確認しておきたかっただけです。思慮が足りなかったようで申し訳ありません」
素直に謝ってくれたので先ほどのことは許してやろう。
「何様さ」
ご主人様?
▽
ダナーが買い物に行っている間、俺はフライパンで水を温める。
なぜこんなことをしているかと言うと、コンロの温度調整である。
水は100℃で沸騰して液体から気体に状態変化する。
つまり水が沸騰するくらいの温度は100℃と言うわけだ。
ヤカンで水を沸かしたことくらい皆あるだろう。
強火で水を少しの間温めれば『ピィィーー!!』と音を出す。
これをコンロで調節して出せば良いというわけである。
なぜベーコンエッグの時にやらなかったのかって?
それは気づかなかったからさ。
言わせるなよ、恥ずかしいから、自分の無知さに。
▽
約5時間後、ダナーが巨大な赤い血まみれの塊を抱えて帰ってきた。
スプラッターな殺人現場を髣髴させる。
これが暗闇での大男なら間違いなく黒だ、前科持ちだ。
「お待たせしました、このくらいで十分でしょうか?」
「ご苦労様、火加減の調節はもう出来てるから包丁で適当な大きさに切ってからトングでフライパンに焼いてくれ」
「ちょっと待って、フライパンでBBQなの?普通は金網とかじゃないの?」
「別に同じだろ?」
「雰囲気が違うよ!」
「煩い奴だな。ダナー、悪いがこのコンロに会う大きさで尚且つ焼きやすい形の金網って作れるか?」
「難しい注文ですね。が、マスターの期待に応えるのが我々人造人間です」
そう言っていつものように木片から金網を作った。
今回はいつもに比べるとパパっと作った。構造が単純だからだろうか?
「こんな感じですか?」
コンロに金網をセットして試しに軽く焼いてみる。
数分後、良い感じに焼けた肉を塩で食べてみる。
「美味い!」
「ボクも!」
忍が俺に続いて肉を摘んで食べる。
「美味い!」
「喜んでいただけたようで何よりです、では色々焼きますね」
そう言ってダナーが肉と野菜をたくさん焼き始めた。
昼飯が最悪なモノであったため、非常に美味い。
空腹は最高のスパイスとはよく言ったものである。
BBQを食べ初めて数分後、何やら珍妙な部位を焼かれていた。
その部位が十分に焼けていると判断してから食べてみる。
…………ん?なんだ?
この初めての食感と味は?
美味いのだが……未体験の味に戸惑う。
「ダナー、これは何だ?」
「脳みそです」
……………………はぃ?
「ですから、牛の脳みそです」
強烈な吐き気に襲われて庭で嘔吐した。
オェエエエーー!
その後、井戸水で口の中を漱ぐ。
「お、お前は何を言っているんだ?」
脳みそとい部位を食べてしまったという精神的拒絶のせいで嘔吐してしまった俺はダナーになぜ食べさせたかを訊きたかったのだが、混乱していたのか、質問が妙なものであった。
「……忍お嬢様、日本では家畜の脳みそを食べる文化は存在しないのですか?」
「うん、少なくとも僕らの時代の日本じゃ動物の脳みそを食べる人はかなり少ないと思うよ」
「なるほど、記憶しました」
華麗に俺の質問はスルーされた。
だが、2人の会話を理解することは無視された俺でもできる。
「ちょっと待ってくれ、なんだ?他国では牛の脳みそを食べるのか?」
「意外と多いみたいだけど?」
「………………嘘だろ?」
「カルチャーギャップを受けてるけど、多分事実だよ?世の中には(食用)コウモリを食べる国だってあるし」
「な、なんだと……?コ、コウモリ?コウモリを?うぇ……」
衝撃的すぎて俺は立っていられず、四つん這いで倒れ伏せてしまった。
「あぁ、ショック受けてるよ。金玉に比べたら脳みそくらい普通じゃないかな?さすがのボクでも牛の金玉は食べられないけど。う~ん♪美味しい!」
どうやら忍にとっては脳みそよりも金玉の方がアウトらしい。
俺はどっちも食いたくないな。
「何を言っているのですか?もう食べているではないですか?」
「はぃ?」
「いえ、たった今咀嚼したのが牛の睾丸、つまり金玉です」
「オェエエェェェーーーーー!!」
たった今食べられないと言っていた金玉を食べたと言う精神的苦痛のせいか、忍も嘔吐した。
「な、なんで金玉なんて焼いてるのさ!!」
俺同様に口を井戸水で漱いでダナーに文句を言う忍。
「しかし、日本でも臓物を焼いて食べる文化は存在したと記憶しているのですが?」
「ホルモンと金玉は違うでしょ!!」
「違うのですか?」
「違うよ!!これは違うよ!!」
うん、違うよな……。主に心構え的な面で……。
「はぁ……パティが居ないだけで食事にここまで苦労するとは思わなかった」
BBQ開始から数分後、脳みそや金玉を食べたことで俺と忍の食欲はかなり下がってしまっている。
肉が美味いのに食欲が下がるって酷い状況だな……。
「ホント、この屋敷で二人暮らししてたかもしれないと思うと怖いね」
「……気になっていたのですが、なぜ外食という選択肢が無いのですか?」
『何?』
「いえ、ですから用事もないので城下町の食事処で適当に……」
『その手があったか!!』
「気付いていなかったのですか……お二人とも」




